いま、若い世代が熱狂するラッパーの一人として名前を覚えておきたいのがMIKADOだ。和歌山を拠点に活動し、2024年の「言った!!」をきっかけに一気に注目を集めると、音楽だけでなくファッションアイコンとしても支持を集め、言葉遣いまでもが若いリスナーに波及。いまやそのスタイルを追うフォロワーも少なくない。今年8月に発表したアルバム「FAME FLAME」は、名声を手にした現在の自分を見つめながら、ラップスキル、サウンド、ビジュアルまで徹底的に磨き上げた一作で、リリース直後から早くも「クラシック」との声が上がっている。秋には自身初となるZeppワンマン「NEW ERA」(9月23日にZepp Osaka Bayside、10月14日にZepp Diver City Tokyo)も控えている若きスターは、なぜこれほどまでにユースを惹きつけるのか。成功によって変わったもの、変わらなかったもの、ファッションと音楽を横断して広がり始めたクリエイティブ、その先に見据える景色について聞いた。
「FAME FLAME」で向き合った“名声”
——新作「FAME FLAME」は、後世に残るクラシックを作ることを意識した作品だと感じました。
MIKADO:意識しましたね。ちゃんとしたアルバムを作ろうと思って。曲ごとの役割分担をしっかりさせて、1本の作品として通して聴いてもらいたい、という感じで作った。
——今回、ラップシーンの中での自分の立ち位置を意識したリリックも多いですよね。MIKADOフォロワーも増えてきてる中で、例えば“ダサいラッパーの墓参り”(「Intro *Spit Fire*」)とか“増えてきてる俺のジェネリック”(「Real Diamonds」)といったリリックもある。あと、“昔の方が良かったとか言わせない”(「俺たち」)みたいなヘイターへ向けたメッセージも歌っている。
MIKADO:アルバムタイトルが「FAME FLAME」なので。FAME(名声)を得てから自分がどう思っているか、というのは意識したっすね。「今」の状態を書いた。
——「FLAME」には炎という意味もあるじゃないですか。自分が成功してどんどん名声を集める中で、その炎には良い意味もあるし悪い意味もある?
MIKADO:あります。炎上とかね。「FAME FLAMEしちゃってる」みたいな(笑)。そういうバカな会話から生まれたっすね、このタイトルは。響きもいいし、「FとFやし」みたいな。
——実際、ヘイターは増えていると思いますか。
MIKADO:増えてると思うっす、全然。「こいつ、そんなか?」みたいに思ってるんじゃないすか。ちょいちょい言われるんすよ、過大評価だって。
——それに対して、ラップスキルを見せつけまくっている。
MIKADO:そうそう。見せつけっすね、普通に。気にしていないと言えば嘘になるから。
——昔は「お金のために」ということを歌ってたじゃないですか。でも最近は、「今ある悩みはお金じゃない」ってことも歌っていて。そのあたりが少し変わってきたように感じます。
MIKADO:やっぱり、いろんな問題があったんすよね、この1、2年で。もう、問題が多すぎて。お金で解決できるものはしてるんすけど、大人の人とか友達とか、人間関係でお金では解決できない問題もあるじゃないすか。そういう意味では、昔はお金があったら全部OKだったんすよ。「これ払えない」とか、「ないから買えない」とか、そういうことしかなかったから。でも今は、そういう問題でもなくなってきた。だから、内省的な歌詞が浮かんでくる。
——規模が大きくなるにつれて、どうしてもそういう問題も出てきてしまう。
MIKADO:そうっすね。やっぱり人なんで。出てきましたね。
フィーチャリング・フレックス
——和歌山について、初期の頃は「クルーって言われてるけど、別にクルーじゃない」みたいなことを言ってたじゃないですか。でも「GUNSO LYFE STYLE」あたりから、和歌山勢をひとつの集団として見せていくような意識に変わっていったように見えます。今回のリリックでは、“昔みたいに集まれない今”(「まわり」)といったことも歌ってますね。
MIKADO:時間がないし、みんな有名になったり目的が変わったり思ってることがだんだん違ってきたりして、なかなか会えなくもなる。最初は一緒のところを見ていたけど、そうじゃなくなってくる人も周りにはいるわけで。でも、今回のアルバムを出して、またちょっとまとまった感はある。
——「まわり」ですよね。
MIKADO:そうそう。直接は聞いていないですけど、それでみんな動いた感じはします。ちょっと空気が変わった。
——今回、どこでレコーディングしたんですか?
