ファッション

「ルルレモン」クリエイティブ・ディレクターが語るアスレジャーの次 「現代のラグジュアリーは健康」

ルルレモン·アスレティカ(LULULEMON ATHLETICA)はこのほど、東京・原宿にグローバル旗艦店「ルルレモン 原宿」をオープンした。2フロアで構成し、店舗面積は約1220平方メートルと国内最大級の店舗だ。オープンに合わせジョナサン・チャン(Jonathan Cheung)=グローバル・クリエイティブ・ディレクターが来日した。

1998年にカナダ・バンクーバーで創業した同社は、“アスレジャー”ブームの火付け役として近年急成長を遂げてきた。2025年度の売上高は111億ドル(約1兆7000億円)に達し、「ナイキ(NIKE)」「アディダス(ADIDAS)」に次ぐ規模にまで拡大した。

2024年に同社に加わったチャンは、過去に「リーバイス(LEVI’S)」のデザイン部門のシニア・バイスプレジデントを務めるなど、プロダクトデザインとイノベーションの分野で30年以上にわたり経験を積んできた人物だ。「ルルレモン」では、ウィメンズとメンズ、雑貨類まで全ての商品デザインおよび開発を統括する。チャンにこれまで進めてきたデザイン改革と、“アスレジャー”の次に見据える潮流を聞いた。

デザインプロセスを刷新
スポーツ型の分業からアウトフィット発想へ

PROFILE: ジョナサン・チャン/「ルルレモン」グローバル・クリエイティブ・ディレクター

PROFILE: 「ジョルジオ アルマーニ」や「モスキーノ」で経験を積み、「リーバイス」ではデザイン&デザイン・イノベーションのシニア・バイスプレジデントを務めた。その後、「ギャップ」「メレル」「パンガイア」などのコンサルタントや、マテリアルサイエンス、テクノロジー企業のアドバイザーを経て、2024年に「ルルレモン」に入社。グローバル・クリエイティブ・ディレクターとして、プロダクトデザインと開発を統括する PHOTO:SHUHEI SHINE

WWD:「ルルレモン」に加わって以来、変えたことは?

ジョナサン・チャン=グローバル・クリエイティブ・ディレクター(以下、チャン):以前の「ルルレモン」では、デザイナーがまず白黒でフォルムやフィットをデザインし、次に別のチームが、素材や色を決めていくというプロセスだった。これは、大手のスニーカーブランドなどでよく見られるやり方だ。私が加わってまず変えたことは、その縦割りの体制だ。一人のデザイナーがフォルムやフィットだけでなく、素材や色、ブランディングまで一貫して責任を持つようにした。それから、商品単品ではなくトータルコーディネートでデザインするように号令をかけた。実際にお客さまはレギンスやシャツを単品で着るわけではなく、組み合わせて着る。だからチームの一人一人が、アウトフィットとして成り立つかまで視野を広げてコントロールしてもらう体制にした。これによって、工程も大幅に減り、各シーズンの開発期間を2カ月ほど短縮できた。

WWD:店頭に並ぶ商品を見ても、カテゴリーを横断した統一感が生まれている。

チャン:そう。以前は、ランニング、トレーニング、ヨガ、ゴルフ、テニスと、それぞれのアクティビティーが別々のコレクションとして扱われていた。その結果、カラーパレットもバラバラで、店頭にはとにかくたくさんの色があふれていた。今は全てのカテゴリーで、シーズンごとに1つのカラーパレットを採用している。色の総数は減るが、その分、アイデンティティーは強くなる。

私は自分の役割を、オーケストラの指揮者のようなものだと捉えている。大胆な印象を生み出したいときは、チーム全体でクレッシェンドを作る。逆に静かで繊細な表現をしたい時には、みんなでそこを目指す。表現の幅は維持しつつ、全員で同じ曲を演奏することが重要だ。

「ルルレモン」はいかに新しさを生み出すのか

WWD:デザインのインスピレーションはどこで得る?

