サステナビリティ

「ルルレモン」、環境団体からグリーン・ウォッシュの指摘を受ける

環境保護団体のスタンドアース(Stand.earth)はこのほど、カナダ・バンクーバー発のルルレモン(LULULEMON)が見せかけの環境配慮を主張する「グリーンウォッシング」をしているとしてカナダの規制当局に提訴した。

39ページにおよぶ訴状では、ルルレモンはコロナ禍でサプライチェーンが混乱した2022年の上半期において航空輸送の利用を「大幅に増加」し、「環境への影響を軽視している」と指摘した。またマイクロプラスチック汚染を引き起こしながら、「些細な」環境への取り組みを過度に強調して事実と異なる印象を与えていること、「健やかな地球環境の回復」という非現実的な「ビジョン」や「ゴール」を掲げ、そのような「驚くべき変革」を達成するための具体的な言及がないことなどを非難した。スタンドアースの顧問弁護士はルルレモンの「Be Planet」のメッセージを掲げたキャンペーンは、「虚偽または誤解を招く表現の疑い」があるとし、調査を求めている。調査の結果上記の主張が適切であると判断された場合には、その主張に影響を受けたすべての人々に通知することを求める命令や、全世界の年間総収入の3%を上限とする罰金などが考えられるという。

年間50万台の車が道路を走るのに匹敵する二酸化炭素を排出

スタンドアースのメンバーのツェポラ・バーマン(Tzeporah Berman)は記者会見で、「カナダで最も影響力のある企業の1つであるルルレモンは、環境負荷低減の目標を設定しているが、環境に配慮した企業であるという主張には矛盾がある」と話す。ルルレモンは事業における二酸化炭素の間接的排出を指すスコープ3において、30年までに60%の削減を目標値としていたが、同社が発表した最新の報告書では、18年〜22年の間に排出量は128.6%増加していることがわかった。

「ルルレモンの年間の排出量は、50万台の車が道路を走るのに匹敵する。多くのバンクーバー市民がそうであるように、私もファッション産業におけるウエルネスカルチャーの火付け役であるルルレモンを誇りに感じていた。だからこそ、私が同ブランドで購入したレギンスがグローバルサウスで大気汚染を引き起こし、気候変動に加担していると知った時は非常にがっかりした」とバーマン。

ルルレモンは具体策を持って取り組んでいると主張

ルルレモン側は、30年を達成年度とする気候目標に向け具体策を持って取り組んでおり、50年までにネットゼロを目指していると主張する。米ソーシング・ジャーナルの取材に対し、同社の広報担当者は「22年はスコープ3において製品単位での削減を計測した。他社と同様に、より精緻な数値を得るため計測方法の改善にも取り組んでいきたい」と話した。そして、「再生可能エネルギーへの完全な切り替えと、自社および運営施設において温室効果ガスの絶対排出量を60%削減する目標をクリアしたことを誇りに思う」と付け加えた。

スタンドアースはこれまでにもルルレモンの取り組みを批判している。過去2年間ではカンボジアや中国、ベトナムの石炭火力発電所に強く依存していることを非難。また「H&M」や「ナイキ(NIKE)」などが、インフラが不足する地域での再生可能エネルギーの利用拡大に向け政府や産業に働きかけているのに対して、非協力的であるとも指摘した。スタンドアースは繰り返しルルレモンの経営陣に警告してきたにもかかわらず行動を起こさず、自分たちを環境問題に取り組む先駆的企業と位置付けている点が問題だという。

ルルレモンは、非営利団体「アパレル・インパクト・インスティチュート(Apparel Impact Institute)」の気候変動対策の資金に1000万ドル(約15億円)を出資したり、25年までに少なくとも75%の素材をリサイクルや再生素材に切り替えると公約し、植物由来原料の素材開発などを進めたりしている。また、「ニュー・クライメート・インスティテュート(NewClimate Institute)」の分析では、自社の事業におけるエネルギー使用や排出量について詳細な情報開示を行っていると高評価を得ている。

しかし、スタンドアースはルルレモンはさらに高い目標を掲げるべきだと話す。同団体が化石燃料に依存しないファッション企業を評価する指標では、ルルレモンの評価はC-で気候目標が競合よりも遅れをとっているとコメントした。

バーマンは「ルルレモンは、地球をより健康的な場所にするというメッセージを掲げるべきではない。サプライチェーン全体から化石燃料を排除するための、意味のあるコミットメントと透明性のある計画の発表を求めたい」と話した。

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