MIKADO:場所としては今までとほとんど同じで、和歌山と大阪で半分ずつぐらい録ったっすね。フィーチャリングも、もともとは入れる予定がなかったんすよ。リリースの1カ月前ぐらいにいきなり決めた。
——かなり直前ですね。なぜそこで客演を入れようと?
MIKADO:フレックスっすね。フィーチャリング・フレックスをしたいなと突然思って。海外のラッパーとかも「こいつとこいつでやるんや」「俺、こいつ呼べます」みたいなのあるじゃないすか。もちろん、みんな曲がかっこよくて入れたいと思ったのが前提ですけど、人選にはちょっとそれも入ってますね。「これ、俺呼べるんだ」っていう。
——声をかけたら、みんなすぐ決まった?
MIKADO:うまくいかなかったのもある。断られたのも一人だけ。スケジュール的にね。悔しかった。
ビビりだからこそ、人より絶対やってる
——今回はホムさん(Homunculu$)以外にも、かなり多くのプロデューサーが参加しています。
MIKADO:今まではほとんどホムさんだったんで、いろんな人のビートを使いたいなと思って。しかも、その人のシグネチャーじゃないけど、その人が持ってる中でも一級品をもらいたかった。
——一級品をもらいたい時って、どう依頼するんですか?
MIKADO:例えばTRILL(DYNASTY)さんには「ビートください」って言って、「どんなのがいいですか?」って来たから、「TRILLさんの中で一番いいと思うやつ、上から3つください」って。でも、そう言ったら俺も絶対いいやつ返さないとダメじゃないすか。「そこまで言ったのにラップこんなもん?」ってなったらあれやし。自分への追い込みでもあるっす。あと、何十曲も送られてきても聴ききれないし。だから、その人自身の一級品を送ってもらう。
——今回のビートメーカーは、どういう基準で選んだんですか?
MIKADO:普通にかっこいい人っすね。今回はじめましては、多分TRILLさんとNeetzさんと10pmさん。それ以外の人は今までもやってて、保証されてる。ineedmorebux も今回初めてだったんですけど、前から普通にかっこいいなと思ってて今回声かけました。
——曲自体のディレクションは、全部MIKADO自身で?
MIKADO:そうっすね。曲は自分で全部決めました。ただ、ミックスとマスタリングにはホムさんに入ってもらって。細かいバランス感とかは全部見てもらいました。
——今回、音がかなりダイナミックですよね。今までのアルバムの中でも格段にいい。
MIKADO:今回は一番ミックスにこだわったっすね。マジで1日16時間とかミックスやってたから。それを1週間弱ぐらいかけて、ホムさんと一緒にやりました。
——やっぱりそうなんですね。目指した音の方向性は?
MIKADO:リッチ・サウンド。普段聴いてる海外の曲みたいにしたかった。日本ではあんまりこういう音聴けないじゃないすか。これ言ったらアレかもしれないですけど、日本って新しいことにあんまりチャレンジしてない気がしてて。もちろんんいろなこと試してる人はいると思うんすけど、けっこうどれも似てるんすよね。エフェクトもあんまり面白みがない。ほんま細部の話だと思うんですけど、今回そこはこだわってやりました。
——いわゆるポップス的なリッチさじゃなくて、ストリート感のあるリッチさが限界まで出ています。
MIKADO:そうっすね。とりあえず音は限界まで上げようって。(ストリーミングサービスに)パツパツで提出しよう、みたいな感じでした。
——結果、リリース直後から「クラシック」という声が上がってます。過去作の中でも一番評判がいいじゃないですか。やっぱりな、という感じはありました?
MIKADO:やっぱりな、はあります。でも俺けっこうビビりなんで、リリース前はちょっと怖かったっすけど。「これイケてるかな」って。自分はもちろんイケてると思ってるし、自分の周りもイケてるって言ってくれるけど、それがリスナーにも同じように届くのかなっていうのが不安だった。リリースの時は結構ナーバスになるんすよ。今回は出して「ああ、よかったよかった」って。
——ボースティングはするけれど、ビビりでもある。
MIKADO:ビビりだからこそ、人より絶対やってるって感じっすね。やることをやってる。だから、そこに自信が生まれる。逆に最初から自信があったら、「これでもいいや、あれでもいいや」って適当になっていくじゃないすか。俺はビビりだからこそこだわりたいんすよ。
——「人よりやってる」というのは、具体的には? 単にたくさん曲をつくること、ではもうなくなってきてますよね。
MIKADO:曲を作ってることは、最近もうフレックスにならないっすね。それはもう当たり前だから。いい曲を作ることも当たり前。その上で、どう売り出すか、どうパッケージにするか。映像だったり、服だったり。そういうことを考える癖がついてきた。それをやることで自分のこともより理解できるし、曲にも反映されていく。いい曲を作るやつなんて今はいくらでもいるんで。その中身をどう見せていくか。映像も服もライブも含めて、全方位でやらないとって感じ。
——今回のアルバム、MVは何本撮ったんですか?
