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アマゾンが衣料品販売で「全米トップシェア」の衝撃 鈴木敏仁USリポート

 アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する連載。ECや小売業の枠を超え、社会に多大な影響を与えるようになったアマゾンは、アパレル市場においても圧倒的な存在になろうとしている。

 アマゾン(AMAZON)による米国市場のアパレル・フットウエアの売上高が昨年およそ15%伸びて推定410億ドルとなり、リアルも含めた全アパレル市場の11~12%、EC(ネット通販)で34~35%を占めて、ウォルマートを抜いてトップになったと米ニュース専門局CNBCが3月17日に報じている。

 日本円だと105円換算で4兆3000億円となり、「ユニクロ(UNIQLO)」のファーストリテイリングの2倍の規模になる。アマゾンは米国市場のみ、ファストリは全世界なので、アマゾンも全世界市場とするとその差はさらに大きくなることだろう。

 アマゾンはカテゴリー別の売上高を公開していない。こういった数値はすべて推定値となり試算する企業によってまちまちだが、アマゾンがトップだという数値は昨年あたりからすでに出始めていておそらくほぼ間違いない。とうとうそこまで来たのかと感慨を持たざるを得ない。

米国では上位3社で31%のシェア

 昨年8月時点での調査企業による資料では、全アパレル市場のシェアはアマゾン11.1%、ウォルマート(WALMART)10.6%、ターゲット(TARGET)4.3%だった。ECだとアマゾン28.8%、ウォルマート1.5%、ターゲット1.0%となっている。この数字を元にすると、3社で全アパレル市場の26%、ECアパレル市場の31.3%を占めていることになる。

 アパレルを中心に据える小売企業としては、百貨店のメイシーズ(MACY’S)、ノードストローム(NORDSTROM)、コールズ(KOHL'S)、オフプライスストアのTJマックス(TJ MAXX)、そして専門店のギャップ(GAP)、ブランドメーカーのナイキ(NIKE)といったところが大手だ。もともとウォルマートは全アパレル市場でトップであること、アマゾンはアパレルEC市場でトップであることの2点を考えると、米国のアパレル市場の特徴は、たくさんのカテゴリーを持ちアパレルを一つの部門として取り扱う総合業態の方が専門業態よりも強いという点にある。

 専門業態であるファーストリテイリングがトップとなっている日本市場との大きな相違点だ。

 注釈として抑えておきたいことは、市場シェアが俎上に上がるときは流通総額をベースにして試算されている点である。とくに数値を公開していないアマゾンの場合はトラフィック分析や調査による推計が主体となり、その商品が自社仕入れの直販なのかまたはサードパーティによるマーケットプレイスなのかは考慮しない。

 ウォルマートもターゲットもマーケットプレイスを導入しているのだが、いまだアマゾンほど大きくないので、これだけの差が出てしまっているともいえる。マーケットプレイスは極めて重要な存在で両社ともに強化しているのだが、アマゾンのようにはなかなかいかないのが現状である。

「高価格戦略の罠」を突破できるか

 消費市場のサイズは低価格帯になるほど大きく、価格帯が上がるに従って小さくなる三角形を描く。アマゾンもウォルマートも下方のマスを狙っているから売上高規模が大きくなるのだが、さらに売り上げを伸ばそうと上方向、すなわち高価格帯に向かおうとするのは小売業界にはよくある戦略である。

 ただ、ほとんどのケースでうまくいかない。リアル店舗だと売り場スペースに限界があるので他の品ぞろえを絞ることになり、お客にとって逆に魅力のない品ぞろえとなってしまい売り上げが減ってしまう。客単価が上がるからという浅はかな目論見でやって失敗する事例はそこら中にあるし、これを読んでいる読者にも経験があるかもしれない。

 成功している小売企業とはこの手の罠にはまらないものでウォルマートも例外ではなく、今でも低価格やプライスリーダーであることを強調し続けている。

 一方、どうしてもやりたいのがアマゾンで、昨年9月に開始したのがラグジュアリーブランド専用サイトのラグジュアリーストアだ。「オスカー デ ラレンタ(OSCAR DE LA RENTA)」が契約したことで話題を呼び、その後9ブランドが参加しているのだが、知名度の高いブランドはいまだ登場していない。メディアの取材に対しては50社を超えるブランドと協議中でこれから増えていくと説明しているが、今のところ発表はない。

 ブランドメーカーが躊躇する理由は2つある。1つめはアマゾンが持つブランドイメージと合わないこと。2つめはコピー商品の横行である。マーケットプレイスにはコピーを売るセラーが多く、見つけて取引停止にしても違うアカウントで売り始めるので、モグラたたき状態となっている。問題は深刻で政府と協力体制を敷いて対策を打っているのだが、ブランドメーカーが満足するレベルには至っていないのが現状だ。

 相変わらず壁は大きいのだが、重要なことはこういった試行錯誤を続けることにあり、仮に失敗したとしても得るものは大きいだろう。アマゾンの成功は星の数ほどの失敗の積み重ねの上にできあがっている。こういった姿勢を見る限り、アマゾンにはまだまだ伸び代がありそうだと感じる。

 10年ほど前までは衣料品はネットに向かないと言われていたものだが、そういった常識はもろくも崩れ去った。アマゾンがトップに立ったことは時代の変遷を象徴するようなニュースだ。
 

鈴木敏仁(すずき・としひと):東京都北区生まれ、早大法学部卒、西武百貨店を経て渡米、在米年数は30年以上。業界メディアへの執筆、流通企業やメーカーによる米国視察の企画、セミナー講演が主要業務。年間のべ店舗訪問数は600店舗超、製配販にわたる幅広い業界知識と現場の事実に基づいた分析による情報提供がモットー

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