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ネット通販のアパレルは3割も 「返品が当たり前」のアメリカ 鈴木敏仁USリポート

 アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する連載。米国と日本の消費文化の違いはたくさんあるが、代表的なものが返品に対する考え方だろう。デジタル化で変化する米国の返品事情を報告する。

 小売業界団体のNRF(全米小売業連盟)によると2020年の年末商戦の売り上げは、前年の同じ時期に比べて8.3%増と予想を超えて大きな伸びに終わったという。過去5年間の平均値は3.5%増、19年末は4%増だった。NRFの予想では3.6~5.2%増だったので、例年と予想を大きく上回った。パンデミックが始まって以来、大手小売企業は異常ともいえる増収増益を続けており、歳末もその延長で終わったことになる。

 失業率が急増し消費は冷え込むかと思いきや逆に振れているわけだが、原因はいくつかある。

 1つ目は規制がかかった外食やレジャーといった分野の支出がモノに流れたこと。2つ目は中小のローカル小売店は壊滅的となったが、チェーンストアはデジタルシフトなど息を継ぐために必要な資金力があり営業を継続できたこと。3つ目は株高に代表される資産バブルが起きて給料は減ったが金融資産は増えたという人が増えて財布の紐が緩んだこと。

 そしてこの8.3%という高い成長率を支えているのがネット通販だった。NRFによると、ネット通販の売り上げは24%増。別の調査機関によると32.2%増(Adobe Analytics)、45.2%増(Digital Commerce 360)。ECは調査機関によってバラツキがあり複数の数値が出てくるのだが、非常に高い成長率で終わったことは間違いない。

膨大な返品が頭痛のタネ

 アメリカでは例年の恒例行事といえるのが、年末商戦後の年明けにやってくる返品の山である。日本人には返品は失礼だという倫理観があるので大問題とはなりづらい。だが、アメリカ人には返品に対する罪悪感のようなものは皆無なので、小売企業にとって返品は大きな頭痛の種になる。

 返品政策は企業戦略や競合状況に左右される。百貨店のノードストローム(NORDSTROM)が無条件返品を謳っているのは有名だが、これは顧客に対する高いサービスの一貫である。一方を競合が激しいと返品政策が緩くなる傾向がある。ウォルマート(WALMART)が急成長している時期にノードスロームと同じ無条件返品としていたことがあるが、これは競合企業に対抗するためである。

 NRFによると20年の返品総額は全体の10.6%にあたる4280億ドルと試算されている。この10%前後という数値はおおよそ業界の標準数値と思って良いのだが、記事にあるようにオートパーツの19.4%、アパレル12.2%、そしてハウスウエアの11.5%と商材の特性によってバラツキがある。

 これがネット通販(EC)になるとまた様相が異なってくる。昨年は大きなECシフトが起きたため売り上げが爆増しているのだが、ECの返品率はリアルのおよそ2倍の20%前後が業界標準なので、年末商戦後の返品ボリュームはさらに急増していると推定できる。さらにギフトが中心となる歳末は普段よりも返品率が高くなるので(およそ30%前後と言われる)、おそらく莫大な商品が返品フローへと逆流していることだろう。

 20年末の年末商戦返品額が700億ドルを超えると予測する調査会社があり、これは日本円にすると7兆円超という巨額な数字である。

 そしてこれもまたカテゴリーによって異なるのだが、EC市場における返品率は、アパレルが29%、家電16%、ホーム関連商品11%などで、アパレルがダントツで返品率が高い。届いた商品を試着して合わないから返品するという“買い方”に起因する理由だけではなくて、アマゾン(AMAZON)のプライムワードローブのように複数の商品を送り不必要なものを返品してもらうという“売り方”に起因する理由もあり、返品が増える要素が他のカテゴリーに比して多いのである。

 またECでは売りづらかった靴というカテゴリーで無料返品をうたい文句にして急成長したのがザッポス(ZAPPOS)で、この企業がパイオニアとなって業界標準を作ってしまったと考えている。消費者はもはや無料返品ポリシーを持っていないEC企業では買わなくなってしまっているのである。(次回に続く。2月掲載予定)

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