MIKADO:全部で10本ぐらい。
——10本⁉︎
MIKADO:これからめちゃくちゃビデオ上がるんで。
——稼いだお金をかなり投資している。
MIKADO:相当っすね。外車ぐらい買えるんちゃうかな? ビデオ撮ってる金で。でも、今って映像が全体的に回らなくなってきてるじゃないすか。だからこそ逆に、そこで力を入れてみようかなって。みんながあんまりやってないなら、逆行こうぜみたいな。
——映像についても、自身がかなり細かく見ている?
MIKADO:はい。今は一緒にやってる映像チームがいるんで、ほとんど一緒にやってます。
——ていうか、寝てますか?
MIKADO:寝てます寝てます。堀大輔よりは寝てるっす(笑)。
——(笑)。
ファッションアイコンとしてのMIKADO
——最近はファッションアイコンとしても見られてますよね。リリックにもいろいろなブランド名が出てきますけど、今も自分が実際に着ているものや欲しいものだけをラップしている?
MIKADO:そこは変わらないっすね。自分が着てるやつ、欲しいやつを言ってるだけ。でも、もうコレクターみたいになってます。全然着ない服も買うし、持ってるだけでいっか、という服もある。もう家がパンパンなんすよ。売ったりもしない人なんで、増えるだけ増えてく。全然着てないし使ってない。
——服はどこで買うことが多い?
MIKADO:大阪と東京が多いっすね。普通に店にも行くし、オンラインやってるバイヤーみたいな人に連絡して、その人の家に行って見せてもらうこともある。友達の友達だったりするから。たまに店員さんが着てる服を指さして、「それ売れますか? 欲しいんですけど」みたいに言ったりもする。剥ぎ取り系っす(笑)。
——今回のアルバムも、「ゴヤール(GOYARD)」と「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」が頻出ですよね。エイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)のように、海外ラッパーのファッションから受けた影響も大きい?
MIKADO:あります、あります。向こうのラッパーってファッション性も強いし、上の人たちはセレブじゃないすか。そういうパーティーにも行くし。俳優みたいな、ちょっと遠い存在というか。ラッパーがいい服を着て、そういうところにいるのがかっこいい。そこは強く影響受けてると思います。
——ファンがMIKADOの服装を真似するのはどう思いますか。
MIKADO:熱いっすね。真似してほしい。ただ、今もう俺が着たらそのブランドの値段がちょっと上がるんすよ。それはちょっと嫌。自分が買いづらくなるし、物もなくなるんで。
——今、気になってるブランドは?
MIKADO:「カヴァリ」っすね。「ジャスト カヴァリ(JUST CAVALLI)」。まだ持ってないんすけど、昔のやつかっこいいなと思って。でも最近は、そんなにひとつのブランドに固執してないかな。
——ファッションショーの音楽をやることには興味あります?
MIKADO:ありますよ。でも、組むなら海外より日本のブランドがいいかもしれないっすね。日本のブランドで海外に行ってるところとか。それはなんかやる意味があるかなって。
——タトゥーは最近も入れてます?
MIKADO:最近は全然入れてないっすね。思いつかなくて。ちょっと前まではノリで入れてました。彫師が友達で、タトゥースタジオがたまり場みたいになってて。行ったら誰かが入れてるから、「じゃあ俺も」みたいな。
ほかのラッパーとは全部が違う
——MIKADOフォロワーもだけど、そもそも今ラッパー自体がものすごく増えてるじゃないですか。その中で、自分はほかのラッパーとここが違うと思う部分はどこですか?
MIKADO:全部が違う。服もそうやし、ラップもそうやし、メロディーもそうやし。トータルでオリジナル。言語化するのは難しいですけど、全部違うっすね。
——国内のラッパーの曲も聴きますか?
