ファッション

第6話:パリからの撤退、藤巻さんは政治家に【丸⼭敬太の “⼭あり⾕あり”な30年】

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「ケイタマルヤマ」は1994年に誕生し、今年で30周年。丸山敬太デザイナーは動植物で飾ったテキスタイルや、和洋中の要素を融合したデザインで、“晴れの日に着る洋服”を作ってきた。しかし多幸感溢れる表現の陰では、幾度の困難も克服してきた。酸いも甘いも知りながら、それでもなお「楽しいことを生み出したい」とする彼の人生譚とは。

それでも、神様は僕に試練を与えてくる。テトラスター設立からわずか半年ほどで、今度はリーマンショックに見舞われた。海外事業が少しずつうまくいき始めていた最中だったが、売り上げは一気に落ちた。「国内ビジネスに集中しよう」という藤巻さんの言葉で、“パリ撤退”の4文字が僕に重くのしかかってくる。憧れのパリコレ参加やパリ店オープン—ようやく成し得たものを手放すのは、とてもつらかった。

藤巻さんの「日本のモノづくりを応援したい」という気持ちも大きかったのだろう。その情熱は、のちに自身で、日本のえりすぐりの品を集めたECサイト「藤巻百貨店」を始めたほどだった。常に人と会い、話し、産地に赴き、そこで知り合ったあらゆる人を紹介し、を繰り返す。僕に目をかけてくれたのも、「ケイタマルヤマ」を日本を代表するブランドにしたいと意気込んでくれていたから。藤巻さんの「ケイちゃんはライフスタイル分野もやるべき」という助言をきっかけに、今治タオルや江戸切子などいろいろなデザインに携わった。これは、今の僕が手がけるアイテムの幅広さにつながっている。

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