ファッション

イタリア家具「カッシーナ」トップに聞くコロナ禍における制作活動や顧客とのコミュニケーション

 新型コロナウイルス感染拡大で、昨年から欧米ではロックダウンが続き、多くの企業活動に影響を与えた。欧米では現在、ワクチン接種が進み徐々に平常を取り戻しつつあるが、まだ本格的に経済活動が戻るには時間がかかりそうだ。イタリアの国を代表する産業の一つであるインテリア。ロックダウン中には、店舗はもちろんのこと、工場も閉鎖せざるを得ない状況だった。今年4月にオンラインで今年の新作を発表したイタリア高級家具「カッシーナ(CASSINA)」。ルカ・フーゾ(Luca Fuso)=カッシーナ最高経営責任者(CEO)に、ロックダウン中にどのように企業運営を行ったか、また、コロナがクリエイションに与えた影響やビジネス動向について話を聞いた。

WWD:2021年新作のコンセプトは?ラインアップの構成やコンセプトにコロナの影響はあるか?

ルカ・フーゾ=カッシーナCEO(以下、フーゾ):コロナは商品を開発する上で、各担当と会うことができないので影響があった。コロナ禍で多くの人々が家で過ごす時間が増え、家というものを見直すようになった。その影響で、単なる美しさだけでなく、機能性と快適さ全てを持つ家具への関心が高まったと思う。今までは、家具単品にフォーカスすることが多かったが、コロナになってからは、家や部屋全体のコンセプトを作るようになった。快適かつ健康に過ごせる家、サステナビリティといったものが大きなポイントだ。サステナブルな素材を利用したり、空気清浄機能を加えてより快適な空間にするような家具が増えている。

WWD:新作コレクションの見どころとその理由は?

フーゾ:1969年にトビア・スカルパ(Tobia Scarpa)がデザインした“ソリアナ”ソファをモダンにアップデートした。デザインはコンテンポラリーで今でも十分に通用するが、サステナブルな素材を用いてより良い座り心地になっている。「カッシーナ」というと、イタリア人やフランス人のデザイナーとの協業が多い印象があるかもしれないが、初めてデンマーク人のデザイナーであるボーディル・ケア(Bodil Kjaer)を起用したアームチェアなど3点が登場した。アメリカ人のジェフリー・バーネット(Jeffrey Bernett)による新作もある。「カッシーナ」は今までも折衷的なインテリアを提案してきたが、北欧のデザイナーの起用は新たな方向性だと言える。コントラクト向けの商材に関しては、もともとは住居用だった家具を公共施設などでも使えるように認証を取り、より幅広いシーンで使えるようにしている。

WWD:コロナ禍におけるデザインや制作工程は?どの程度リモートで行えるか?

フーゾ:ほとんどリモートで行うことが可能だ。製品の最終確認をする場合などは、実際に会うこともあるが、それが無理な場合は最終のプロトタイプを送付して確認作業を行う。デザイン画やサンプルなどは送付したり、ビデオミーティングをしたり、テクノロジーがそれを可能にしている。ただ、今まで以上に、全てのスタッフがお互いを信頼し、自信を持って仕事に取り組む必要がある。

WWD:コロナで強化した戦略や新しいサービスは?

フーゾ:顧客とビデオでコミュニケーションを取るようにしたが、とてもうまく行っている。昨年は2カ月、工場を閉鎖しなければならなかったが、再開後は全ての市場で受注が伸びている。先述したが、コロナが家を見直すきっかけになり、インテリアにお金をかけたり、家を改装する人が増えた。また、リモートワークが定着したこともあり、アメリカやフランスでは郊外に広い別荘を購入する人が増えている。都市の家よりも、別荘で過ごす時間の方が長いため、当然、インテリアへの投資額も高くなる。19年よりコロナ禍の業績が伸びている。

WWD:コロナ禍で好調な市場とその理由は?

フーゾ:ドイツやスイス、ベネルクス3国、イタリアやアジアも好調だ。アメリカではハンプトンなどの高級リゾート地の伸長率がとても高い。理由は、“ステイ・ホーム”でインテリアにお金を使う人が増えたからだ。

コロナでより格好よく、快適な家への需要

WWD:コロナ禍の売れ筋商品は?

フーゾ:アイコニックな商材の動きが良い。例えば、ル・コルビュジェ( Le Corbusier)、シャルロット・ペリアン(Charlotte Perriand)、ピエール・ジャンヌレ(Pierre Jeanneret)による“LC”シリーズやヘリット・リートフェルト(Gerrit Rietveld)のチェアなど。ジャンヌレによるインド・チャンディーガルの都市プロジェクト用に作られたコレクションは大ヒットし、これからアイテムが増える。また、われわれは積極的に文化的活動に参加しており、それは我が社のDNAの一つだ。9月5日までイギリスのロンドン・デザイン・ミュージアムで開催中の「シャルロット・ペリアン:ザ・モダンライフ」展への作品の貸し出しや、ベネチアビエンナーレの一環としてウィルモット財団で11月21日まで、ペリアンとジャンヌレによる“レフュジー トノー”を再現して展示している。

WWD:コロナが消費者心理にどのように影響していると分析するか?

フーゾ:人々は生活に対して今まで以上に気を配るようになり、質の高いのリクリエイションを求めている。また、家の存在が今までと違うものになった。コロナで外食できず、友人を招くことが多くなったため、より良いインテリアにしたいと考える人が多い。今までは、ファッションや時計、バッグといった外で格好良く見える商品が売れていたが、今は、格好良い家にお金をかける傾向にある。

WWD:パトリシア・ウルキオラ(Patricia Urquiora)との契約を5年延長した理由は?

フーゾ:長い間、パトリシアと協業しているが、とてもうまくいっている。彼女は、新しい才能を見つけるのが得意だし、「カッシーナ」の将来における切り札をたくさん持っている。今後の新しい指針を作るべきだと思っている。

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