ファッション

美術作品でありファッションでもある 「パグメント」2018年秋冬コレクション

 「パグメント(PUGMENT)」が2018-19年秋冬コレクションを公開した。「パグメント」は大谷将弘と今福華凜の2人が14年に作ったファッションレーベルで、美術とファッションの両方に軸足を置いてコレクション発表や展覧会、パフォーマンス、演劇の衣装制作などといった活動を通じて独自の世界を見せている。

 今回のコレクションのタイトルは「1XXX-2018-2XXX」。ユニセックスのアイテムは、洋装がもたらされた明治維新の頃以降の日本の服飾史から選んだモチーフをプリントしたスエット上下、同じく服飾史からのモチーフを加工したレインボーカラーのコートや、同様のモチーフをコラージュしたベール、屋外に出ることが困難な環境下で暮らすことになるかもしれない未来の防護服に見立てたスエット上下、引っ越し業者が家具などの養生に使う“ジャバラ”と呼ばれるゴム入りの青いバッドで作ったワンピースなどで、いずれも人間とその営為に対する観察をはらんでいる。とはいえ、もちろんどれもがリアルクローズとして着用できるものばかりだ。

 大谷と今福はそれぞれ東京造形大学と東京藝術大学を出たのち文化服装学園に学び、美術であると同時にファッションでもある表現を手掛けてきた。「パグメント」は衣服やファッションをたんなるメディアとして美術に利用するのではなく、それらに正面から取り組むことで、各制作物だけでなくその活動や姿勢自体もまた美術の作品としていると理解することができるだろう。一方でファッションとしては、衣服の歴史やファッションの今日的な姿を俯瞰し参照して、それをさらにもう一度、衣服ないしファッションとして表現するという、いわばファッションについてのファッション——メタ・ファッションとして見ることができるだろう。彼らの表現は冷静で批評的ではあるが、必ずしもシニカルではなく、美術としてもファッションとしてもポジティブな思考と意思を感じさせるものだ。

 同コレクションは今回、KAYOKOYUKI、ユトレヒト(3月6~18日)、NID /NID A DEUXの3カ所で同時に発表されたが、ギャラリー、書店、セレクトショップという会場の設定自体も「パグメント」のねらいと性格をよく示している。ギャラリーではアイテムの展示に加えてランウエイショーも開かれ、モデルは全員が白いゴム長靴を履いて歩いた。アイテムには、今回のような展示会でバイヤーや一般ユーザーから注文を受けて手作りする衣服作品と、一点ものの美術作品とがある。

■「パグメント」2018年秋冬コレクション「1XXX-2018-2XXX」
日程:3月3日〜4月1日
時間:12:00〜19:00
定休日:月・火曜日、祝日
場所:KAYOKOYUKI
住所:東京都豊島区駒込2-14-14

日程:3月16〜23日
時間:12:00〜20:00
定休日:無休
場所:NID / NID A DEUX
住所:東京都渋谷区神南1-3-2

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