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ブラック・カントリー・ニュー・ロード 新生バンドの成り立ちから古着好きの一面まで

ブラック・カントリー・ニュー・ロード/バンド

PROFILE:2018年に結成。メンバーは、タイラー・ハイド(Vo/Ba)とルイス・エヴァンス(Vo/Sax)、ジョージア・エレリー(Vo/Vn)、メイ・カーショウ(Vo/Key)、チャーリー・ウェイン(Dr)、ルーク・マーク(Gt)の6人。1stアルバム「For the First Time」は全英チャート初登場4位を記録し、英国で最も権威ある音楽賞「マーキュリー賞」にもノミネート。2ndアルバム「Ants From Up There」は、リリースの数日前に当時フロントマンのアイザック・ウッドが脱退するも、全英チャート初登場3位を記録。なお、タイラーの父親はアンダーワールドで知られるカール・ハイドで、メイの母親は日本人

才ある新人が日々現れるロンドンのバンドシーンにおいて、ひとくくりでは説明できない多様なサウンドと高い演奏力、冒険的なアイデアで、突如として最前線に躍り出た男女混合6人組がブラック・カントリー・ニュー・ロード(Black Country, New Road以下、BCNR)だ。2021年2月にリリースした1stアルバム「For the first time」は、デビュー作ながら英国で最も権威ある音楽賞「マーキュリー賞」にノミネートされるという快挙を達成し、今後の順風満帆な活動が約束されたかのように思われた。

しかし、22年2月に2ndアルバム「Ants from Up There」をリリースする数日前、当時フロントマンを務めていたアイザック・ウッド(Isaac Wood)が突然の脱退。それでもバンドはこのアクシデントをものともせず、直後のツアーを除くライブや音楽フェスでは、アイザックに敬意を表してアルバム収録曲を一切演奏せず、全て新曲で乗り切るという地力の高さを見せつけた。

「フジロックフェスティバル’22(FUJI ROCK FESTIVAL ’22)」以来の来日公演を行うため、4月に東京を訪れていたバンドを代表して、チャーリー・ウェイン(Dr)とメイ・カーショウ(Vo/Key)、ルーク・マーク(Gt)の3人にインタビューを敢行。バンドの成り立ちやバンド名の由来、アイザック脱退といった音楽的な話とあわせて、古着好きな一面についてを聞いた。

ーーまずは、バンドの成り立ちから教えてください。

チャーリー:ジョージア(Vo/Vn)だけ南西の街コーンウォール出身なんだけど、メンバーのほとんどはケンブリッジ出身なんだ。小さな街だから音楽シーンも小さなコミュニティーで、16~18歳で必然かのように知り合って仲良くなったね。その時、僕とアイザック(Vo/Gt)、タイラー(Vo/Ba)、ルイス(Vo/Sax)、メイ(Vo/Key)、ジョージアがBCNRの前身となるナーバス・コンディションズ(Nervous Conditions)というバンドを組んでいて、解散後の2018年にBCNRを結成し、翌年にルーク(Gt)が入って今の形になったんだ。ただ、ルークはアイザックと小・中学校が同じ古い友人で、よくナーバス・コンディションズのライブも観に来ていたから、みんなとも知り合いの近い関係にあったんだよ。

ーーバンド名の由来は、「ウィキペディア」の“おまかせ表示”が由来と耳にしました。

チャーリー:その通りだよ。相当数の候補があったんだけど、どれもひどいバンド名ばかりで。なかなか決まらないから「ウィキペディア」のページをランダムに表示してくれる“おまかせ表示”を使ってみたら、何度目かのタイミングで“Black Country New Road”というイングランド・ミッドランドに実在する道路が表示されて、みんなが“嫌いじゃなかった”んだ。最低の中で、一番最低じゃないみたいな(笑)。まぁ、バンド名なんて最初は意味がなくて、音楽を通して意味を持つようになるからね。

