ファッション

生産拠点からクリエイションの発信地へ インドネシア発「オモ」が語る東南アジアのファッションシーンを包む高揚感

PROFILE: 右・Rara: インドネシア ジャカルタ生まれ。大学では、ジャーナリズムを専攻。「ELLE Indonesia」や「Hypebeast Indonesia」編集部に勤めたのち、2020年にアビとともに「オモ」を設立。 左・Abi:インドネシア ジャカルタ生まれ。国際ビジネスを専攻後、シンガポールのメンタルヘルス系スタートアップでData Strategy Leadとして活躍。2020年にララとともに「オモ」を設立。

インドネシアは長年、世界のアパレル産業を支える生産拠点の一つとして知られてきた。一方で近年は、自ら企画し、自ら発信するブランドも増え始めている。ジャカルタ出身のララ(Rara)とアビ(Abi)夫妻が2020年にスタートした「オモ(OMO)」の歩みも、その変化を象徴する事例の一つだ。

日本のカルチャーに大きな影響を受けたというララとアビ。ブランド名は日本語の「想う」に由来する。ガーリーやスポーティー、ワークといったテイストを横断しながら、プレイフルなカラーパレットや柄物を自在にミックスするエネルギッシュな感性が持ち味だ。2人は、東京のファッションから受けた刺激がその自由な発想やスタイル形成の土台になっているという。自社ECとポップアップを主な販路とし、現在は東南アジアを中心に支持を広げている。日本でもこのほどベイクルーズの「パルプ(PULP)」で単独ポップアップを開催し盛況のうちに終えた。

ポップアップに合わせ来日したデザイナーのララとディレクターのアビ夫妻に話を聞くと、DIY精神を核とするモノ作りへの姿勢と東南アジアのファッションシーンに広がる前向きなムードが見えてきた。

日本ブランドへの衝撃と憧れがデザインの起点に

――2人は日本のファッションカルチャーに影響を受けたと聞いた。

アビ:決定的だったのは、2015年ごろから「コム デ ギャルソン(COMME DES GARÇONS)」や「アンブッシュ(AMBUSH)」といった日本のブランドがジャカルタで人気が出始めたことだ。ソーシャルメディアの台頭で、全てが同時に起こった。ジャカルタでは見られない、ユニークな作り方とデザインの虜になった。父は日本人で、おしゃれが大好きな人だった。特に「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」や「ヨウジ ヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」などについてよく知っていた。僕がファッションに興味を持った頃も、アーカイブのジャケットやネクタイを見せてくれたのをよく覚えている。日本はアジアのファッションの中心地。特に東京の人々のスタイルに惹かれて、僕自身も学生時代は東京に留学した。

ララ:それまでジャカルタのファッションシーンでは、ヨーロッパのデザイナーがよく知られていたが、異なる雰囲気を持った日本のデザイナーに注目が集まり始めた。セレクトショップでも取り扱われ始め、簡単にアクセスできるようになったことも大きかったように思う。

――日本の文化からの影響は、ブランドのデザインにどのように影響していると思う?

ララ:私たちが最も影響を受けているのは、自由な発想だ。日本の人々は、ルールにとらわれない表現を楽しんでいる。これは、私たちも常に取り入れている精神。「オモ」の服はカラフルで遊び心があり、同時に日常で着られる実用性も大切にしている。このクリエイティビティーと実用性のバランスは、日本のファッションカルチャーからの影響が大きいと思う。

親の背中と足で稼いだ知識。
オンリーワンの背景が育んだ独学のクリエイション

――服作りはどのように学んだ?

ララ:インドネシア、特にジャカルタは繊維産業が盛んだ。私の母も、かつて衣料品の製造業に携わっており、幼い頃から生地や縫製に触れる機会があった。アビがファッションブランドを始めたいと言った時にも、高い壁があるようには感じなかった。でも、縫製業者やテキスタイルメーカーとのやりとりの仕方や、素材やアクセサリーの種類については全てブランドを始めてからいちから学んだ。

――ブランドが始動したのは、コロナ禍だった2020年だ。

ララ:もちろん影響はあったが、前に進むために何かできないかと必死に考えた。当時はTシャツを中心とした展開で、3色から選んで染め体験ができるDIYキットを用意し、家で楽しむアクティビティーを提案したりね。単なる商品ではなく、顧客自身がクリエイティブなプロセスに参加し、ロックダウン下でもファッションを楽しむ体験を提供するための試みだった。

――いつ頃から展開を増やした?

