世界的スーパースターと契約し
スポーツ最大市場に本格参戦
スイス発のスポーツブランド「オン(ON)」が9月18日、サッカー市場への本格参入を発表した。第1弾として、フランス代表のキリアン・エムバペ選手とパートナーシップを締結。さらに、元フランス代表でアーセナルFCのレジェンドでもあるティエリ・アンリ氏をサッカーディレクターに起用する。ランニングを軸に成長してきた同ブランドが、世界最大のスポーツ市場の一つであるサッカーへ本格進出する。エムバペ選手は2006年、8歳の時から続いていた「ナイキ(NIKE)」との約20年にわたるパートナーシップを終了し、「オン」へ移籍した。エムバペ選手は「オン」のグローバルアンバサダーを務めるだけでなく、同ブランドのプロダクトチームと直接連携し、今後のサッカースパイクやアパレルの開発・テストにも携わる。
「オン」は2010年の創業以来、独自のミッドソール構造“クラウドテック”などを武器にランニング市場で存在感を高め、その後、アウトドア、トレーニング、テニス、ライフスタイルへとカテゴリーを拡張してきた。今回のサッカー参入では、ランニングで培った技術革新と本国スイスの持つエンジニアリングをサッカーへ応用する。その中核となる技術が、24年に発表した独自のアッパー製造技術“ライトスプレー”だ。ロボットによって1本の連続したフィラメントをスプレー噴射しながらアッパーを成形することで、従来とは異なるフットウエアの製造工程を実現する。同技術をトップレベルのサッカーに応用し、極限まで軽量で精度が高く、選手の足に“第二の皮膚”のように密着するプロダクトの開発を目指す。
仏レジェンドと女子新星も加わり
サッカー界の新たな選択肢へ
エムバペ選手は「まったく新しいものを共に創り出し、これからのサッカーの未来を描いていける」とコメント、自身の経験や視点をプロダクトに注ぎ込み、イノベーションによって可能性を広げながら、サッカーが持つ「プレーするよろこび」を大切にしたいと語った。デイビッド・アマレン「オン」創業者兼共同CEOは、「サッカー界が必要としているのは、既存のスポーツブランドの踏襲ではなく、新しいアイデアと挑戦。『オン』は真のイノベーションと洗練されたデザインを通じて、それを証明する」と自信を見せた。25年後半から「オン」のサッカー参入プロジェクトに携わってきたアンリ氏は、サッカーにおけるプロダクト開発やアスリートとの関係構築、スポーツカルチャーへのアプローチまで、事業全体の戦略的な推進を担う。スイス代表でFCバルセロナに所属するシドニー・シェルテンライブ選手もプロダクト開発・テストに参加し、女子サッカー向けの製品開発にも関わる。
今回の動きは、「ナイキ」にとっても大きな痛手となる。エムバペ選手は「ナイキ」にとって長年にわたりサッカーカテゴリーを象徴するトップアスリートの一人であり、22年のワールドカップ優勝を経て、現在も世界を代表するスター選手。今回、その選手をサッカー市場に新規参入する競合ブランドに奪われた格好となる。「ナイキ」は24年にスペイン代表の新星ラミン・ヤマル選手を「アディダス(ADIDAS)」に移籍させるなど、サッカー界のスター選手をめぐる競争で相次いで大物を失っている。「オン」はランニングで培った技術力と洗練されたデザインに加え、エムバペという世界屈指のスター選手を開発パートナーとして迎えることで、「ナイキ」「アディダス」「プーマ(PUMA)」が長年支配してきたサッカー市場に新たな選択肢を提示する。