ビューティ

カネボウ化粧品「ミラノコレクション」が神社で問う“美の原点”

今年、化粧品事業が90周年を迎えるカネボウ化粧品が、次の成長フェーズを象徴する取り組みに踏み出している。プレミアムブランド「ミラノコレクション(MILANO COLLECTION)」が、京都最古の神社の一つである下鴨神社(賀茂御祖神社)と連携。化粧文化を、神社に根付く精神文化と結び付ける体験型企画を展開している。

同企画は「ミラノコレクション」が年に1度、数量限定で販売する“フェースアップパウダー”の2026年版の発売に合わせたもの。1月31日まで、限定御朱印の授与や“大鏡絵馬”の展示、フェースパウダーのサンプル配布を実施している。昨年11月22日には一般参加者60人を招いた体験イベントも開催した。

体験はメイクレッスンから祈祷までを一連の流れとして構成し、「化粧をする時間における心の在り方」を体感してもらう場とした。化粧という行為そのものの意味を問い直す、そこに今回の取り組みの本質がある。

化粧文化と神社思想の親和性

舞台となった下鴨神社の摂社・河合神社は、女性守護・美麗の神と呼ばれる玉依姫命(たまよりひめのみこと)が祀られていることで知られる。神職の大塚高史氏は、「古代からおしろいは光に映える美の象徴で、美容文化の原点でもある。今回、外見だけでなく、所作や心のありようまで含めて美を捉える神社の思想と、鏡の前に立つ時間を大切にする『ミラノコレクション』の考え方が重なった。共に“美”を体験として考える取り組みは、他に例がない」と語る。

下鴨神社にとって体験を軸にした大手企業との本格的な連携は初めてだという。年間参拝者数は推計200万人規模。近年はSNSを背景に若年層や訪日客も増加している。文化資産を消費させるのではなく、価値を更新しながら次世代へとつなぐ姿勢が、今回の取り組みにも反映されている。

“美麗体験”で新たな接点を創出

イベントは午前・午後の2部制で各30人が参加した。体験は、下鴨神社の重要な祭祀空間「細殿」でのメイクレッスンから始まった。メイクアップアーティストが「美麗な表情」を引き出す技法をレクチャーし、参加者は化粧を通じて自身と向き合う時間を持った。

その後、参加者は鏡絵馬を手に、巫女を先頭に糺の森を参進し、下鴨神社から河合神社へ移動。通常は行われない美麗祈祷を受け、鏡絵馬を本殿に奉納した。参加者には、当日発売した「ミラノコレクション」の“フェースアップパウダー2026”と会場限定のコラボレーション手鏡をプレゼント。あわせて、製品容器と連動したピンク色の美鏡守も河合神社からサプライズで授与された。

当日はブランドだけではなく、河合神社のファンも参加した。参加者の一人は「毎年必ず訪れる場所だが、『ミラノコレクション』は知っていても使ったことはなかった。今回はとても良いきっかけになった」と終始笑顔で楽しんでいた。

今回の体験イベントは、神社側にとっても知名度向上に加え、新たな価値創出の機会と位置付ける。大塚氏は「多くの人に参拝してもらうこと自体が、神さまにとっての“経験”になる。願いが積み重なることで、神さまの成長につながり、ご加護が広がる」と説明する。

池辺順子・花王 化粧品事業部門 プレミアムブランドビジネスグループ長は、「私たちは、化粧品は単なる外見を飾り立てるものではなく、日々の所作を通して心を整え、人とつながるための行為だと考えている」と位置付ける。今回のイベントでは、内面と向き合う体験を通じ、時代を超えて変わらない「美」の価値を文化や思想とともに伝える狙いだ。神社との協業は、「美とは何か」を改めて問い直す機会とした。

「ミラノコレクション」はカネボウ化粧品の“美意識の結晶”

フェースパウダー(おしろい)市場が400億円規模へと拡大する中、「ミラノコレクション」は17年連続No.1(SRI調べ)を維持し、累計出荷数は1000万個を超える。毎年の予約者数は約20万人に達する。

池辺グループ長は、「芸術や感性、暮らしの豊かさといった価値観を軸に育まれてきたカネボウ化粧品のヘリテージの最たるものが『ミラノコレクション』だ」と胸を張る。毎年テーマを掲げ、パッケージ、香り、処方を時代に合わせて更新し続ける年次限定商品は、業界でも稀有な存在だ。

単なる機能価値にとどまらず、「その年の記憶と結びつくイヤーコスメ」として、三世代にわたり使い続ける顧客も少なくない。この受け継がれる価値こそが、他社には容易に模倣できない競争優位性となっている。

26年版では「女神カバーおしろい」という新たな価値表現を打ち出し、「女神カバー品質元年」と位置付けた。情報や商品が過剰にあふれる時代だからこそ、流行ではなく、長年支持されてきた品質そのものを正面から伝える狙いがある。加えて、化粧品事業90周年を迎える節目に、周年記念特別エディションの“フェースアップパウダー”を用意する計画も進めている。

“美”をめぐる競争が激しさを増す中で、「ミラノコレクション」は、単なる売り上げ拡大やトレンド追随を目的とするブランドではない。化粧品が本来持つ、心を整え、人を前向きにする力に立ち返り、その価値を文化資産と交わることで再定義しようとしている。

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