ファッション

イタリアンニットの匠に聞く「私たちの国にファミリーブランドが多いワケ」

 結束の強い仲間と作るコミュニティーの価値が存在感を増している。そこで再び脚光を浴びそうなのが、数年前までは「時代遅れ」とさえ思われていたイタリアのファミリービジネスだ。「エトロ(ETRO)」や「キートン(KITON)」に代表されるファミリーブランドには近年、創業者の3代目あるいは4代目にあたる若者が参画。彼らが若々しい感性を持ち込み、その父や祖父にあたるベテランの経営陣がブランドのコアバリュー、地元の職人や長年の顧客との関係性を守る。結果、伝統と革新という2面性を兼ね備えるようになった。

「ファビアナ フィリッピ」2019年春夏コレクション

 「ファビアナ フィリッピ(FABIANA FILIPPI)」も、そんなブランドの1つだ。兄のジャコモ(Jacomo)とブランドを立ち上げたマリオ・フィリッピ(Mario Filippi)創業者兼最高経営責任者は、今のブランドビジネスをどう感じているのか?2年前に日本のパートナーを切り替えた理由も尋ねた。

アオイが「ファビアナ フィリッピ」の取り扱いスタート

WWD:パートナーをウールン商会からアオイに切り替えた日本のビジネスは順調?

マリオ・フィリッピ創業者兼最高経営責任者(以下、マリオ創業者):日本での売り上げは、前年に比べ1割ほどアップした。それでも素直に言えば、まだ厳しくもある。9200万ユーロ(約138億円)という世界の売り上げから考えれば、まだまだだろう。けれど日本の消費者は品質への理解が高く、可能性を感じている。問題は、現代の消費者が私たちを知らないこと。それぞれの消費者に、それぞれの商品に対する思いや背景を伝える環境を用意したい。大変な仕事だが、信念を伝えなければ生き残れない。

WWD:改めてなぜ、日本のパートナーを変更した?

マリオ創業者:私たちの価値、正しい姿をもっと正確に伝えるためだ。「ファビアナ フィリッピ」とは、家族。家族同様、長く協業できるパートナーが望ましい。パートナー選びは、相手の情熱を探ることだ。私たちが望むのはビジネスだが、両社の関係性はビジネスを超越するものであるべき。その関係性は、ブランドや店舗に影響する。

WWD:具体的には?

マリオ創業者:まず「ファビアナ フィリッピ」のビジネスは、ニッチだと理解してほしい。できれば、お客様への手紙は手書き。店頭では彼女たちの声に耳を傾け、なるべく長く接客してほしい。そんな哲学を理解し、届けてくれるパートナーとしてアオイを選んだ。スタイルのブランドだから、来年の商品は今年のそれと大きく変わらない。好き・嫌いもある。それを理解し国は違えど、同じ安心感を提供してくれるパートナーを選んだ。

WWD:そんな心と心で通じ合うパートナーは、どう選ぶ?

マリオ創業者:人を見極めるのは、一番難しい。パートナーから従業員まで、人選には決断を伴う。「目」を見るしかない。とても感覚的だが、イタリアのファミリービジネスは長年、そうやって決断を重ねてきた。

WWD:そもそもイタリアには、どうしてファミリーブランドが多い?

マリオ創業者:イタリアは長年貧しく、第二次世界大戦が終わるまで、ほとんど皆農民だった。その後「何か違うことを」と思い立った人々が、例えば織物、例えばニット、そして例えばスーツを作り始めたんだ。そこで重要になったのは、「ボッテガ(Bottega)」。「工房」という、ビジネスの基本単位だ。イタリアのファッションは、「ボッテガ」が大きくしたんだ。家族同様にごくごく小さな構成単位で質の向上を目指し、皆が昼夜を問わず集まり、話し合い、手を動かした。結果、「ボッテガ」は家族になったんだ。

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2024-25年秋冬のトレンド総まとめ 鍵は「退屈じゃない日常着」

4月15日発売の「WWDJAPAN」は、毎シーズン恒例のトレンドブックです。パリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨーク、そして東京の5都市で発表された100以上のブランドから、アイテムや素材、色、パターン、ディテール、バッグ&シューズのトレンドを分析しました。豊富なルック写真と共にお届けします。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。

メルマガ会員の登録が完了しました。