
毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年3月10日号からの抜粋です)
本橋:お互い2度目のニューヨークコレ、ロンドンコレでした。噂には聞いていましたが、冬のNYは超寒くて、暖冬でコートが売れないなんていう日本とは別世界。防寒に必死でオシャレに気を遣っている余裕がない僕の横で、ニューヨーカーはさらっとウールコートを着こなしていて、驚きました。
木村:ロンドンは「JW アンダーソン(JW ANDERSON)」や中堅の「チョポヴァ ロウェナ(CHOPOVA LOWENA)」がショーを発表しないというので、始まる前から「オワコンなのでは?」「年1回、9月のみでいいのでは?」と言われていて、違う意味で“寒い”シーズンでした。
本橋:実際はどうでしたか?
木村:フタを開けてみたら、112ブランドがショーやプレゼンテーションなどを発表し、コンテンツは盛りだくさん。マスイユウさんをはじめ、現地ジャーナリストやバイヤーに取材して、注目の若手デザイナーを紹介するページを作りました。
Z世代に向けて振り切れるNY
本橋:いいですね。NYは新デザイナーを迎えた「カルバン・クライン コレクション(CALVIN KLEIN COLLECTION)」に欧州のメディアも多数集まり、それがファッション・ウイーク全体に活気をもたらしていました。また、米国にはZ世代が多く、「コーチ(COACH)」もそこに向けて思い切ったメッセージのコレクションを発表していて、いいなと思いました。それとは別に、トランプ大統領就任への反発で、女性によりパワーを与えるようなスタイルの提案も目立ちました。自分たちの国の現状を捉えて、ファッションにできることを表現する――米国らしさが出ているのが印象的でした。
木村:私は今回ロンドンでいくつかショップを見ましたが、EU離脱で免税が効かないために観光客が少なく、買い物する人の姿が少なかったです。百貨店もそれほど実験的ではなく、全体的に政治・経済的に視点が内向きになってしまっているように感じました。小さいブランドにとっては店舗展開が難しく、ポップアップで販売するのが主流なようでした。でも、演劇みたいなプレゼンテーションなど、エンターテインメント性の高い演出がたくさんあって面白いのは、ロンドンならでは。政治も文化も色濃く反映されているのは、NYと一緒ですね。