PROFILE: 吉川秀隆/会長兼社長

タカラベルモントは、理容室・美容室の設備機器、エステ・ネイルサロンおよび歯科・医療クリニックの業務用設備機器や化粧品などを製造販売している。昨年は堅調な国内市場を基盤とし、グローバルな成長が見込める美容室の設備機器や“ヘッドスパ”の浸透に注力した。
変化するヘアサロン業界の需要に
マッチする機器が好調
WWD:2024年はどんな1年だったか。
吉川秀隆会長兼社長(以下、吉川):24年は本格的にコロナ禍が明けて世の中が活発に動いた。コロナ禍を経てリモートという選択肢もできたが、だからこそフェイストゥフェイスのコミュニケーションの重要度が増している。そういった思いがあり、100周年を迎えた21年から自分自身で全ての営業所や工場に足を運んでいる。現場には必ず気づきがある。展示会やヘアサロンで聞く理美容師の皆さんの声は大切にしているし、それを形に変えていくのがわれわれメーカーの役割だ。
WWD:昨今のヘアサロン業界をどう見ているか。
吉川:サロンビジネスの在り方はここ10年で大きく変化している。24年も美容室の倒産件数は過去最多を更新し、大型チェーンの時代から個人店やフリーランスの時代に移行した。自宅を改造して1人で営むなど、開業手段のバリエーションも増えている。そのような背景も相まって、24年は23年7月に発売したシャンプー機器“ミニマルサロンユニット ワン”が順調に売り上げを積み上げた。スタイリングチェアとシャンプー台が一体となり、省スペースとフレキシブルな施術対応をかなえる機器で、人材不足という昨今の業界の課題解決につながったことも好調要因だ。

WWD:化粧品はどうか。
吉川:22年2月にローンチした髪質ケアシリーズ「ヒタ(HITA)」が好調だ。悩みが深く、複雑化するクセ毛マーケットにアプローチできないかという思いで製品開発がスタートした。悩みが深いぶん、自宅でケアを継続したいという需要も高く、店販が売れている。
WWD:美容室事業の柱でもあるシャンプー機器“YUMEシャンプー”はどうか。
吉川:国内では導入サロンが5万軒を超え、今は海外の導入店舗数を増やす段階にある。国内と同様、欧米でも中間層以上の美容室で支持を獲得しており、24年、ヨーロッパにおける“YUMEシャンプー”の売り上げは前期の2倍を超えた。ヨーロッパでは、シャンプーにリラクゼーションを求める文化が浸透しておらず、洗い流すだけの場合も多いため、心地よい場所でシャンプーをする体験はより新鮮味が増す。弊社の理・美容用椅子に座っていただくと違いがはっきりする。首が痛かったり、顔周りが濡れたり、座り心地が悪かったりするマイナスポイントを解消しており、そのまま眠ってしまうほど心地よい。そのような体験をした顧客からリピートの要望が増えれば、導入する美容室も増えていく。その流れで今後も浸透すると踏んでいるが、シャンプーメニューが客単価アップにつながると気づいていないオーナーも多いため、導入のメリットを同時に伝える必要がある。また、ヨーロッパの美容学校ではシャンプー教育にあまり重きが置かれていない。そのため、弊社の教育担当がシャンプーやヘッドスパの技術を伝授している。
WWD:海外に“YUMEシャンプー”が広がればヘッドスパサービスも同様に広がる。
吉川:導入店舗の増加とともに、“ジャパニーズヘッドスパ”としてヨーロッパで広がっている。24年9月に香港でホリスティックビューティブランド「エステシモ(ESTESSIMO)」をローンチした。この2つを弊社が提案するヘッドスパメニューとして今後アジアでも広げていきたい。国内でも、コロナ禍のリラックス需要がけん引し、ヘッドスパメニューが伸長した。訪日客の体験としても需要が高く、国内外ともにさらなる成長が見込める。
WWD:医療事業も持つからこその強みはあるか。
吉川:免疫力を高めることは肌や髪の美しさにつながると言われている。両者は相関関係があると考えており、そういったわれわれの融合が形になるのが25年の大阪・関西万博だ。美容と医療を融合して提案する美が30年、40年、50年先にどうなるかをイメージできる展示を予定している。例えば、宇宙での暮らしも夢じゃない時代に、シャンプーやトリートメント、ヘアスタイルがどう変化しているかなどの想像が膨らむ内容だ。
WWD:25年に注力することは。
吉川:万博を主軸に既存のベースアップが事業のポイントになる。55年前の大阪万博に参加した際、世界中の人にタカラベルモントを知ってもらい、それを機に弊社は飛躍していった。今回も世界中から来る人にタカラベルモントを知ってもらい、次なる飛躍のきっかけとしたい。また、24年10月にフランスの美容家具ブランドの商標権を取得。60年の歴史があり、海外のチェーン店とコネクションを持つブランドだ。これまではわれわれの製品がチェーンの美容室に広がっていなかったが、この変化がヨーロッパに弊社の製品が広がる起爆剤となることを期待する。
実現の可能性はゼロじゃない私の夢
アウトドアの趣味が多く、釣りは30〜40年前からやっている。特に海釣りが好きで、和歌山の海に船で行くことが多い。2023年に、和歌山の海で4m40cmのカジキを釣り上げた。今年は、5m級のカジキを釣りたい。
1921年に鋳物工場としてスタート。31年に理容椅子の製造を開始し理容・美容業界に進出。56年にニューヨークに現地法人を構え、海外事業をスタート。67年に歯科・医療機器の製造を開始。73年に日本に初めて機器を使用したエステティックを紹介し、77年に自社化粧品ブランド(現ルベル)を立ち上げる。82年には基礎化粧品の発売をスタート。2021年に創業100周年を迎えた
タカラベルモント広報室
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