ビューティ

編集者が立ち上げたニッチフレグランスのD2C「ラニュイ」 クラシック音楽を香りとして表現

 コロナ禍以降、販売好調なアイテムの1つに香水がある。外出機会が減った中でのリフレッシュや癒やしとして、香りを楽しむ人が増えているというのがその背景だ。「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」の香水“レプリカ”の大ヒットを受け、有力ラグジュアリーブランドが入門商品として香水販売に力を入れる動きも広がっている。一方で、新興の作り手によるこだわりの詰まった個性派香水“ニッチフレグランス”もじわじわ浸透中。「クラシック音楽を香りにする」がコンセプトの香水のD2Cブランド「ラニュイ(LA NUIT)」も、まさにそうしたニッチフレグランスの1つだ。

 クラシック音楽の名曲からイメージを膨らませ、香りに落とし込んでいく手法が「ラニュイ」の香水作りの特徴。9月21日から自社サイトで販売している第1弾商品は、ブランド名の由来でもあるラヴェルのピアノ組曲「夜のガスパール(Gaspard de la nuit)」が着想源だ。同組曲は「オンディーヌ(Ondine)」「絞首台(Le gibet)」「スカルボ(Scarbo)」の3曲から成り、それぞれの曲をイメージした異なる香りの3つのオードトワレを作成した。

 香りを監修したのは、高級ホテルやレストランなどの香りのディレクションを手がける和泉侃(いずみ・かん)。水の精オンディーヌが男を誘惑するストーリーの「オンディーヌ」は、トップノートがウォーターアコード、ミドルノートがスズラン、ラストノートがバイオレットで官能的。不気味な鐘の音が響く「絞首台」はトップノートをレザー、ミドルノートをエレミ、ラストノートをシダーにして重厚に。暴れ回る小鬼を描く超絶技巧曲「スカルボ」はトップノートがクローバー、ミドルノートがネロリ、ラストノートがオークモスでスパイシーに、といった具合だ。

聴覚×嗅覚×視覚、五感に訴える形で香水を発信

 「ラニュイ」を手掛けているのは、フリーランスの編集者・ライターの海老原光宏。もともとクラシックのピアノ楽曲を弾くのも聴くのも好きで、学生時代はピアノの演奏サークルに所属していたほど。大好きなクラシック音楽を日々楽しむ中で、聴覚と嗅覚を組み合わせる「ラニュイ」のアイデアを思いついたという。京都のホテルに宿泊した際に香りのディレクションをしていた和泉氏を知って、インスタグラム経由で連絡を取り、立ち上げに漕ぎ着けた。「自分のようなクラシック音楽ファンだけでなく、ニッチフレグランス好き、香水好きの人にも楽しんでほしい」と海老原。

 初回限定盤は、3種各10ミリリットルのオードトワレをセットにして、ブックレットを付けて販売している(1万8700円)。ブックレットには「夜のガスパール」の楽譜や、楽曲のもととなったベルトランの詩、音楽家・文筆家の菊地成孔によるラヴェルと香りについてのエッセイ、フランス人ピアニストへのラヴェルについてのインタビューなどを掲載しており、クラシック音楽のオタク層にも響く内容だと胸を張る。また、ブランドの公式インスタグラムアカウント(@lanuit_fragrance)には、写真家の野村佐紀子が「スカルボ」をイメージして撮り下ろした写真を掲載。「音楽の聴覚、香りの嗅覚に、写真という視覚を組み合わせた。今後も五感を組み合わせるやり方で香水を発信していく」と海老原。自社ECが主販路だが、今秋はポップアップストアの実施も予定しているという

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