チャン: 日本に来る。本当だ。日本には、デザインのヒントがたくさん隠れているからだ。スティーブ・ジョブズも言っていたが、優れたデザイナーになるために重要なのは人間を理解すること。人間の行動を観察することだ。だから、旅はものすごく重要。もう一つは、若者を見ること。彼らを観察すれば、カルチャーがどこへ向かっているのかがよく分かる。

アイデアはあらゆることに好奇心を持って過ごしていると、突然降ってくる感覚だ。ダイソン(DYSON)の例を思い出す。掃除機を作っていた会社が、そのテクノロジーを応用しヘアドライヤーを生み出した。一つのテクノロジーを別の何かに応用することでイノベーションが生まれたわけだ。「ルルレモン」でも同じことが言える。例えば、オフィスにもはいていけるトラウザー“デイドリフト パンツ”は、生地やウエストバンドの技術をランニングショーツから応用している。最初はウィメンズ商品として誕生し、その後メンズにも展開した。今ではゴルフで着用する人も多く、人気商品として定着した。

WWD:イノベーションと同様にデザイン面での新鮮さも求めらる。

チャン: 機能的で、汎用性が高く、そしてスタイリッシュであること。この土台となるコアバリューに忠実でありながら、変化するカルチャーをキャッチすることで自然と新しさは生まれてくると思う。例えば、最近ならランクラブが台頭していたり、 「ハイロックス」のようなハイブリッドトレーニングの人気が出たりしている。運動の形が変われば、ニーズも変わる。カルチャーの最先端に好奇心を持っていれば、新たなアイデアは自然と生まれてくる。

WWD:直近で意識しているトレンドの変化は?

チャン: 例えば、レギンスは以前のタイトフィットからルーズに変化している。私を含めたデザインチームは旅先で必ず最新のジムやスタジオをチェックしている。チームがソウルのヨガスタジオを訪れたとき、「ボトムスがどんどんルーズになっている」とわざわざメッセージを送ってきてくれた。ほぼ同じタイミングで、私たちもロサンゼルスのスタジオで同じ変化を目にし、トレンドだと確信した。

次なるキーワードは"アスラグジュアリー"

WWD:“アスレジャー”スタイルが定着した今、次に来るのはなんだと考える?

チャン: 私が次に来ると思っているのは、“athluxury(アスラグジュアリー)”という考え方だ。健康こそが豊かさだ。今、ウェルネスはステータスシンボルとなり、アイデンティティーとなっている。もっと高価なレギンスを作りたいという意味ではない。ウエアを着る体験や、ブランド体験自体を、もっとプレミアムにしていきたい。それには、より豊かさを感じる生地は何か、ディテールは何か、そういった追求が必要だ。従来型の華やかなラグジュアリーとは違う、ウェルネス、アスレティシズム、健康と結びついた新たなラグジュアリーの定義が生まれていると思う。

WWD:自身はこれまでさまざまなブランドを経験してきたが、「ルルレモン」のどんな部分に可能性を感じた?

チャン: まずはプロダクトだ。自分自身がトレーニングではいていた「ルルレモン」のショーツを見て、品質や細部へのこだわりに驚いた。

私は服を見るとき、裏返して見る。そうすると作りの良さが分かる。「なぜこんなことをするんだろう。こちらの方がコストもかかるし、作るのも難しいのに」と何度も思った。それでも「ルルレモン」は、そういうことを続けていた。手っ取り早く利益を上げることよりも、プロダクトそのものを大切にしている会社なのだと感じた。

もう一つは、とても個人的な理由だ。私には2人の妹がいて、そのうち一人は香港でワークアウトウエアを扱う店を経営していた。「ルルレモン」からオファーをもらったと伝えたら、私の腕をつかんで激しく揺さぶりながら「絶対に受けるべき!」と言ってきた。

それまで知らなかったが、彼女にとって「ルルレモン」は一番好きなブランドだった。そのとき彼女がはいていたのも、10年以上前に買った「ルルレモン」のレギンスだった。彼女の猛烈なプッシュも、最後のひと押しになった。

それから、「ルルレモン」には「まだ満たされていないニーズを解決する」という企業文化がある。常にまだ解決されていない問題を探し、過去ではなく未来を見続けているということだ。デザイナーはみんな、そういう未来志向の会社で働きたいものなんだ。

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