ビジネス

ネット普及で運営難の“雑誌の図書館”   存続かけたクラウドファンディングに出資殺到

 明治時代以降の貴重な雑誌を保管する公益財団法人大宅壮一文庫(世田谷区八幡山3-10-20)が18日、運営資金の調達のためのクラウドファンディングを開始した。クラウドファンディングサービスのREADYFORを活用し、6月30日午後11時までに目標金額500万円を集める。開始から1日ですでに300万円近くの出資が集まっており、好調な滑り出しに鴨志田浩・事業課主事は「かなり驚いているがここから落ち込まないよう、気は抜けない」と語る。

 出資プランは3000円と1万円、5万円の3つを用意。出資額に応じて、入館料1〜6カ月間無料サービスや雑誌についてのレクチャーなどが受けられる。調達した資金は雑誌の保管にかかる人件費などに充てるという。

 大宅壮一文庫は評論家・大宅壮一の雑誌コレクションをもとに、マスコミ業界などの援助によって1971年に設立された雑誌の図書館。グラビア誌から女性週刊誌、ファッション誌まで、明治時代以降130年余りの雑誌1万タイトル・約77万冊を所蔵する。利用者のほとんどはマスコミ関連だが、かつては年間10万人を超える利用者がいたという。調査テーマの資料を素早くそろえるための“大宅式分類法”という独自索引システムを作るなど、雑誌の収集と保管・閲覧のために尽力をしてきた。しかし、インターネットの普及とともに利用者が減少。最近は利用料金と改定するなどの対策をとってきたが、従来通りの経営が難しくなったという。

 鴨志田主事は今回のプロジェクトについて、「無限の情報が詰まったインターネットでは、求める情報までピンポイントでたどり着くことができる反面、周辺情報への関心が薄れてしまう。雑誌をめくることで興味がある記事とは別のページが目に入ってきたり、興味から好奇心が膨らんでくるもの。大宅壮一文庫の雑誌資料には、まだまだ発掘し切れていない価値と未来に向けて活動を続けていく使命がある」とコメント。資金調達の理由について、「支出としては検索サービスの構築・運営、人件費が大きいが、運営資金は主に利用料金に頼っている状況。出版不況とインターネットの普及で利用者はどんどん減っている。毎年2000万円近い赤字運営が続いており、運営の健全化のためにも、まずは営業支出をまかなう範囲で500万円を集めたいと考えた。資金調達に加えて、知名度向上によって一緒に大宅壮一文庫を守ってくれる人が見つかるとうれしい」と語っている。

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