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40周年の頭痛薬「イブ」は女性の痛みに“本気”で挑む 身体的痛みだけでなく心的痛みにも

エスエス製薬が展開する解熱鎮痛薬ブランド「イブ(EVE)」は、女性の活躍支援を応援する“ビリーブ プロジェクト(BeliEVE Project)”を2024年から遂行している。プロジェクト2年目でありブランド誕生40周年でもある25年は、最終的な目標の“ジェンダーキャリアギャップ指数”ゼロの実現に向けて、社内制度の変革や他社への波及を目指したアクションを加速する。

「イブ」は男女雇用機会均等法が制定された1985年に誕生。翌年の施行に向け、「新たな挑戦に向かう女性の痛みを取り除くこと」を目指して立ち上がり、痛みに優れた効き目を表す“イブプロフェンを配合した市販薬からスタートした。

元々女性の社会活躍を応援する気持ちから生まれたブランドだが、24年に“ビリーブプロジェクト”が始動した理由をマーケティング本部の元島陽子本部長は「2年ほど前にあらためて自分たちのブランドの存在意義は何かを考えるタイミングがあった。われわれはやるべきことがやれているかを立ち返った時、体の痛みを和らげる製品の提供という基盤に加えて、社会からの圧力や我慢する文化といった心の痛みを取り除くことはできてなかったのではと考えた」と説明する。

働く女性にとっての“10年目の壁”が判明

同ブランドが24年に実施した消費者調査を分析したところ、10年目を機に仕事に対する満足度が下がったり性別によるキャリアの諦めを感じたりする女性の数が増える結果となった。「働く女性にとって10年目の壁が大きい」ことが判明した。「理想のキャリアを築きたい」「今後も理想のキャリアが築けると信じている」と考える人の比率はどの年次でも男性が高く、全体平均で14.4%の男女差があった。「イブ」ではこれを“ジェンダーキャリアギャップ指数”と定め、同プロジェクトの目標を「“ジェンダーキャリアギャップ指数”ゼロ」に設定した。

また、24年には対話型×生成型AIツール「BeliEVE Your voice AI」をローンチし、女性の生の声を集めた。「悩みを相談したいけどできてない」という実情が見え、「多くの女性が抱える心の痛みは目に見えていないということがわかった」と元島本部長は話す。

これらを通して見えてきた、時間・体力の物理的な制限、活用しにくい制度、モチベーションにつながるロールモデルの不在という3つの課題に「イブ」は着目。「“ジェンダーキャリアギャップ指数”ゼロの目標を掲げるならば、まずは自社が日本一にならなくては」という考えから、25年4月には3つの課題にそれぞれにアプローチする社内制度を導入する。

政府のシッターサービスの加盟、家事代行サービスの費用負担、母のコミュニティー作り、メンタリング制度、育休取得者の所属チームメンバーに対する経済的支援を新たに実施。「まずは社内でアクションを起こし、他者や社会に呼びかけるための土台を作る」と元島本部長。

社会人10年目前後までの女性たちに特化したメンタリング制度は、他企業への拡大を進める。彼女たちの課題にフィットした女性社員メンターをアサインすることで“10年目の壁”の解消を目指す。また、メンタリング制度は女性のマインドセットの変革も意図する。「これらの課題解決のベースとして最も大切なマインドセットが自分を信じ、夢を追い求める強いマインド。どんなに制度や会社のポリシーが変わっても、女性自身が『自分なんて』『申し訳ないから』と思ってたら本質的なところは変わらない」(元島本部長)。

すでにウエルシアが共感
「これをさらに他社へ広げる」

「イブ」のこのプロジェクトに共感を示し、すでにメンタリング制度を導入を決めているのがウエルシアだ。同社は最終目標を「店舗での女性店長比率30%の達成」に設定し、新たに定めた女性店長キャリアアンバサダーをメンティーとして育成するワークショップを実施。女性社員にとってのロールモデルと出会う機会を作り、目標達成に向けてステップを踏んでいる。

25年は「アクションを起こし、世の中にメッセージを発信していく年」として、国際女性デーの8日には新たなブランドスローガン「痛みよ、私よ、とんでゆけ。」を発表。菜々緒をメインキャストに据えたウェブCMを公開した。

「マーケティングコミュニケーションだけで世の中はもちろん変わらないし、一企業のみの行動でも1回のキャンペーンでも変わらない。われわれは10年かけてやってこうと思っている」と元島本部長。今後も共感を示して協働する企業パートナーを探しつつ、定点観測を実施して蓄積したファクトを用いて他社への展開を加速する。「大局を動かさないと、世の中は変わらない。最終的には政治や制度に影響を与えるムーブメントを起こしたい」。

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