ララ:21年の終わりに大きなコレクションを完成させ、現在の形態に近づいた。22年からはシャツやドレス、ニット、さらにはシューズなども製作している。特にシューズは、今もブランドのアイコニックな一足として人気がある。

――技術や資金はどのように調達した?

ララ:バリやバンドンなど衣服の製造で知られる都市に足を運び、さまざまな資金提供者やテキスタイル関連の業者、職人たちに会いに行った。ジャカルタには大規模なOEMメーカーが数多く存在するが、若いスタートアップだった私たちにとって大量生産は理想的な選択肢ではなかったから、さまざまな工房や工場を訪ねながら、素材調達から製造工程に至るまでを一から学び、自分たちのビジョンに合った生産体制を築き上げていった。当初は、そうして知り合ったOEMメーカーの一つに製造を委託していたが、2023年半ばごろから自社で製造している。

東南アジア圏で広がるポジティブなムード
“自分たちも他国で通用するかもしれない”

――自社工場を持つことを選んだのはなぜか?

アビ:外部に委託すればより安く作れるが、品質や数量の面で問題がある。彼らには最低注文数があり、多くのクライアントを抱えているため、細部にまで注意が届かず、品質が保てない可能性がある。だからこそ、自分たちで工場を持ち、目の届く範囲内で製造し、高い基準を保つことを目指している。

ララ:特に私たちがこだわる独自のシェイプや技術は、大手の工場で叶わないという面もある。

アビ:販売価格をできるだけ抑え、多くの人に手に取ってもらえるようにしつつ、工場で働く5人の従業員にも公正な賃金を支払うことも大切にしている。顧客と従業員の両方にとって最適なバランスをとることが重要だ。

――インドネシア拠点であることの強みは?

ララ:インドネシアの文化は多様でユニークだ。インドネシア拠点だと言えば、それだけで多くの人の好奇心を掻き立てる。同時にブランドの内面をしっかりと紹介していくのが課題でもある。私たちはジャカルタとバリを拠点にしていて、年に2〜3回はバリを訪れる。そのため、バリのカルチャーも色濃く反映している。

――タイ・バンコクなど東南アジアの近隣都市との相互作用はある?

ララ:確実にある。東南アジアでファッションシーンが盛り上がっている都市はタイ・バンコク、ベトナム・ホーチミン、次いでインドネシア・ジャカルタ。ユニークなファッションシーンは、海を越えて注目を集めるようになった。多くの外国人が東南アジアのブランドを発見して、驚いている。ヨーロッパやアメリカでも存在感を高めるブランドが出てきて、“自分のクリエイションが他国でも受け入れられるのかもしれない”という前向きなムードが今のファッションシーンの盛り上がりを後押ししている。

――ブランドを設立した当初から国外へのアプローチを視野に入れていた?

ララ:その通り。私たちが提案するスタイルはグローバルな感覚が強いようで、インドネシアの一般的なファッションシーンに広く受け入れられるものではないと思っていた。

アビ:そもそもインドネシアの人々は、基本的にモノクロのカラーパレットの質素で保守的なスタイルを好むから。現在の「オモ」の主要市場はインドネシア、シンガポールに次いで、日本が3番目に位置し、韓国からオーダーを受けることも多い。東アジアのスタイルが、私たちの好みと近いからだろう。

――今回、ブランドとしては3回目となる日本でのポップアップを開催した。韓国や中国など、東アジア市場に本格的にアプローチする予定はあるか?

ララ:そのつもりだ。その中で、東京を最初の目的地に選んだ。日本の顧客は、品質を厳しく見ている。海外ブランドが日本に店を持ち続けることができたら、それはすでにクオリティー面が認められていることの証明とも言える。

――今後の目標は?

アビ:まずはブランドのアイデンティティーを強化し、認知を広げたい。東京のデザイナーズブランドとの協業や、東京以外の都市でのポップアップも実現したい。国をまたいだ文化の視点を体験するために、コラボレーションによって、何か新しいものを作りたい。

ララ:最近では、ブランドが初の実店舗を海外に構えるケースも増えている。「オモ」はまだ実店舗はないが、最初店舗は日本がよいと思っている。日本は私たちにとって重要なマーケットであるだけでなく、常にインスピレーションを与えてくれる特別な場所だ。

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