ミシェル・ファン
PROFILE:独学でメイクを学び、メイクアップ・アーティストとして投稿した動画が、累計再生数10億回を超えたトップYouTuber。「イプシー」共同創設者、「em」クリエイター、女性を支援する団体「FAWN」創設者兼エグゼクティブ・プロデューサーなどを務める。フォーブス誌の「30歳以下の30人」アート&スタイル部門に選ばれた
PHOTO BY MAYUMI HOSOKURA
YouTubeに投稿したメイク動画が人気を集め、今や世界中に数百万人のフォロワーを抱えるメイクアップ・アーティストのミシェル・ファン(Michelle Phan)が来日した。化粧品業界では元祖YouTuber(ユーチューバー)として知られ、自身のメイクアップブランド「エム(em)」やサンプリングボックスの定期購入サービス「イプシー(ipsy)」をプロデュースする女性起業家としての活躍が目覚ましい。デジタル時代の申し子であるファンが見据える、デジタル時代の未来について話しを聞いた。
ミシェル・ファンが初めてYouTubeに動画を投稿したのは2007年。YouTubeがサービスを開始したわずか2年後のことだった。「当時、私はまだ高校を卒業したばかりだった。初めてYouTubeを見た時、『これは世界中に配信できる未来のテレビだ。しかも自分のチャンネルが無料で持てるなんて!』と感激した」と振り返る。「最初は自分のメイクテクニックを多くの人が学んでくれるだけで満足していたけれど、だんだんと自分を中心に多くの人がつながっていくのが見えるようになった。そこに新しいマーケットの可能性を感じるようになった」。そして広告収入を得られるようになったことをきっかけに、デジタルコンテンツの制作に専念するようになった。
YouTube Space Tokyo
転機が訪れたのは、2010年。デジタル・クリエイターとして「ランコム(LANCOME)」と3年間の契約を交わしたのだ。YouTubeすらメジャーではなかった当時、苦労も多かったという。「広告代理店や宣伝部の人に、YouTubeの魅力を説明するのには骨が折れた。撮影の時も、彼らは『新品の製品を使ってくれ』って言ったけど、断った。だって、カラーパレットから実際に色が減っていなかったら、私が愛用していることなんて全く伝わらないでしょ?」。広告で見せるパーフェクトな製品像を壊して、どれほどの宣伝効果が得られるのか―そんな周囲の疑念は、次第に動画の再生回数が上がるとともに払拭され、ファンへの信頼度も増していった。
日本のYouTuberたちと撮影したコラボレーションビデオの現場風景
現在はロレアルのもとで自身のメイクアップブランド「エム」をプロデュースしながら、11年に立ち上げた定期購入サービス「イプシー」も経営する。毎月10ドル(約1100円)で化粧品のミニサイズの詰め合わせを提供。アメリカとカナダの2カ国のみだが、売り上げは好調に推移し、今や年商は1億2000万ドル(約142億8000万円)を越えた。「デジタルの世界では今後、サービスやコミュニティーなど、すべての質を高めることが重要になってくる。『イプシー』では、レビューやコミュニティーの安全性、製品のカスタマイズなど、全てのサービスにおいて一段上のクオリティーを目指してきたことが成功につながった」。
ファンは今、化粧品の枠を超え、デジタルの新たな可能性を追求している。今年3月、ビューティやファッション、ヘルスケアなどライフスタイル系の情報を発信するクリエイター集団「アイコン(I CON)」を立ち上げた。さらに同月、ミシェル・オバマ米大統領夫人とともに、女子教育を支援する取り組み「Let Girls Learn」をサポートするためにアジアを訪れた。「インターネットはネットワーク環境さえ整えば、どこでも利用できる。学校に通えない子供の学習や、子育て中の母親の就職支援に役立てられるはず」。女性企業家として、ソーシャライトとして、デジタルの力で世の中を変えようとするファンの目は輝く。