メイ:というか、全員がこだわりすぎてアイデアがまとまらなかったから、最終的に「もうなんでもいいよ……」が正しいかな。

ーーサウンドにはさまざまなジャンルの要素を感じますが、自分たちの音楽をどのように定義しますか?というのも、2022年の「フジロックフェスティバル(FUJI ROCK FESTIVAL)」で友人をBCNRのパフォーマンスに誘った際、「どんなバンド?」と聞かれて説明に困ってしまったんです。

メイ:私自身もなんて定義すればいいか困っていて(笑)。

ルーク:包括的にはロックミュージックなのかもしれないけど、僕自身はロックではないと思っている。でも、空港でギターを預ける時なんかに「ミュージシャンなんですね。どんなジャンルを?」って聞かれたら、説明するのが面倒だからロックって言っちゃってる(笑)。

チャーリー:まぁロックっぽいし、なんでもいいんじゃない?

ーーありがとうございます。それでは、2022年にアイザックがバンドを脱退したことについて聞かせてください。バンドとしての大きな転換期を迎え、第二章として活動を続けずに解散する可能性もあったのでしょうか?

ルーク:アイザックから脱退の話があった時、残りのメンバーはBCNRとしてバンドを続けたい意思があったし、アイザックもバンドが今後もBCNRとして続けていくことに関して肯定的だったんだ。そもそもBCNRは、アイザックだけのバンドじゃないしね。彼がいなくても困難を乗り切れそうだと意見が一致したから、すぐに新曲を書き始めて次のステップに進んだんだ。というのも、アイザックが歌う楽曲は彼じゃないと表現できないし、無理に再現する必要もないと思ったからね。

チャーリー:アイザックの脱退は2ndアルバム「Ants from Up There」がリリースされる数日前だった。初のアメリカ・ツアーを全て新曲で挑むのもアリだったんだけど、さすがに時間がなかったし、一度も2ndアルバムの楽曲をパフォーマンスせずに次のステップに進むのはいいアイデアではないという話になり、結局キャンセルになっちゃったんだよね。それでも、いまBCNRはこうして日本に来ることができているし、アイザックなしでもバンドを続けたことは正解だったはず。

ーー楽曲制作の面でアイザックの不在を感じることはありますか?また、作曲はセッションの中で組み立てていくのか、それとも誰かが軸となるものを持ってきて肉付けしていくのでしょうか?

メイ:アイザックの脱退前後で、特に制作プロセスは変わってないよね?

チャーリー:そうだね。前身バンドの時はライブでよくジャムをやっていて、そこで生まれた要素を楽曲制作にも取り入れていたけど、最近はちゃんと作り込んでいることが多いかな。誰かが楽曲となる種を持ち込み、どういう曲にしたいかをみんなで話し合って作るから、「20分間のジャムセッションをして、何ができるかやってみよう」みたいなことはないね。

ーーでは、楽曲制作において影響を受けている音楽以外のものはありますか?

メイ:映画や演劇を観ること、本を読むことは、私にとってかなり音楽的な影響を与えてくれているかな。

チャーリー:音楽を仕事にしていると、家から遠く離れた場所でずっと“仕事モード”だけど、家に帰るとその反動で音楽以外について考える自由な時間が増えるから、それをすごく大事にしているよ。僕はアートが好きなんだけど、ロンドンにはテート・モダン(Tate Modern)をはじめ、無料で観られる美術館がたくさんあるからよく行っているんだ。それが実際に僕のドラミングにどう影響を与えているかは分からないけど、何かしらは絶対にあるはずだと思っているよ。

ルーク:僕もチャーリーほど詳しくはないけどアートが好きで、いろいろなアーティストが表現する作品を観に行けば、その人自身の表現力や、表現したかったことが肌で伝わってくる。それに感化されて、アートとは違う音楽という別のメディアで彼らの感覚や姿勢を表現したくなるね。

ーー今回の来日直前、ユーチューブに演出の凝ったライブ映像「Live at Bush Hall」をアップしていましたが、制作した意図を教えてください。

チャーリー:パフォーマンスしている楽曲は、アルバムのために制作したものではなく、アイザックが脱退したことによって制作したものだから、アルバムとは違う何かしらの形で残したかったんだ。アイデアはメンバー全員からいろいろと出てきたんだけど、映像を作ろうという話になったのはみんなでスイスに行った時。3日間の公演を1つの映像にしたビジュアル・プロジェクトで、それぞれの日ごとにテーマを設けて脚本を書き、衣装を用意したり演出したりして楽しかったよ。

