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新デザイナー近藤悟史が考える「イッセイ ミヤケ」イズムとは? ブランドの原点を軽やかに表現

 「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」が、新デザイナー近藤悟史による初のコレクションを2020年春夏のパリ・ファッション・ウイークで披露した。日の光が差し込む空間でダンスと共に見せたショーは、タイトルが“センス・オブ・ジョイ”。三宅一生が追求したコンセプト“一枚の布”に立ち返った内容に、ベテランジャーナリストからは「昔の一生さんのショーを見ているかのよう」といった声も聞かれたが、単に昔をなぞるのではなく、現代流に、そしてハッピーに表現しているのがポイントだ。

 会場は、パリ中心地からやや距離がある19区。「なぜこんな遠い場所で?」といった声もあったが、会場に行ってみて納得。現代アートやグラフィックなどを扱う公共の文化施設は、気がきいていておしゃれなムード。広く明るい倉庫のような空間の会場を見上げると、丸い3枚の生地が天井にセットされている。

 きれいな電子音とアーティストのクリーンな歌声が重なる中でまず登場したのは、淡いピンクのドレープたっぷりのコート姿のモデル。和装のように四角い布を体に巻き付けて美しい造形を追求したパターンは、まさに“一枚の布”を象徴するものだ。その後に続くのは、ジャージーのドレスやスカートを身に着けた笑顔のモデルたち。手をつないでくるくる輪になって踊ると、スカートやドレスの裾がひらひら広がって揺れる。

 その後もダンサーによるパフォーマンスが続き、マクラメ編みのフリンジが揺れたり、パラシュートクロスのような極薄生地のドレスが花が開くように広がったり。極薄生地のつなぎ姿のモデルがスケボーに乗って現れると、風を受けてつなぎは凧のように広がる。マクラメ編みに見えたものはブランドらしい一体成型のニットでできており、パラシュートクロスも恐らく最新技術を盛り込んで作られたもの。原点回帰に思えても、それを支える素材は進化して表現に広がりを持たせている。ただし、そういった技術面を全面に押し出すのではなく、まず純粋に「楽しい」と感じさせるショーだ。これまでに比べてぐっと軽やかになった色合いも、それを後押しする。

 盛り上がりの最高潮は、天井に吊るされていた丸い生地がモデルのもとに下りてくる仕掛け。ニットでできた生地がモデルの体を通ってドレスになると、ダンスに合わせてピョンピョン飛び跳ねるように生地が揺れる。最後はモデルたち全員が手をつないで輪になって踊る演出だ。

 ショー後の取材で近藤は、「原点に回帰したというつもりはないけれど」と前置きしつつ、「僕なりに、『イッセイ ミヤケ』イズムを現代的に表現した」とコメント。イズムとは何か?と聞かれると、「人種や年齢を問わず、さまざまな人に届けるエネルギー」だと即答。輪になって踊る演出や笑顔のモデルは、まさにそれを表現するものだ。「社会に向き合いながら服を作っていくことがこの会社では大切。そこに僕なりのユーモアを取り入れていきたい」と抱負を語った。「(近藤のクリエイションに対し)今すぐ何かを求めるというよりも、何シーズンか重ねて、こういうことだったのかと分かるようになれば」と、伊勢孝彦イッセイ ミヤケ社長も話した。