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「サボン」の現在地 日本法人の新社長に聞く

PROFILE: ティニオ・マリア・クリスティーナ・クエンカ=サボン ジャパン社長CEO

ティニオ・マリア・クリスティーナ・クエンカ=サボン ジャパン社長CEO
PROFILE: 1998年に慶應義塾大学(文学部美学美術史学)を卒業。2002年から08年にかけてロレアルグループで「シュウ ウエムラ」「キールズ」のフィリピン事業を立ち上げ、シンガポールでASEAN地域のポジションを歴任。08年から15年にかけてはLVMHグループに在籍し、日本と韓国におけるトラベルリテール事業で「パルファム ジバンシイ」「ケンゾー パルファム」などのブランドを担当した。25年5月から現職 PHOTO:SHUHEI SHINE

ナチュラルコスメブランド「サボン(SABON)」が、新たな成長局面を迎えている。グローバルで最大の市場である日本において、ブランド価値の再定義と顧客体験の進化を通じ、持続的成長への道筋を模索する。かじ取りを担うのは、2025年5月にサボン ジャパンの社長CEOに就任したティニオ・マリア・クリスティーナ・クエンカ(Ma. Christina Cuenca TINIO)氏だ。ブランドの“次のチャプター”をどう描こうとしているのか、戦略の核心に迫る。

最重要地域の日本で
「サボン」の成長を加速する

WWD:サボン ジャパンのトップとしてのミッションは。

ティニオ・マリア・クリスティーナ・クエンカ=サボン ジャパン社長CEO(以下、ティニオ):「サボン」の次のチャプターを築くことである。ブランドの中で最大のマーケットである日本は最重要地域であり、グローバルへのけん引力を発揮していく役割が求められている。単なる成長ではなく、“健康的なビジネス”の展開にチャレンジしていく。

WWD:日本市場の商況をどう見ているか。

ティニオ:コロナ禍ではおうち時間の増加に伴い、自分自身や会えない相手へのギフトとして「サボン」の製品が選ばれ、売り上げは好調に推移。2024年の売り上げは18年比で約2倍に成長した。一方で、マスクの着用が不要になったことで外出やメイクを楽しむ動きが戻り、消費者のライフスタイルが変化。加えて急速な競合の追い上げや市場トレンドの変化もあり、ここ数年は成長が穏やかになっている。

WWD:現在の売れ筋は。

ティニオ:ブランドのアイコンとなるボディー・フェイス・ヘアの各スクラブは、新規のお客さまにも手に取っていただきやすいエントリーアイテムとして安定した人気がある。メンズ向けの「ジェントルマン」ラインも香りの持続力の高さが話題となり、人気が高い。フェイスケアカテゴリーにも注力しており、日常生活に欠かせない存在としての定着を目指している。

WWD:ブランドの強みは。

ティニオ:サボンには“魔法”がある。それは単なる製品力にとどまらず、五感に訴える世界観にある。例えば、渋谷の店舗には若年層やカップルなどが多く訪れ、その世界観に触れてファンになっている。現在は20代の支持が厚いが、今後は30〜50代に向けても製品の機能性をしっかり訴求し、年齢を問わず長く寄り添えるブランドを目指していく。

WWD:店舗スタッフやチーム作りで重視していることは。

ティニオ:現場こそが最も重要だと考えている。本社、日本法人、そして店頭のビューティアドバイザーの声を丁寧に聞きながら、全体の方向性をつくっていくのが私の役割。全員が一緒に、チームとして実行することが何よりも大切である。できる限り全ての店舗に訪れたいが、今は東京と関西の店舗を回り、現場の声に耳を傾けるように努めている。

WWD:世界的な物流や原材料調達における課題はどう捉えているか。

ティニオ:親会社であるフランスのグループ・ロシェの知見を活用し、安定した原材料の調達と生産体制の構築を進めている。グループの方針でもあるグローバル展開の加速に向け、処方の見直しなど柔軟な調整も行っている。常に最良のものを、最良のタイミングで提供することを徹底している。

WWD:海外展開について。

ティニオ:アジアでは台湾、香港、中国が好調である。さらに、今後は米国市場へのオフライン再進出も視野に入れている。グローバルでのプレゼンス拡大を図る中で、「サボン」の未来は広がりを見せており、その成長余地は大きいと確信している。

WWD:ブランド体験をどのように進化させていくか。

ティニオ:年末に向け、関西・関東エリアでVIP顧客を対象とした感謝イベントを計画している。製品を販売するだけでなく、ブランドの世界観そのものを体験として提供することが今後の価値創出につながると考えている。

WWD:今後の中長期的なビジョンは。

ティニオ:将来的には都心で、ブランドの世界観を象徴する店舗の出店を構想している。スパやカウンセリング体験、ギフトのコンシェルジュ機能などを通じて、顧客にとって特別な体験を提供する場をつくりたい。今後もむやみに店舗数を増やすのではなく、厳選されたロケーションでブランドとのタッチポイントを強化していく。

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