メイ:女性メンバーはドレスアップをしたくて、脚本をルークとルイスが書いてくれた結果、最終日はプロムパーティー(卒業目前の高校生が参加するパーティー)をイメージしているの。

チャーリー:僕のインスタグラムを見てくれたら、メンバー全員の役の詳細が書いてあるよ。

ーーここからは、音楽以外のことについてフォーカスさせてください。音楽で生計を立てられるようになってから、ライフスタイルに変化はありましたか?

チャーリー:車とか、高いものをバンバン買えるようになったね(笑)。

ルーク:一時期、食べていけるか不安になったこともあったけど、音楽一本で生計を立てられるようになっても明確な変化は感じられないかな。

ーーファッションの面ではどうでしょうか?みなさんは、プライベートでもステージ上でも古着を着用しているイメージが強いです。

ルーク:基本的にメンバー全員、古着しか着ないんじゃないかな?僕も今日はほとんど古着で、新品で買ったのは「コンバース(CONVERSE)」のグリーンの“オールスター(ALL STAR)”だけなんだけど、色が気に入らなくて白のペンキで全部塗りつぶして履いてるんだ。

チャーリー:ツアーで訪れた国の古着屋には必ず寄るね。いま着ているセーターは、確か3年前にスロベニアの古着屋で買ったもの。古着はとにかく安いってのもあるし、僕らは飛行機で世界中を回るっていう環境に良くないことをしているから、心のどこかで少しでもエコであるように心がけているのかもしれない。だから、ファストファッションの洋服を着るようなこともないね。

ーーお二人とも、おそろいの貝のネックレスを着けていますね。

ルーク:地元にいたら絶対に買わないんだけど、東南アジアのツアーでインドネシアのバリ島を訪れた時にノリで買ったんだ(笑)。ルイスも持っていて、いわゆるツアーファッションだね。

チャーリー:バリ島は自分探しのモードに入っちゃうくらいいいところで、少しでも地元の人のように島になじみたくて買ってみたんだ。イングランドに夏が訪れるまで着けようと思っているよ。

メイ:男性メンバーが楽しそうな横で、女性メンバーは「何それ、絶対買わないわ」みたいになってたけどね(笑)。

ーー先ほど古着の話があがりましたが、イングランド国内でお気に入りの古着屋はありますか?

メイ:「イーベイ(eBay)」かな……?

ルーク:間違いない!僕もだよ。「モンベル(MONT-BELL)」をよく探すね。

ーー日本では「イーベイ」で洋服を購入することがあまり浸透していないんですよ。

メイ:まぁ、ハイリスクハイリターンだからね。「これいいじゃん!」って思って届いたら、「あれ?」みたいなことはよくある(笑)。あとは、「TK マックス(TK Maxx)」(注:ヨーロッパを中心に出店しているアウトレット品などを取り扱うショップ)はよく行くかな。いま履いている「ガニー(GANNI)」のチェルシーブーツは、ずっと探している時にロンドンの「TK マックス」で奇跡的に見つけたの。憧れのアイテムだったから毎日履いているし、Tシャツは10ポンド(約1800円)くらいのものしか着ないから、私が持っている唯一のブランド品だと思う。

チャーリー:そういえば、日本でかっこいいジーンズを買いたくて、東京公演は全身デニムでもいいと思っているんだけど、おすすめはある?古着でもいいし、デザイナーズブランドでもいいんだけど。

ーー古着で探したいのなら「ベルベルジン(BerBerJin)」は一度訪れた方がいいかもしれませんし、日本オリジナルなら「桃太郎ジーンズ(MOMOTARO JEANS)」がいいと思います。

ルーク:ありがとう!このインタビューが終わったら、チャーリーと行ってみるよ。

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