ファッション

「リーバイス」の日本トップに聞く 150周年を迎えたブランドの好調要因と課題

「リーバイス(LEVI’S)」の日本市場は現在、韓国のトップも務めるデビッド・ハマティ(David Hamaty)北アジア担当ゼネラル・マネジャーが率いている。ブランドは今年、“501”の誕生から150周年というアニバーサリーイヤーを迎え、ここ数年で再度ブームになったプレミアムデニムの勢いも加わって小売が順調。一方、「ライトオン(RIGHT ON)」や「ジーンズメイト(JEAN’S MATE)」に代表される小売店の卸は、量販店の低迷という構造的な課題を抱えている。ハマティ=ゼネラル・マネジャーは、現状をどのように捉えているのか?

デビッド・ハマティ リーバイ ストラウス 北アジア担当ゼネラル・マネジャー プロフィール

ジョージ・ワシントン大学で国際ビジネスを専攻して修士号を取得。コンサルティング業界に20年以上携わり、マーチャンダイジングからサプライチェーン、小売、ストアオペレーションまでのノウハウを提供した。VFコーポレーションでAPACエリアを担当するなど、25年以上にわたり、アジアで仕事をしている。リーバイ ストラウスでは、アジアや中東、アフリカのオムニチャネル戦略を担当。今年、現職に就任した

「WWDJAPAN」(以下、「WWD」):“501”の誕生から150周年というアニバーサリーイヤーに、日韓のトップに就任した率直な心境は? 
デビッド・ハマティ=リーバイ ストラウス北アジア担当ゼネラル・マネジャー(以下、ハマティ=ゼネラル・マネジャー):歴史と逸話が数多い、ジーンズのパイオニアに携わることができて、とても嬉しく思っている。今年は、そんな歴史と逸話を知っているマニアのみならず、新たなファンを獲得しようとさまざまなアクションを仕掛けた。“501”の150周年関連では、ヒップホップ界最高峰のグローバルフェス「ローリング・ラウド」とタッグを組んだクラブナイトショーを開催。原宿の旗艦店ではアート&ミュージックのスペシャルライブのほか、“501”をステンシルやカリグラフィ、シルクスクリーンなどでカスタマイズができるワークショップを開催した。今年一番の瞬間を、皆で祝うことができたと思う。

「WWD」:改めて「リーバイス」の強みとは? 
ハマティ=ゼネラル・マネジャー:市況や組織による紆余曲折はあったが、「リーバイス」というブランドは、創業当時から変わらず、ずっと強い。1920〜50年代にアメリカを代表するブランドとなって、以降は世界的なブランドに成長。ジェームズ・ディーン(James Dean)からスティーブ・ジョブス(Steve Jobs)まで、世界中の人々を魅了し続けている。今後も「リーバイス」のコミュニティに加わりたいというモチベーションを掻き立て、セールなどに依存しないプレミアムブランドとしての道を歩んでいきたい。

「WWD」:新しいファンの、コミュニティへのモチベーションを掻き立てる方法は? 
ハマティ=ゼネラル・マネジャー:150年続く「リーバイス」の魅力の土台となった、過去の名作を忠実に再現する“リーバイスビンテージクロージング”はもちろん、若い世代にはリサイクルデニムや、バギーなどの90年代のスタイルが琴線に触れるかもしれない。60年代後半から70年代、アメリカ西海岸の若者は古着のデニムをリメイクしてウッドストックなどの音楽祭に繰り出した。リサイクルデニムに身を包み野外フェスに出かける今の若者の原型は、あの頃、当時の若者と「リーバイス」が形作ったものだ。Y2Kなスタイルが生まれた90年代も、「リーバイス」は知っている。私たちの「オーセンティシティ(信ぴょう性)」は、ライバルには真似できないものだ。150周年キャンペーンの「Greatest Story Ever Worn(最高の物語を穿こう)」は、逸話を現代に蘇らせ、再度活性化するものだ。「最高の物語を穿こう」は、個人の生活に即した「リーバイス」の楽しみ方、「リーバイス」との付き合い方も表現している。「リーバイス」は、個人の生活をユニークなものにしてくれる。そんな経験を提供し続けることができたら、望まれるブランドであり続けられるだろう。特に今は、いろんなことが起こっている世の中。まずは「自分のことを語っていいんだ」というムードを醸成することも大事だ。そのためには「リーバイス」も大胆に、スタンスを表明し続ける。ただ、これも新たな挑戦ではない。「リーバイス」のレガシーの一部だ。

「WWD」:ハマティ=ゼネラル・マネジャーにとっての、「最高の物語を穿こう」は? 
ハマティ=ゼネラル・マネジャー:私は70年代、兄から“501”を譲り受けた。大学生だった80年代、ボン・ジョヴィ(Bon Jovi)を聴いていた時はいつも「リーバイス」だった。コミュニティーに加わりたいという渇望感を高めるには、当時から音楽も大事なパートナーだ。今年、「リーバイス」はK-POPガールズグループのニュージーンズ(NewJeans)をグローバルアンバサダーに指名している。ユースカルチャーとのつながりもまた、「リーバイス」が本家本元だ。

「WWD」:市場全体で見れば、長らく低迷していたデニムがここ数年で復調している。 
ハマティ=ゼネラル・マネジャー:コロナ禍に伴う“おうち時間”の増加と、サステナビリティへの意識の高まりは大きな影響を与えただろう。日本でも再び通勤・通学する人が増えているが、カジュアル化は進んでいる。仕事の後、すぐに友達に会えるジーンズへの支持は高い。水の使用量を大幅に削減する技術革新のおかげで、そもそも耐久性の高いジーンズは「一度買えば、長く使える」洋服と捉えられるようにもなってきた。ビンテージ市場も盛り上がっている。二次流通には積極的に関与していないが、一方で私たちもビンテージだけを集めたポップアップなどを検討している。課題は、女性マーケットの拡大だ。日本市場では、「リーバイス」は今なお70%以上がメンズ。デニムのトップスやニット、トラッカージャケットなど商材は進化しているが、シンプルでも女性らしくファッショナブルなアイテムがもっと必要だ。同時に、女性に改めて「リーバイス」の魅力を伝える努力も必要だろう。

「WWD」:大事なビジネスパートナーである量販店の復調も課題では? 
ハマティ=ゼネラル・マネジャー:まずは関係を密にしたい。量販店は、他のブランドも取り扱う中で「リーバイス」を売っている。改めて、「リーバイス」のストーリーや商品について、彼らに伝え、理解・代弁してもらうことが必要だ。ヒアリングして、足りない商品を開発することも大事だろう。現状、量販店でも女性向けの商材が足りないのは、私たちの責任だ。

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