ロンドン出身のデザイナーデュオ、フレディ・クームス(Freddy Coomes)とマット・エンプリンガム(Matt Empringham)が手掛ける「アレッタ(ALETTA)」は今年、ブランド名を「エー レター(A LETTER)」に改称し、新たなスタートを切った。
デザイナーの2人はともにファッションの名門校である英セント・マーチン美術大学を卒業後、クームスは「ロエベ(LOEWE)」、エンプリンガムは「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」で、それぞれジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)率いるチームでインターンを経験。その後、2024年にブランドを設立した。
「エー レター」は、英国の日常に根ざした服飾文化を独自の視点で再解釈したクリエイションが特徴的。紙の独特な質感を生かしたウエアを得意とし、パターンメイキングから縫製までをスタジオで一貫して行う。日本ではすでに「ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)」で取り扱われており、ロンドン発の気鋭ブランドとして業界内でもじわじわと存在感を高めている。
今年2月には、ロンドン・ファッション・ウィーク期間中に初のプレゼンテーションを開催し、一般に開放する形で最新の26-27年秋冬コレクションを披露。さらに5月には英国ファッション協議会(British Fashion Council)による若手支援プログラム「ニュージェン(BFC NEWGEN)」の26-27年度支援デザイナーに選出され、来季のロンドン・ファッション・ウィークへの参加も予定している。
クームスとエンプリンガムにブランド名変更の背景やモノづくり、今後の展望について話を聞いた。
「エー レター」として、再出発

――「アレッタ」から「エー レター」に名前を変更したのはなぜですか?
フレディ・クームス(以下、クームス):同名のブランドがあり、変えるべきだと考えていたんです。「アレッタ」と「エー レター」の発音が似ていて気に入っています。
マット・エンプリンガム(以下、エンプリンガム):シンプルで潔く、新しい出発点にふさわしい名前になったと思っています。立ち止まって自分たちの活動を振り返るいい機会にもなりました。
クームス:狙っていたわけじゃないけれど、「A」で始まるので、必ずABC順のブランドリストの先頭に出るのもラッキーに感じていますね(笑)。
――お二人のバックグラウンドを教えてください。ファッションの道を志すきっかけは何でしたか?
クームス:僕はロンドン生まれで、10歳頃にはファッションに興味がありました。母がコレオグラファー(振付師)なので、ダンスや舞台の衣装を見て育って、衣装そのものに惹かれていたんです。
エンプリンガム:僕はロンドン郊外の出身で、ファッションとはほぼ無縁の環境で育ちましたが、大工である祖父の工房でよく過ごしていたんです。自然と幼い頃から、モノが作られる過程を見ることが好きでした。ロンドンに来てからはアートを学んで、その後ファッションに転向。気づいたら好きになっていた、という感覚ですね。
――お二人はセント・マーチン美術大学で出会い、それぞれジョナサン・アンダーソンのもとでもインターンを経験されたそうですね。
エンプリンガム:そうです。僕は「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」で、フレディは「ロエベ(LOEWE)」で、それぞれ1年間インターンをしました。「ロエベ」も「ジェイ ダブリュー アンダーソン」も活発的な時期で、短い間でしたがとても刺激的な経験になりました。
繊細な紙で表現する、儚げな佇まい
――役割はどのように分担していますか?
クームス:デザインは二人で意見を出し合う感じで進めていますが、僕が主にビジュアルの方針を考えて、マットがパターンや制作を担当しています。
エンプリンガム:ほとんどのブランドはパタンナーに型紙制作を依頼しますが、僕らの場合はすべて自分たちで完結しています。今は委託する資金がないというのもありますが……(笑)。手を動かして、素材で遊ぶことで自由度が増し、結果的にクリエイティブなデザインに繋がっていると感じます。
――シグネチャーである紙を使ったアイテムについて教えてください。
クームス:造花用の紙から厚紙までさまざまな種類の紙を使っています。コンセプチュアルな目的で一度か二度だけしか着用できないものもあれば、普通に何度も着られるものもあり、耐久性はものによって異なりますね。美術館やアートインスタレーション向けに作品を販売したこともあります。
エンプリンガム:繊細な紙を使うことで、その儚さが服の佇まいに反映されるのが好きなんです。普通の洋服を作るようにミシンで縫い合わせるのですが、紙は失敗が許されないため、ミシンの一針一針に集中して縫っています。
“らしさを追求し、面白いものを制作し続ける”

――デザインのインスピレーション源はどのように得ますか?
クームス:僕らが生まれ育ったイギリスの日常からアイデアを得ることが多いですね。伝統的なものに遊び心を加えて、新しいものを作るのが面白いと思っています。
エンプリンガム:素材がヒントをくれることも多い。「60年代風に作ろう」というよりは、「あの時代はどんな素材を使っていたんだろう」という発想ですね。異素材を使って現代的なものを作るというアプローチを目指しています。
――最後に、今後の目標を教えてください。
クームス:自分たちらしさを追求し、ずっと面白いものを制作し続けることです。
エンプリンガム:自分たちに正直な服を作り続けることが一番大事だと思っています。この春にはドーバー ストリート マーケット ギンザでインスタレーションも実施しました。日本とのご縁もこれから大切にしていきたいです。