ファッション

慶應大学発のファッションサークルがファッションショー 「純粋で自由な若者のクリエイションを堪能して」

 慶應義塾大学発の学生服飾団体、Keio Fashion Creator(ケイオウファッションクリエイター)は27日、三越日本橋本店で発表した2021年度のファッションショー「MONTAGE(モンタージュ)」をオンラインで公開する。33大学から109人が所属する大型ファッションインカレサークルで、有数のファッション好きの学生が集う同団体は、テーマ決めから洋服の製作、ステージづくりなど全て自分たちで行う。そんな学生たちがテーマ・作品にこめた想い、歴史ある日本橋の三越劇場を舞台に選んで発表すると決めたメッセージとは。ここでは、寄稿形式でコレクションへの思いを語ってもらい、ルックを紹介する。

ランウエイショー2021 「MONTAGE」について

 21年度のファッションショーで私たちは、モンタージュという、映画において別々に撮影されたカットとカットをつなぎ合わせる技法をテーマに設定しました。私たちが目にする完成した映画作品は一つの物語となっていますが、実際には切断されたバラバラのカットによって構成されています。それらをつなぎ合わせるモンタージュという編集技術を私たち自身の人生と重ねて解釈して、今回のコレクションに落とし込みました。ショー会場ではデザイナーの名前とともに、それぞれがインスピレーションを受けた映画をリストで公開。「パラサイト」や「戦場のメリークリスマス」「ハウルの動く城」「ミッドサマー」といった作品から感じたことを洋服に落とし込み、デザインで表現しています。例えば「ジョーカー」の映画からインスピレーションを受けたルックでは、ドレスの裾に映画を象徴するセリフを大胆に描き込み、社会へのメッセージとも受け取れるものに仕上げました。

 映画同様に、私たちの人生も「生」から「死」まで本来は一つの大きな物語であるはずです。しかし人生の中でさまざまな苦労や困難に直面したときに、私たちは先行きの見えない不安に苛まれ、まるで人生がそこで終わってしまうのではないかと思うこともあるのではないでしょうか。あらゆる社会の不条理や抗えない不安によって人生の物語が「カット」されてしまったように感じても、時間は止まることなく進んでいきます。そのようなときにあえて立ち止まって考えてみると、自分は多くの大切なものに囲まれて生きてきていたのだと気づけるはずです。友人、家族、大切な服、好きな本……。自分にとって大切な何かは、不安に押し潰されそうなときにいつも私たちを勇気づけ、前へ押し進めてくれます。そして大切なものとともにまた次のカットへ、物語を前進させていくのです。私たちはこの大切なものを“記銘”と呼び、それをデザイナーの部員各々が大切にする映画の中から衣服で表現することにしました。

 19日に発表した会場は、日本橋三越本店内の「三越劇場」です。私たちが三越劇場を選んだのは、この伝統ある劇場の存在が、ショーテーマである「MONTAGE」と重なると感じたからです。昭和2年(1927年)の誕生以来、戦争や災害を経験しながら文化を次の時代へ継承してきたこの劇場は、私たちのショーテーマでいうと、日本文化を次のカットへ伝えてきた映画におけるモンタージュのような役割であるような気がします。そして、三越劇場は日本最初のファッションショーが開催された場所でもあります。日本のファッションショーの始まりの場であるこの会場で、学生である私たちが94年の時を経て今この時代にファッションショーを開催しました。そんな三越劇場で私たち若者が、ファッションという流動的な文化を次のカットへとつないでゆき、文化という物語を前進させる役目を果たすことができればと思っています。(文・プレスチーフ 杉山陽紀)

開催への想い(代表 脇嶋のに花)

 私が代表に就任し始めた21年1月から常にここだけは譲れないと思っていたこと、それは「自己満足のショーで終わらせない」。見た人が「?」で終わるショーには絶対にしたくありませんでした。「何かよくわからないけれど美しいな……」という印象でも人は感動すると思います。しかしメッセージを断片でも伝えることが出来た瞬間に、もっと大きな感動を与えることができます。その"感動"は、コロナという不条理によって沈んだ社会と失望した人々に勇気を与え、明るい未来へ進むための原動力になると信じています。私たちのショーが素敵な感動体験の場になることを願い、今年度「MONTAGE〜記銘との縫合〜」を約110名の部員で制作しました。コロナ禍であろうが無かろうが、人に与えられる時間に変化はありません。私たちの学生生活はあっという間に終わりを迎えます。「学生」という誰からの圧もかけられない立場でいられる時間は限られています。屈している時間は1秒たりともありません。純粋で自由な若者のクリエイションを堪能して頂きたいです。

※ルック16、33を除く

Keio Fashion Creatorとは

 Keio Fashion Creatorは、毎年12月にファッションショーを開催する学生服飾団体。2002年に慶應義塾大学の「ファッションビジネス研究会」から生まれ、09年から服飾専門学校エスモードジャポンと提携した授業を開講する。12年にインターカレッジ化し、19年目を迎えた21年現在は約110人のさまざまなバックグラウンドを持つ学生が、デザイナー、ディレクター、プレス、モデルマネージャーの4つの役職に分かれ活動中。ファッションショーにこだわる理由は「ファッションは体の最も近くで自分を守り、同時に力を与えてくれる存在でもあるから」。自分たちの意思を表現・表明するために、設立当初から実際に観て肌で感じるというファッションショーの醍醐味にこだわりを置く。20年度は「辿る」をテーマに、「国立科学博物館 地球館」が醸すノスタルジックな雰囲気に合わせたショーを届けた。コロナ禍前には、1日で600人以上の来場者数を記録した。

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