MIKADO:聴きますよ。ほとんど友達の曲ですけど。新譜も普通に耳は通します。リピートすることはほとんどないですけど、「どんな感じなんやろ」「そういう感じね」みたいな。
——これはさすがにすごいわ、と食らうことも?
MIKADO:ありますよ、普通に。誰とは言わないけど(笑)。でもラッパー同士だと、出る前に曲を聴かせることも多くて。最近作ったから聴いてよ、って。リリースしない曲とかもあるじゃないすか。そういう中にも、これいいなって曲はいくつもありますね。
——今回のアルバムでは、「あまり喋らない」ということもけっこう歌ってますよね。
MIKADO:普段、家でも全然喋らないっすね。会話は少ない。喋るのちょっと苦手なんで。でも、ビートがあればいくらでもいける。「これをこうしろ、ああしろ」とか、「自分はこう思ってる」ってことは、曲で言った方がいいんじゃないかな。その方が伝わる。それで金稼いでるし。みんなが普通に喋ってる悩み事とかも、俺は曲に乗せる。それも換金しちゃおうぜ、みたいな感じ。
——規模が大きくなるにつれて、映像や服を含めてチームも大きくなってきてますよね。制作する上で、意見がぶつかることも増えましたか?
MIKADO:対立はあんまりないっすね。ただ、今までは俺が新しいものを出して「これどう?」って聞いたら、「いいね」しか返ってこなかったんすよ。でも最近は、映像のチームだったり服のチームだったり、そういう人たちといい感じに話を揉めるようになった。だからレベルは絶対上がってる。そうなると、エキスパートに任せられる。
——MIKADOが全部支配するのではなく、それぞれの専門性を持ち寄る。
MIKADO:そうっすね。だから和歌山の奴らも、各々が自分のチームを持った方がいいと思ってます。それは本人たちにも言ってる。HARKAやENELのサポートメンバーは俺じゃないし、俺のサポートメンバーも彼らじゃない。それぞれがちゃんとチームを作った方がいい。一人ひとりが独立して、その上で集まる。和歌山もそういう感じで見てますね。その方が、もっとでかいことになるんじゃないかなって。
ファンの熱狂度
——秋にはZeppでワンマンがありますね。ステージの見せ方を変えていこう、みたいなプランは?
MIKADO:ライブは、とにかくマジで全力でやる感じっすね。「ここをこうしよう」とか、MCも含めて一回も考えたことない。俺、MCめっちゃ下手で苦手なんすよ。口下手やし、モゴモゴしてまうし。だから逆に、ライブを頑張る。喋りが上手い人って、それだけで会場の空気を持っていけるじゃないすか。でも俺は喋りが下手くそだから、曲を頑張るしかない。めっちゃ熱いMCをするんじゃなくて、めっちゃ熱いライブをしようっていう。
——その熱さ自体も、人気が上がるにつれて変わってきた?
MIKADO:変わってきたっすね。でも、めっちゃ練習してこうなったというより、お客さんのバイブスが変わってきたのが大きい。知名度とか人気が上がると、見る目も熱狂度も変わるじゃないすか。それに合わせて変化していった感じ。お客さんがバーッと来たら俺もバーッとなる。逆にあんまり乗ってない時は俺も乗らない。けっこう気分屋っすね。良くも悪くも、その日の環境に左右される。
——「POP YOURS」でパフォーマンスされた幕張メッセのような大きなステージだと、クラブとはやっぱり全然違うかと思います。
MIKADO:ホールはお客さんと一緒にというより、自分との闘いみたいな。お客さんの声もほぼ聞こえてないんで、ちゃんと歌う。逆にクラブは、その場を盛り上げる感じ。そこは全然違う。
——ファンをどういう層に広げていくか、といった戦略的なことは考えてますか?
