ファッション

安易な“アップサイクル”や“リメイク”にご用心 商標権侵害でトラブルになるケースも

 サステナビリティに対する意識の高まりから、アップサイクルやリメイクに着目するブランドや企業が増えてきた。また、ハンドメイドマーケットの台頭やSNSの普及によって、個人が気軽にハンドメイド作品を売買できる時代が訪れている。

 アメリカのジョージア州・アトランタに拠点を置くコスチュームジュエリーブランド「シバー+デューク(SHIVER + DUKE)」もアップサイクルを押し出すブランドだの1つだ。ビンテージパーツを再利用し、新しくコスチュームジュエリーに作り替えて販売していた。自社ECと10軒程度(卸した点数は確認できるだけで約200点)にしか卸していなかったような小規模なブランドだが、「シャネル(CHANEL)」のボタンをイヤリングなどにリメイクして販売したことで、「シャネル」から商標権侵害で訴えられる事態を引き起こしてしまった。

 「シャネル」は、「シバー+デューク」が「シャネル」の“CC”ロゴのボタンをイヤリングやネックレス、ブレスレットなどに加工して販売したことが商標権侵害だと主張し、権利侵害と認められる商品の廃棄や損害賠償を求めた。最終的にこの件は、「シバー+デューク」が保有する「シャネル」のロゴ付きパーツなどを全て「シャネル」に引き渡し、ウェブサイトや広告などからも全て削除することで2022年11月に和解した。また、今後同様の商品を販売したり宣伝した場合には、高額な損害賠償(例えば侵害品を販売した場合、1点あたり5万ドル(約655万円)の支払など)を行うことを裁判所から命じられた。

 「シバー+デューク」はイヤリングなら70ドル(約9170円)前後、ブレスレットなら高くても90ドル(約1万1790円)程度で購入できるアイテムを販売しているブランドで、和解の内容から見ても、「シャネル」は金銭的な賠償が主目的ではなく、「安易に人気ブランドのブランド力にフリーライドすると痛い目を見る」ということを知らしめるための訴訟だったようにも見受けられる。

 日本のC to Cプラットフォームをパトロールしてみると、人気ブランドのロゴを利用したリメイク品などは数点しか発見できず、侵害品を流通させまいとするプラットフォームやブランドの努力が伝わってくる。他方、インスタグラムで検索すると依然として侵害品とみられるリメイク品を販売しているアカウントを相当数見つけることができる。

 ラグジュアリーブランドをはじめとする各ブランドは、そのブランド力を維持するために多大な投資を行い、ブランドを育ててきたからこそ今の地位や人気がある。ECを利用して誰でも簡単に売買が可能となった時代だからこそ、「シバー+デューク」のようにビジネス規模が小さくてもブランドの目に留まる確率は高まっており、フリーライドすることの違法性や危険性をしっかりと理解する必要があるだろう。

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