ファッション

ESG経営高評価のヒューゴ ボス、「ポイントは環境負荷をLCAで分析」

 ドイツのヒューゴ ボス(HUGO BOSS)はESG(環境、社会、ガバナンスの重視)経営で高い評価を得ている。「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(Dow Jones Sustainability index)」のスコア89で、アディダス(ADIDAS)、ケリング(KERING)、バーバリー(BURBERRY)に次いでテキスタイル、アパレル&ラグジュアリーグッズ部門で4位にラインクインしている。英国のNPO団体ファッションレボリューション(Fashion Revolution)の「ファッション トランスペアレンシー インデックス(Fashion Transparency Index)」では透明性41%と健闘(編集部注:1位のH&Mは73%で、多くのブランドが40%以下の低スコア)。また、毛皮使用の廃止や、レザーの代替品として注目されているパイナップル由来の人工皮革を採用するといったアクションも早く、サステナビリティ分野でも注目すべき企業である。アンドレアス・ストルービッグ(Andreas Streubig)=グローバル・サステナビリティ部門ディレクターに取り組みを始めたきっかけを聞く。

WWD:サステナビリティに取り組むときに何から始めましたか?

アンドレアス・ストルービッグ=ディレクター、グローバル・サステナビリティ(以下、ストルービッグ):早い段階から意識的に天然資源を使うことと、当社の事業活動が環境に与える負荷について取り組んできました。この分野で何が重要なのかを理解する必要がありました。だからこそ、株主の皆さまとの継続的な対話を確立したのです。

理解を深めるために2009年、全ての商品に対してLCA(ライフサイクルアセスメント:製品やサービスのライフサイクル全体〈資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル〉、またはその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法)を開始しました。LCAを実施することによって、全体のバリューチェーンに沿った環境への影響を数値化することが可能になりました。できるだけ正確にわれわれの足跡をたどり理解するために、膨大なデータに取り組む必要がありました。また、さまざまな負荷を比較可能にするために、私たちは自然資本プロトコル(Natural Capital Protocol)を導入しました。これは二酸化炭素の排出や水消費量等の異なる影響を金銭的価値に変換するという標準化された枠組みで、私たちはこれを早い段階で導入したブランドの一つです。これにより局地的に何かの数値が高い部門や地域の割り出しや、その削減のために最適な、そして最も効果的な方法を決定するのに役立っています。結果はコーポレートウェブサイトにて公開しています。

WWD:環境負荷を知ったことによる変化や成果は?

ストルービッグ:私たちが割り出したホットスポットは主にサプライチェーンにあったので、ベター・コットン・イニシアチブ(Better Cotton Initiative)やレザーワーキンググループ(Leather Working Group)等の組織と連携して、より多くのサステナブルな原料を調達することを重視するようになりました。25年までに100%持続可能なコットンに切り替えるという目標も立てました。この目標は、例えば水消費量や生物学的多様性への負荷を減らすのに役立ちます。さらに、化学物質の管理過程についても、有害物質ゼロを目指すZDHC(Zero Discharge of Hazardous Chemicals)の「ロードマップ・トゥ・ゼロプログラム(Roadmap to Zero Program)」の枠組みのもとに、サプライヤーと共に危険有害化学物質の除去に努めています。この対策によって何よりも、サプライチェーンにおいて従業員の健康に与える負荷を最小限にします。私たちはまた、サプライヤーによるエネルギー利用などの改善を目指し、グローバル・ソーシャル・コンプライアンス・プログラム(Global Social Compliance Program:GSCP)に基づいた環境プログラムを導入しています。

WWD:他の取り組みは?

ストルービッグ:より環境負荷を減らすために、全ての領域で長期的な目標を設定しています。特に、サプライヤーと一緒に、有害危険物質の除去への取り組みに注力しています。また私たちは18年に、国連主導の「ファッション業界気候アクション憲章(Fashion Industry Charter for Climate Action)」に加入しました。これは50年までの気候中立(二酸化炭素排出の実質的なゼロ)を実現するべく、サプライチェーンを中心に気候変動への負荷を減らすことを目的としています。強固なネットワークで互いに協力し合わなくては達成できないことです。

WWD:それに向けて具体的に何をしていますか?

ストルービッグ:環境負荷を本当に減らすことができるのかを判断するために、私たちは常にそれぞれの対策を実行に移す前に査定します。例えば、新しい素材や梱包、またはプロセスを導入する前には、LCA上での環境負荷を分析します。そして現在私たちが使っている方法に基づいて比較し、負荷が本当に最小限に抑えられるかどうかを確認します。

さらに、私たちが直面する最大の挑戦として特に気候変動に焦点を当てています。この目的に向けて、私たちは温室効果ガス削減のためにScience Based Targets(SBT:科学的根拠に基づく目標)を策定し、SBTイニシアチブの認証を得ました。私たち独自のプロセスでの排出削減のための対策以外にも、現在、気候変動枠組条約(UNFCCC)と共に、私たちのサプライチェーンのための戦略や対策について取り組んでいます。ここでの焦点は、環境負荷や進歩を測れるように目標を策定することです。これらをサプライヤーが実行に移せるように支援するために、私たちは現在研修プログラムを開発中です。私たちはこれらの対策がサプライチェーンにおける二酸化炭素排出の削減に大きな影響を与えると確信しています。

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