MIKADO:そこは描いてないっすね。「こんな熱狂的なファンにしよう」とかも思ってない。勝手にこうなってきたというか。でも、これからもどんどん大きくなりそうな予感はある。そこをコントロールしようという感覚はないっすね。なるようになってる。
——とはいえ、MIKADOのファンの熱狂度は明らかに特殊で。
MIKADO:やばいっすよね。何なんすかね、あれ(笑)。
——YouTubeで舞台裏もかなり見せてるじゃないですか。ファンがずっとMIKADOたちを間近で見て、一緒に上がってきた感覚もあるのかなと。
MIKADO:曲でも細かく言ってるんすよね。実況みたいに言ってる。「俺の友達はこうで、俺はここから来て、こういうふうに育って」って。ちゃんと分かるように言ってるから、より入り込めるんだと思う。最近の若いラッパーも、ラップが上手い子は増えてきてるかもしれないけど、「ていうかどこの誰やねん」って思うことがあるっす。「君の地元はどこなんですか?」「今まで何してきたんですか?」みたいな。上手いだけだと、そこに入り込めない。
——自分の背景を具体的にラップするというのは、最初から強く意識していた?
MIKADO:最初から意識してたっす。ホムさんがそういうことを言ってくれて。自己紹介じゃないけど、それこそが自分にしか書けない歌詞。「俺はこうなんだ」だけだったら誰でも言える。その前に、「俺はここからこうなって、だから今こうなんだ」を言わないとって。
——ストーリー化できるような具体性が大事だと。
MIKADO:そう。だってファンの子達って、俺の友達じゃないのにそれと同じくらいみんな俺のこと知ってるじゃないすか。曲を聴いてるだけで、一回も会ったことないのに。だから、応援したいってなるのかなって。
「自分でも、めっちゃ王道だなって最近思う」
——もうひとつ、MIKADOというラッパーは「これはかっこいい」「これはダサい」という価値判断をかなりはっきりとラップしてきました。MIKADOを聴くことで、若いリスナーの中にヒップホップの審美眼が作られてきているようにも感じます。
MIKADO:教育っす。それをやったら、俺より下の世代のかっこいいやつも見てもらえるし。上の人も多分そうやってきたから。良くないものは「良くない」と除外していく感じ。
——教育という意味では、今回のアルバム、めちゃくちゃ韻を踏んでますよね。しかも、さりげなく踏むのではなく、ちゃんと「踏んでます」って感じの踏み方。
MIKADO:韻は踏んだ方がいいから。
——そこはずっとブレない。
MIKADO:そう。硬い韻ばかり踏んでるので、もう「硬いのが面白い」になってきてます。だから、ありきたりなやつでは踏みたくない。作ってても面白いっすよ。
——基本的には、その場で作る?
MIKADO:フリースタイルに近いっすね。でも一行だけ出てこないこととかけっこうありますよ。全体の9割は数十分で終わってるけど、一行、この韻だけずっと考えてるとか。「ここだけ30分かかった」みたいなのはありますね。
——今日話を聞いていても、MIKADOというラッパーは、ヒップホップで歴史に名を残す指標を一個ずつちゃんと潰していってるように感じます。韻を踏む、地元を背負う、自分のルーツを具体的に歌う、本場のかっこいいものを参照する。
MIKADO:王道っすね。自分でも、めっちゃ王道だなって最近思いました。正統派のど真ん中。ていうか、すごい簡単なんすよ。みんながやらなさすぎてるだけっていうか。俺がすごいというより、みんながすごくなさすぎ、みたいな感じ(笑)。王道をやってるだけだから。だって、リリックとフロウとビートが良かったら売れるわけじゃないすか。それやったらいいだけじゃないの、って。普通に謙虚に。なんでやらないの? みたいな。
——シンプルだからこそ難しいけれども。
MIKADO:まあ、そうっすね。難しい。でも俺も最初から才能あったわけじゃないんで。地道にやっていけば絶対いけると思います。
——「これをやればいける」と分かった瞬間はありました?
MIKADO:3年ぐらい前かな。仕事もせずに、1年くらいずっとスタジオ行きっぱなしで。365日行ってました。その時に、なんか覚醒した。「あ、分かった」っていうか。音楽が楽しくなってきたんすよ。それまでは、「売れよう」とか「どうやったらヒット出るかな」とかばっかりだった。でも、そこを抜けたっすね。もう、普通にゲーム感覚になった。誰にやれって言われるわけでもなく、これが楽しいからやってますっていう状態。
——上手くなったことで、もう一度音楽が楽しくなった。
MIKADO:そうそう。一回、みんな嫌いになるじゃないですか。しんどくなって。最初の1曲目から売れるわけじゃないから、うわぁこれむずいわってなる。本当は好きでやってたことがちょっと嫌いになる。でも、それをもう一回好きになったタイミングが、良くなりだした時でした。
——結局、その境地にたどり着くまで作り続けるしかない?
