ファッション

「スノーピーク」3代目社長の山井梨沙氏のパーパスは“らしさ”を言語化 “Snow Peak Person”の自発性を促進

 2020年3月にスノーピークの創業家3代目として社長に就任した山井梨沙社長は、モノを売るだけではなく体験を通じてライフバリューを創出するブランドとして「スノーピーク(SNOW PEAK)」を昇華させてきた。初代の登山、2代目のキャンプに次ぐ新たな価値提案として、山井社長は14年にアパレル事業を立ち上げた。そして当時32歳で経営者に抜擢され、まず取り組んだのはスノーピークが目指す企業像を言語化すること。19年末に“The Snow Peak Way”というパーパスに相当するミッションを改定したことを受け、20年に「衣食住働遊」という5つの事業テーマを設定した。

 「私の存在価値は地球上全てのステークホルダーに価値提供をすること」と山井社長は語る。さかのぼると18年にはボトムアップの組織に変更し、毎年7、12月に社員総会を実施する。「社長就任当初は、自分の言葉がスタッフに響いていなかった。そこで社員一人一人からスノーピークらしさとは何か?チャレンジしたいことは何か?を聞き、それを言語化・可視化すること」を徹底した。そして現在は約700人まで拡大したスタッフ“Snow Peak Person”の思いを反映した行動指針を作成して冊子に。そこには「心の三か条」(想うこと。信じること。感謝すること。)と「行動の六か条」(尖れ。遊べ。語れ。冒険せよ。育てろ。繋がれ。)がある。この九か条を実践、達成することを評価制度にも反映した。結果「先代はトップダウン型で受け身のスタッフも多かったが、現場の主体性が向上。行動指針などを言語化したことで自分の思いも伝わりやすくなった」と手応えを感じている。

 具体的にはコロナ禍でユーザーとオンラインでエンゲージメントすることを高め、「店舗スタッフが顧客に電話をかけコンテンツの紹介をしたり、社内スタッフがキャンプで使用するマグカップを自宅で使うシーンを発信したりして成果を得るなど成功体験の積み重ねができた」という。その成功体験が現在も好影響を与え、個人レベルの質が上がっている。主体性をもって自分に関わる人にクリエイトできるようになったので、昨年7月の社員総会では「全員がデザイナー(関わる業務をクリエイトすること)でいてほしいと伝えた。例えば、新商品の耐火性能評価試験など地道で受け身の作業が多かった品質保証チームからは、地球環境に影響を与えない高品質な商品の提案があった」と日常業務から抜け出したアイデア出しに好感触を得た。

 売り上げは指標の一つだが、スノーピークでユーザーを幸せにし、新たな価値を作り続ける。1月1日からはユーザーのポイントシステムの仕組みにも体験価値を加えた。「社員のライフバリューも重要視する。福利厚生や営業的なKPIの仕組みを作り直している。10年後に日本で一番よい経営者になるのが私自身の目標」と前を向く。

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