「グリーンレーベル リラクシング」自由が丘店のイベントでは街と関係のある一般の人たちがモデルになった。撮影はレスリー・キー(Leslie Kee)
9月第2週の日曜日の昼下がり、20日にオープンを控えたユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)の「グリーンレーベル リラクシング(GREEN LABEL RELAXING)(以下、GLR)」自由が丘店を訪ねた。店内で行われていた開店告知ビジュアルの撮影を取材するためである。モデルは一般人で、家族連れやカップル、中にはひとりと、老若男女がプロのスタイリングとヘアメイクを受けてカメラの前に立つ。彼らの共通点は、“自由が丘に関係があること”。住んでいたり働いていたりと、街と何かしらのゆかりがあることを条件に公募したところ、100人の枠に3000人の応募があったという。“グッド ローカル ストア”をキーワードに、地域参加型の店作りを目指すコンセプトを反映したプロモーションだ。次々と壁に張り出してゆく写真は、この店の顧客像を端的に写し出していた。写真の一部は、東急電鉄・自由が丘駅の駅貼り広告として採用されるという。「GLR」は全国に65店舗展開するが、これまでの出店はファッションビルやSCが中心で、純然たる路面旗艦店は自由が丘が唯一になる。このプロモーションが象徴する“地域密着”戦略は、全国チェーン展開をしてきた同業態にとって新しい試みだ。
[rel][item title="「グリーンレーベル リラクシング」が "自由が丘とつながりがある人"対象に撮影イベント開催" href="https://www.wwdjapan.com/fashion/2015/09/13/00018002.html" img="https://www.wwdjapan.com/fashion/files/2015/09/13/150913_ua_001.jpg"][/rel]
最近耳にすることの多い“地域密着”という手法。自由が丘は、その試金石としてうってつけの街だ。理由は、田園調布や奥沢など、日本有数の高級住宅地に囲まれた立地ゆえの購買力の高さだけではない。日本一商店会の結束力が強いといわれ、都心にありながら“地元”要素が強い街であり“密着”の本気度が問われるからだ。
自由が丘駅のメイン改札である南口を出て最初に目に入る店は、洋服屋でもカフェでもなく金物屋だ。改札から数メートルの場所に建つ自由が丘デパートの入り口の五十嵐金物店は、店頭にアルミ鍋を積み上げているような昔ながらの金物屋である。ちなみに自由が丘デパートは、いわゆる百貨店とは全く別物で、惣菜からジュエリーまでの100店舗が入る横に長い雑居ビルであり、戦後の闇市から誕生以来、地元住人に愛されてきた。自由が丘に大型の店舗が少ない理由のひとつは、自由が丘スイーツフォレストを運営する岡田不動産の岡田家をはじめ、多くの土地を所有し街の景観完備や文化保全に尽力している地元の名士が複数存在するからだといわれているが、五十嵐家もそのひとつだ。
[rel][item title="「グリーンレーベル リラクシング」が自由が丘に初の路面店をオープン 地域密着型の "スペシャル"店舗" href="https://www.wwdjapan.com/fashion/2015/09/20/00018124.html" img="https://www.wwdjapan.com/fashion/files/2015/09/20/DSC06074.jpg"][/rel]
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8月にオープンした「メゾン イエナ(MAISON IENA)」自由が丘店
自由が丘駅の2014年度の乗降人数は、1日9万6000人。東急電鉄が次々と繰り出す路線整備の効果もあり来街者は年々、目に見えて増えている。延べ約50万人を集める「女神まつり」をはじめ、年中何かしらの祭りが開催されている。とは言っても、いわゆるテキヤは見かけない。屋台20に並ぶのは商店会のレストランのワインやホットドッグであり、こういった努力が街のブランド力を高めている。
私自身もこのエリア在住のため、週末を自由が丘で過ごすことが多いが、美容室やネイルサロンの椅子に座っているだけで街のうわさが耳に入ってくる。商店会会員であるサロンオーナーは祭りや会合の多さをボヤくが、「昨日の会合はあそこのバーで行われた」などと話す姿からは、街とのつながりを楽しんでいる様子もうかがえる。
自由が丘は、スイーツショップだけではなく、医院や美容院、子ども服の店の数も日本一多いと言われるが、洋服屋はそれほど多くない。だからこそ、ビジネスチャンスもある訳で、最近では8月に「メゾン イエナ(MAISON IENA)」がオープンするなど新しい動きも目立つ。
ただ、美容・医療など身の回りの用事は地元で済ませつつ、服は電車で10分の二子玉川や渋谷、銀座へと買いに出る層を引き込むには工夫が必要だ。自由が丘の洋服屋と言えば、トゥモローランド。1983年に「バジーレ(BASILE)」と「マカフィー(MACPHEE)」の1号店を自由が丘にオープンしている。長年見てきたこの街の顧客の特徴を同社は「生活に自分のスタイルがあり、暮らすことに心の豊かさを求める方が多い」と言う。
オンワード樫山は、2012年に紳士服店「セビロ&コー(SEBIRO & CO.,)」1号店を自由が丘にオープンした。卸売りを主力とする同社にとって、小売り業態である地域密着型の路面店は新しい挑戦である。オーダースーツだけではなく、お直しを打ち出すなど地元客のニーズに応えるサービスを通じて顧客を開拓している。そのノウハウを生かし、現在では吉祥寺や三軒茶屋、下北沢など首都圏でありつつ“地元”文化が強い街に14店舗出店している。同店の立ち上げにも携わり、街の事情をよく知る黒部和夫カルロ インターナショナル代表は、自由が丘の客層について「目が肥えていて、深い専門性が求められる」と分析する。
冒頭のユナイテッドアローズの撮影現場で、同社の担当者が「以前、この近くに住んでいたから、このプロジェクトにも思わず力が入った」と話していたことが印象的だった。大手チェーン店での“地域密着”戦略は口で言うほど簡単ではないだろうが、こういった作り手の街への肌感覚が吹き込まれていることが路面を構える洋服屋の基本のキなのだと思う。閉そく感高まる業界に風穴を開け、ファッション業界人たちが商売の原点に立ち戻るキッカケになるかもしれない。
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[rel][item title="自由が丘に「メゾン イエナ」オープン(後編) "イエナ流パリジェンヌ"を提案する店" href="https://www.wwdjapan.com/life/2015/08/21/00017696.html" img="https://www.wwdjapan.com/life/files/2015/08/21/0821%20iena%20001.jpg" size="small"][/rel]
※文中の肩書き・事実関係などは2015年9月21日当時のものです