MIKADO:俺の場合はそうっすね。効率が良くなっていくんすよ。最初は1曲作るのに何時間もかかってたのが、毎日やってたらどんどん短くなる。1時間でいい曲が1曲できるようになったら、「1時間でこんな曲できた、めっちゃ楽しい、簡単や」ってなるじゃないすか。それでまた楽しくなる。でも、何週間、何時間、何日かかっても好きな人は好きだと思うんで、別に速さは関係ないのかも。俺はそういう形で楽しくなったっていうだけ。
——今も、楽しい気持ちは変わらない?
MIKADO:そうっすね。でも最近は、「FAME FLAME」を出してから次どうしようかなってなってる。曲に対してというより、ほかのことにも興味が出てきた。映像だったり、服だったり、プロモーションだったり。クリエイティブなことを全体的に考えるのが楽しくなってきたっすね。
今後の構想は?
——今後、東京にも拠点を作るのでは?
MIKADO:今、1軒借りようとしてて審査中ですね。和歌山と東京、半々くらいになると思います。そこもクリエイティブチームの事務所として使おうかなって。いまIORIってデザイナーがやってる「ディノワークス(DINOWORKS)」と一緒にやろうって話してます。話したらすごい熱量あって、フィールした。
——作品の規模が広がると関心も広がって、次のアルバムを作るハードルもどんどん上がっていくでしょうね。
MIKADO:上がるっすねぇ。「あ、これでみんなリリース遅くなるんや」って分かりました(笑)。売れた人って、いきなり3年、5年に1枚とかになるじゃないすか。なんでなんやろって思ってたんですけど、「あ、これか」って。って言いながら俺、来年普通に出してるかもしれないですけど。
——どんどん状況が変わって来て、幸せになったなと感じますか?
MIKADO:うーん……けど、俺ってもともと幸せだったんすよ。お金がなかっただけで。今なら「これ買ってあげられるな」とかありますけど、昔もそんなに悲観してなかった。ガチで辛い、ってあんまり思ってなかったから。リリックで歌ってる昔のことも、普通に「こういうことがあった」って言ってるだけというか。まあでも、今は友達と「あの時こうやったな」って笑えるのはありますね。
——話を聞いていると、昔から一貫して淡々としてますよね。本当に淡々と、目の前のことをやり続けてるだけ。
MIKADO:マシーンっすね(笑)。普段は機械なんだけど、ビートに乗ったらめっちゃ感情出ちゃって。普段は熱い話とか全然したくないす。皆、お酒飲んだら熱い話とかしちゃうじゃないすか。ああいうの、めっちゃ恥ずかしいんすよ。普段は恥ずいから、ビートに乗ると溜めてるやつがバーンって出る感じ。
——海外でライブしてみたいという気持ちはありますか?
MIKADO:やりたいっすね。ただ、海外に向けた曲を作ろうとは思わない。そういうやり方もあるじゃないすか。向こうでヒットを狙うとか。でも、そうじゃなくて、日本語で普通にやって認められたら嬉しい。
——やるならアメリカ?
MIKADO:アメリカもそうだし、パリとかでもやりたいっす。普通に街が好きなんで。
——このまま、いつまでラッパーを続けようかという今後の構想はありますか。
MIKADO:ないですけど、書けなくなったら終わりだから。アイデアが出てくるうちはやろうって感じです。いつか終わりは来ると思います。多分いきなり来る。ゼロになる時までやります、多分。人を育てたいとかも別にないかな。ただ、何かしらはやってると思う。ラッパーを引退して、何もやらなくなることは多分ないな。
PHOTOS:HIRONORI SAKUNAGA
MIKADO「FAME FLAME」
◾️MIKADO「FAME FLAME」
2026年8月26日リリース
配信リンク
https://linkco.re/GDa4MC3Q
Tracklist :
1 Intro Spit Fire
2 Real Diamonds
3 Mothra
4 BAY SIDE
5 J-POP YORI feat. Young Coco
6 FAME FLAME feat. T-Pablow
7 俺たち
8 Aura feat. Tiji jojo & Jellyyabashi
9 Money Longer feat. kohjiya
10 YUMMY YUMMY
11 SKRR SKRR feat. HARKA
12 Bling Blaow
13 いい感じ
14 God Bless feat. Mel Eden
15 MIIKETA
16 Famous
17 自信がある
18 ビックホエール
19 まわり






