先に開催されたミラノ・メンズ・コレクションで、ジャケットから片方だけ飛び出たシャツ襟や、ニットの裾からシャツをルーズに出すといった無造作なカジュアルを提案した「プラダ」。パリメンズでは、「ラフ・シモンズ」が「プラダ」の価値観に通ずる新たなメンズの装いを打ち出した。「プラダ」ほどのリラックスカジュアルではなく、あくまでシャープなテーラードをベースにしているが、首元のフォーカスや無造作なルーズへのアプローチは共通している。
たとえば、シャツではこれまでよりもかなり大振りになった襟を左右アンバランスに立ち上がらせたり、手の半分以上が隠れてしまうほど裄丈を長めにとったり。襟と同じくワイドに末広がりになったカフスは折り返すことで、勢いよく咲く花のようなエレガントなニュアンスに。ストレートの形が新鮮なボトムスは、裾口をくしゅくしゅとたるませている。対してアウターは、ラグランスリーブなのに体のラインにそったタイトフィッティングのチェスターコートやスリーブレスコートを合わせることで、シックな印象に仕上げた。
カラーはクラシカルなネイビーやボルドーを基調に、柔らかなイエローやマットなターコイズをディテールに差し込んだ。ミラノでは各ブランドがバリエーションを増やした首元の提案は、胸上に共地で作ったボーダー状の“目隠し”を付けることで、そもそも「提案なんて、一切必要ない」と言ったイメージに。ただ、その“目隠し”こそが、結局Vゾーンに視線を集める結果をもたらしている。細部にこだわり、完璧なVゾーンを作ることで胸元に視線を集めようとしたミラノブランドを嘲笑っているかのようだ。「プラダ」同様、クラシック回帰で足並みを揃えるほかのブランドより一歩も二歩も先を行くスタイリング提案だ。