セヴラン(左)は桜をイメージしたコーディネート。山本寛斎(右)は自身でデザインした「カンサイヤマモト」のオリジナルスーツを着用
PHOTO BY KAZUO YOSHIDA
ファッションデザイナーの山本寛斎とコンゴのファッショニスタとして知られる“サプール”のセヴラン(本名ムイエンゴ・ダニエル)が対談を行った。2人の出会いは、写真家の茶野邦雄による「THE SAPEUR コンゴで出会った世界一おしゃれなジェントルマン」の帯紙を山本がジャックしたこと。今春、セヴランが初来日。ファッションを愛し、平和を願う2人にそれぞれの思いを語ってもらった。
WWDジャパン(以下、WWD):寛斎さんはコンゴでオシャレを楽しむ紳士たち“サプール”の存在をどのように知りましたか?
山本寛斎「カンサイヤマモト」デザイナー(以下、山本):書店で彼らに関する書籍が出ていたので、前から気になっていました。私は世界に面白い人や変わったモノがあると、すぐ見に行く行動派ですが、既に茶野邦雄さんが現地で写真を撮っていると聞きました。しかし、こうして今回来日されて会うことができてとてもうれしいですね。
下から上まで一式、一色でそろえた二人
WWD:お互いの第一印象は?
山本:想像と全く異なりました。セヴランさんの雰囲気はとてもエレガントだと感じました。先日お会いしたときは上品なグレーのスーツを着こなしていてとてもシックでした。そのシックと言っても、私の場合「寛斎のシックは病気の“Sick”だ」と海外で言われることがありますが(笑)。彼はフランス語のスタイリッシュな“Chic”ですね。
セヴラン:寛斎さんは、サプールの皆が知っている有名なデザイナーです。ずっと憧れていた人に会って話ができるなんて夢にも思っていませんでした。またコンゴでは、富裕層の人々は階級の異なる人を差別することも少なくありません。しかし日本に来て寛斎さんと握手をしながら、普通に言葉を交わすことができ驚きました。
WWD:セヴランさんは日本のファッションについて詳しいですが、どのように情報を得ているのですか?
セヴラン:サプールは勉強熱心で、テレビや雑誌で話題のデザイナーやブランドをチェックしています。寛斎さんは50年以上もの間デザインを続けられ、皆に愛されている、とても優れたデザイナーだと認識していました。
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私はサプール宣伝担当なんです
「サプールに影響され、カラフルなスーツを着たいと思い、ネクタイやシャツ、靴も全て赤でそろえた真っ赤なスーツのコーディネートで出かけた」と山本寛斎
WWD:寛斎さんはサプールのファッションをどのようにとらえていますか?
山本:セヴランさんたちのスーツに対する考えは、われわれの考えている難しいスーツではないと感じました。昨晩、テレビで首脳会議のニュースを見ましたが、皆ダークカラーのスーツを着ていて、ネクタイだけがきれいな色をしていました。日本でのメンズスーツはビジネスの場で着るもの。仕事上の潤滑油のような役割があり、特別に個性を発揮するようなものではないです。しかし、写真の中で笑うサプールたちは皆原色のスーツを着ているんです。本当に自由に着飾っているな、と私まで笑顔になりました。それに影響され、カラフルなスーツを着たいと思い、ネクタイやシャツ、靴も全て赤でそろえた真っ赤なスーツのコーディネートで出かけました。行き先はサントリーホールで行われた石井竜也さんのコンサートだったのですが、その会場で目立っていたのは舞台の石井さんと客席の私のたった2人だけでした(笑)。今度、安倍晋三・総理大臣とお会いする機会があるのですが、もう一回そのスーツ着たいと思っています。私は“サプール宣伝担当”なんです。
セヴラン:実は、赤を洋服に取り入れることは難易度が高く、ハイレベルのサプールにしかできない技なんですよ。普通はニュアンスカラーの挿し色として使いますが、今日寛斎さんが着ているブルーのコーディネートのように、下から上まで一式、一色でそろえないときまらないんですよね。
山本:私もそう思いました!いろんな色の靴と合わせてみましたが、どれも合わず、赤だけがスタイルがよく見えたんです。だから、ぴったり色を合わせるために雑貨もそろえなきゃいけないので、赤を着るときは経費がかかりますね(笑)。ところで、セヴランさん、日本の桜を見てどう思った?
セヴラン:先日、中目黒で桜を見ることができて大変感動しました。実は今日のコーディネートは桜をイメージして選びました。
山本:そうでしたか。とても粋ですね。何着スーツを持ってきたのですか?
セヴラン:15着です。本当はもっとスーツケースに入れてきたかったのですが......量が限られていていますから。
山本寛斎がセヴランに贈った「カンサイヤマモト」の大漁旗ジャケット。シャツやネクタイなどはセヴランの私物
山本:先日、大漁旗を使って仕立てたジャケットを差し上げましたが、どのようにコーディネートする予定ですか?
セヴラン:マルチカラーのスーツのスタイリングは一見難しそうに見えますが、ベテランのサプールには簡単に色合わせができます。例えばこの「カンサイヤマモト」のジャケットは、柄の中でブルーがメーンカラーなのでブルーのストールを。2番目の色はピンクなので、同じ色のシャツで合わせます。そして、イエローとグリーンはネクタイと帽子、靴下でアクセントとして取り入れました。コンゴに帰ったら、サプールの仲間たちに自慢したいです。
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服を選んでいるときは空を飛んでいるような気分
WWD:セヴランさんは、ファッションにどのような魅力を感じますか?
セヴラン:服を選んでいるときは空を飛んでいるような気分になります。これまでの人生で、内戦などのつらい経験もしてきましたが、ファッションのことを考えているときだけは心がいやされます。
山本:私にとって戦争はもう昔の話になってしまいますが、それぞれの国の事情はとても難しいです。しかし、こういう風にファッションを通して、遠くはなれた世界中の人々と友達になれることはとても素晴らしいことだと思っています。
「これからもオシャレを楽しんで私たちなりにメッセージを伝えていきたい」とセヴラン
WWD:寛斎さんはファッションショー「日本元気プロジェクト」で、たくさんの人々へ元気とエネルギーを発信していますね。
山本:実は今年も7月21日に国立代々木体育館で開催する予定です。今、企画段階なのですが、セヴランさんをはじめ、サプールの皆さんに登場してもらいたいと思っています。しかし、私のデザインした服を着てもらうのではなく、彼らのサプールファッションで出てもらいたいですね。
セヴラン:とても光栄です。今このようにサプールとして活動しているのはファッションのため、そして平和のためです。これからもオシャレを楽しんで私たちなりにメッセージを伝えていきたいです。