ファッション
連載 不易と流行のあいだ

菅付雅信連載「不易と流行のあいだ」 ファッション・ピープルのロケーション

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 ファッションという「今」にのみフォーカスする産業を歴史の文脈で捉え直す連載。今回は多極化するファッションの首都を考察する。編集協力:片山マテウス(この記事はWWDジャパン2020年10月12日・10月19日号からの抜粋です)
 
 仕事柄、さまざまな領域のメルマガに登録しているが、海外の写真エージェンシーのメルマガも積極的に読むうちの一つ。その中から先日届いたものに興味深い内容があった。ロンドン、パリ、ニューヨークと主要なファッション・キャピタル(首都)に拠点を置く大手エージェンシーのアートパートナーの9月15日のメルマガは、「The Season Ahead: Our Artists' Locations」というタイトル。つまり「季節に先駆けて:私たちのアーティストの居る場所」をうたう。内容は彼らがエージェント業務を行う写真家、スタイリスト、ヘアメイク、クリエイティヴ・ディレクターたちが、このコロナ禍でどの街にいるのかを分かりやすく示すリストだったのだ。実際に私も疑問に思っていた。コロナ禍でファッション・ピープルは一体、今どこに居るのだろうか、と。

 これまでファッション・キャピタルは、4つの種族が集まるところだった。ニューヨークをはじめ、ロサンゼルス、ロンドン、パリ、ミラノ、そして東京は、ブランド、メディア、リテーラー、クリエイターが集う場所だ。しかし、新型コロナウイルスはその仕組みを変えた。アートパートナーのロケーション・リストを見ても、ロンドンは23人と多いのだが、それに対してニューヨークはたったの12人。新型コロナウイルス感染拡大前はあれほどファッション業界のニューヨーク中心主義が危惧されて語られていたことを考えると、驚くほど少ない数字に見える。どうもファッション・ピープルはニューヨークから離れていっているようだ。

 ファッション業界において、服自体を作るデザイナーではなく、服と世の中をつなぐクリエイターたち――それこそが今のファッション・ピープルの中核なのだが――を抱えるエージェンシーはいかにコロナ禍を乗り越え、ウィズコロナ時代に適応し、そしてファッション・ピープルは今どこに居るのだろう。ロンドンに拠点を置き、ティム・ウォーカーなどが所属するCLMのトゥ・グエンと、ジャック・デイヴィソンなどの気鋭写真家が所属するミニタイトルのクリス・マクギアンにファッション・ピープルのロケーションの変化を尋ねてみた。残念ながら前述のアートパートナーからは回答が得られなかったが、彼らの言葉にはファッション・ピープルのしたたかさが見て取れた。

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