ファッション

私を変えた3人のデザイナー【トミー・ヒルフィガー編】 マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」Vol.13

通学中に、デザイナーのトミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)がパーソンズで講演するという1枚のポスターが目に止まり、参加した。

講演会での出来事は、鮮烈に覚えている。彼は何百人もの聴衆の前で、自身の生い立ちやブランドを設立した背景、ロゴのカラーの意味について話してくれた。私は彼の言葉をなんとか理解しようと、必死にメモを取りながら聞いた。

当時「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」は、設立して25周年を迎えたところだった。その1年前、私は幸運にもニューヨーク・メトロポリタン歌劇場で開催されたブランド創立25周年記念パーティーに参加。オペラハウスの階段で行われたファッションショーをはじめ、米ロックバンドのストロークス(The Strokes)によるライブパフォーマンスも行われた。

そのころから、私の中で一つの疑問があった。

「トミー ヒルフィガー」は、アメリカを代表するデザイナーズブランドだ。でも当時の日本では、デザイナーズブランドという認識は薄く、“スポーツブランド”または“R&Bブランド”という印象が強かった。彼はその事実を知っているのか。それについてどう考えているのか。どうしても知りたかった。

講演会終盤の質疑応答の時間に、私は手を挙げた。「こんな質問をしたら会場からつまみ出されるのではないか」と怖かったが、チャレンジしたかった。

「私は日本から来ました。英語が分かりづらかったらごめんなさい。日本では、あなたのブランドはデザイナーズブランドだと思われていません。スポーツブランド、またはR&Bと精通するブランドだと思われています。そのことをご存知ですか?それについてどう思いますか?今後、日本でのブランドイメージを変えるつもりはありますか?」と、率直に聞いた。緊張は頂点に達していた。

すると彼は、「内緒だよ!僕は日本でのイメージにもちろん気付いている。だから今度、東京・原宿に大きなフラッグシップストアを構えるんだ。今、君を招待したよ!」と答えてくれた。

私は「Thank you」と言いつつ、震えと緊張で泣きそうになりながら、自分の席に戻った。講演会が終わり、自分が質問できたことに満足しながら会場を後にしていると、「トミー ヒルフィガー」のチームが近づいてきて、「あの質問をしたのは君だね?最高の質問だったよ。原宿に旗艦店をオープンする際は、君を招待するよ」と話してくれた。

実際、翌2012年4月、アジア初の最大規模の旗艦店「トミー ヒルフィガー」表参道店がオープンした時、トミー・ヒルフィガーは飛行機代を出して本当に私を招待してくれた。

それ以降も、彼には何度も会う機会に恵まれた。私は毎回彼に質問を投げかけ、彼は常にストレートなアンサーで返してくれた。そのたびに、彼のビジネスセンスとデザインセンスに感化された。彼は世界をデザインしている。ビジネスセンスとデザインセンス、創造力が持続可能な社会を生むと学んだ、とても大切な出会いだった。

次週、「フィリップ・リムとの出会い」につづく……

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