ビューティ

「アルマーニ」初の日本人メイクアップアーティスト上田裕美が語る、ショーのバックステージと目指すイノベーション

PROFILE: 上田裕美/アルマーニ グローバル メイクアップ アーティスト

上田裕美/アルマーニ グローバル メイクアップ アーティスト
PROFILE: (うえだ・ひろみ)大阪府出身。1年間の英文学留学でロンドンに魅せられ、23歳でイギリスに移住する。バックステージからファッションショーを見て、自分の情熱は美容にあることに気づき、ウエストミンスター大学に入学。メイクアップの基礎を学び、著名なメイクアップアーティストであるアレックス・ボックス、ダイアン・ケンダル、ペトロス・ペトロヒロスなどのアシスタントを務めた。2015年、写真家のデイヴィッド・シムズとのコラボレーションの機会を得て、メンズファッション誌「アリーナ オム プラス」のエディトリアルを担当したのが最初の飛躍の瞬間となった。以来、国際的なメイクアップ アーティストとして世界のトップフォトグラファーとコラボレーションを続けている。作品は、イタリア、イギリス、フランスの「ヴォーグ」「i-D」「デイズド」「アナザー」「マスターマインド」などの雑誌に掲載されている ©︎Armanibeauty

アルマーニ ビューティ(ARMANI BEAUTY)」は1月、新グローバル メイクアップ アーティストに大阪府出身の上田裕美を任命した。上田メイクアップアーティストは今後、15年間にわたり同ポジションを務めたリンダ・カンテロ(Linda Cantello)の後任として、商品開発やキャンペーンビジュアルの制作に携わる。1月23日(パリ現地時間)に開かれた「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PRIVE)」2024年春夏オートクチュール・コレクションでは、ペインティング風の華やかなメイクを披露した。

「アルマーニ プリヴェ」のメイクは
1920年代からインスパイア

WWD:今回の「アルマーニ プリヴェ」のショーでは、デザイナーとどのようなやりとりがあり、どのようなテーマでメイクアップを仕上げたか?

上田裕美アルマーニ グローバル メイクアップ アーティスト(以下、上田):コレクションの2週間程前に、デザイナーであるジョルジオ・アルマーニと彼のチームから一枚のレファレンスの写真が届いた。それに基づき、さまざまなリクエストに対応できるよう、多様なメイクデザインやカラーレファレンスの写真を集め、それらをムードボードにまとめ、5つの異なるバリエーションをスケッチし、最終的にプレゼンテーションブックに落とし込んだ。ショーの数日前にコレクションを初めて確認し、その後、最終的に数人のモデルにメイクを施しどのルックがベストかを決定した。今回のクチュールコレクションはとても表現豊かなので、よりぜいたくなメイクを試すことができた。コレクションの色を取り入れたペインティング風のアイメイクは、1920年代からのインスピレーションを取り入れている。 肌は自然なままに保ちつつ、メイクは服の華やかさを引き立てている。さまざまなテクスチャーを組み合わせることで、ランウェイ上で光と影を演出した。

WWD:グローバル メイクアップ アーティスト就任の経緯やブランドとのやりとりで印象に残っているエピソードは?

上田:昨年の7月から、コレクションでゲストメイクアップアーティストとしてランウェイのメイクを担当させていただいた。前々回の「プリヴェ」が私にとって初めてアルマーニ氏と共に取り組むプロジェクトだった。その中で彼の堅実な美意識と卓越したリーダーシップを目の当たりにし、彼のような人と一緒に仕事をすることをさらに望むようになった。

WWD:「アルマーニ」での仕事とほかのブランドとの仕事で感じる違いは?

上田:「アルマーニ ビューティ」は個々の自然な美を引き出すことを重視し、肌に負担をかけずに素晴らしい表現を実現している。ほかのブランドと比較して、「アルマーニ」の仕事は顧客の個性を際立たせ、自然な美を尊重するアプローチが特徴的だ。

幼いころから“色”に親しみ
カラーセラピーを独学で身につける

WWD:メイクアップアーティストを志したきっかけや原体験は?

上田:幼いころからモノ作りやスケッチは好きで、就学期もカラーセラピーを独学で習得するなど、さまざまな面で色に関わることに進んで取り組んでいたように思う。大学では全く違った分野であるドイツ文学を専攻したが、卒業論文では「日本とヨーロッパの色彩景観条例の歴史について」をテーマに研究を進め、気づけば色に関わることに携わっていた。その後、ロンドンに移住してから、ファッションの学生との交流を通じて私はメイクアップアーティストとしてのキャリアを志すようになった。

WWD:グローバルメイクアップブランドのメイクアップアーティストに日本人が就任するのは近年では珍しいニュースだ。過去のどんな体験が糧となったか。

上田:メイクの勉強を始めてアシスタント業に携わるようになったころ、本当に楽しくて大きな夢に向かって情熱を傾けた。目標は大きく漠然としていたが、日々の小さな一歩を踏みながら着実に前進していくことが重要だと感じている。また、自分自身の道を模索し、周囲の環境に流されず、自分のペースでキャリアを築くことも重要だ。

WWD:クリエイティブのインスピレーション源となっているものは?

上田:時間があるときは、美術館や展示会に足を運び、また旅に出てさまざまな場所を訪れ、異なる文化に触れることを楽しんでいる。また、訪れた地での人々との交流や人間観察も、インスピレーションの源になっている。

商品開発ではカラーレンジの拡大、
機能性の向上を目指す

WWD:商品開発において継承したい「アルマーニ」のレガシーは?

上田:「アルマーニ ビューティ」は自然な艶のあるみずみずしい肌作りを提案した先駆者。さらなるイノベーションを起こし、改善改良を続けて多様性に対応する商品開発を続けていきたい。

WWD:エンドユーザーに注目してほしいメイクアップトレンドは?

上田:最新のメイクトレンドでは、みずみずしく艶のあるグレーズスキンをベースに、ナチュラルに骨格やパーツを強調したソフトグラムメイクが人気だ。肌を整えるために「アルマーニ ビューティ」のベースメイクアイテム“フルイド シアー”を使用し、その上にリキッドアイシャドウの“アイ ティント”のヌード系カラーやナチュラルカラーの“リップ マエストロ”を重ねると理想的な仕上がりになる。また、ワントーンで仕上げるメイクもトレンドで、顔の複数の部位に同じポップカラーを取り入れるスタイルが人気。チークカラーの“ルミナス シルク グロー ブラッシュ”と“リップ マエストロ”の色を合わせることで、より自然な印象のメイクを完成させることができる。

WWD:「アルマーニ ビューティ」で最も気に入っているアイテムは?

上田:バーム状クッションファンデーションの“パワー ファブリック コンパクト”。みずみずしいテクスチャーは薄い膜を張るように肌にピタッと密着し、ベタつかずサラッとした軽い付け心地が気に入っている。化粧直しがしやすいのもおすすめ。

WWD:今後の展望は?

上田:商品開発では、カラーレンジの幅を広げることとユーザーのニーズに応じた機能性の向上を目指す。方向性としては、フィニッシュテクスチャーのバリエーションを増やし、それをブランドイメージに一貫させたい。現在、いくつかの選択肢を検討しており、今後に期待してほしい。

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