ナポレオンジャケットがこの秋、華々しくカムバックしています。今年、伝記映画が大ヒットした“キング・オブ・ポップ”マイケル・ジャクソンやビートルズなど、数々のポップスターも好んで着用してきたアイテムです。もともとはフランスの英雄、ナポレオン・ボナパルトが着た軍服が原型。現在では、軍服らしい重厚さを和らげたアレンジが広がり、市場でもヒット商品が生まれています。有力ブランドから提案が相次ぐ中、ナポレオンジャケット復活の背景を読み解きます。
BLACKPINKのジェニーも着用
軍隊礼服はフェミニンに進化
トレンドセッターの1人であるBLACKPINKのジェニー(JENNIE)も、今年8月にアメリカで開催された音楽フェスティバル「ロラパルーザ」で、ショート丈の「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」のナポレオンジャケットを着て登場。本来は前を閉じて着る軍服由来のジャケットですが、ボタンを大胆に外し、インナーのスイムウエア風ブラトップとコルセットをのぞかせるセンシュアルな着こなしにアレンジしました。
もともとナポレオンジャケットは名前の通り、皇帝ナポレオンが着た軍隊礼服を着想源とするミリタリージャケットの通称です。ビートルズが1967年のアルバムジャケットでそろって着たことでも有名です。原型からのアレンジが進み、今では立ち襟や2列に並ぶ多数のフロントボタン、肋骨状にボタンをつなぐ飾りひも(ブレード)、肩飾り(エポレット)などを備えた軍礼服風ジャケットを広く指すようになりました。
昔はいかにも軍服調の無骨な雰囲気が持ち味でしたが、今ではぐっとトーンダウンしたデザインが一般的です。ミリタリーアイテムをエレガントに落とし込む近年の流れとも重なります。
大人仕様にリモデル 細部に“らしさ”
近頃のランウェイでは、ナポレオンジャケットらしい意匠を残しながらも、軍服感を抑えたデザインが登場しています。象徴的な身頃の正面を横切るブレードや立ち襟、エポレット、ダブルブレストなどのナポレオンジャケット“らしさ”を自由に解釈するアレンジです。
「ケイト(KHAITE)」はブレードの面影を残しながら、編んだロープのような3本の飾りを身頃に渡しました。レザーパンツを合わせ、強さを添えています。一方、「バルマン(BALMAIN)」はブレードを省き、立ち襟、エポレット、ダブルブレストに面影を写し込みました。控えめな装飾がシックな佇まいで、大人も取り入れやすい仕上がりです。
軍服の気品はそのまま クロップド丈で軽やかに
リアル市場に目を向けてみると、クロップド丈のアレンジも目立ちます。それだけでも軍服ならではの重厚な印象がやわらぎます。裾下からトップスをのぞかせるレイヤードにも好都合。今どきの着こなしに仕上げやすくなります。
「プランクプロジェクト(PRANK PROJECT)」からも、着こなしやすいコンパクトなタイプが登場。長袖Tシャツを裾下や袖先からのぞかせ、ジャケットの硬質感をやわらげています。ルックではゆったりしたデニムパンツやタイトスカート、ハーフ丈パンツなどと合わせ、着こなしの幅も提案しています。
同社プレス担当からは「展示会では受注ランキングベスト3に入る人気アイテムでした」と、オーダーの好反応を伝えるコメントが届きました。「heritage grace」というコレクションテーマにふさわしく、構築的なショルダーラインがもたらす凜々しさは、自信や品格を装いで表現したいという今のおしゃれマインドにも呼応しているようです。
デニムで身近な存在に バリエーションも豊富
ナポレオンジャケットを豊富にそろえているのが「ザラ(ZARA)」です。なかでも目を引くのが、デニム素材で仕立てたタイプ。かっちりとした軍服風のイメージをカジュアルにアレンジし、普段の装いに取り入れやすくなっています。
アイキャッチーな9列のボタン飾りでナポレオンジャケットらしさを演出。色落ち加工を施したデニム生地だから、気負った印象はありません。肩のエポレットや袖のループディテールで軍服の面影を控えめに残したセットアップタイプや、フロントと袖口にゴールドボタンを連ねたタイプなど、バリエーションも豊富です。
「ザラ」は過去にもナポレオンジャケットを手掛けていますが、2026-27年秋冬シーズンに向けてはウォッシュ感を出したデニム系の風合いが人気を得ているそうです。プレス担当者は「ボタンのディテールが施されたデザインが特に好評」とコメント。ナポレオンジャケットに関する検索数が伸び、SNS上でも同社の商品に関する投稿を多く確認しているそうで、好反応がうかがえます。
ヤング世代からも支持 「ラグア ジェム」では即完
若い層からの支持を広げているのは、デイリー使いに向くカジュアル仕様です。コットン素材が主体のナポレオンジャケットなら、気張らず、かしこまらずに着こなせます。ビンテージ感を帯びたタイプはこなれた雰囲気も演出してくれます。
バロックジャパンリミテッドのウィメンズブランド「ラグア ジェム(LAGUA GEM)」の2026-27年秋冬コレクションでは、ナポレオンジャケットが売れ筋に浮上しました。アイテムの公開直後から問い合わせが殺到。初回は即完売となり、再入荷の際にも店頭に行列ができたそうです。
フロントボタンの質感や生地の洗い加工などで、ビンテージ感を醸し出したデザインです。白いボウタイ・ブラウスやドット柄のショートパンツを組み合わせ、甘さや遊び心を添えています。
お客さまからは、インパクトの強さやオンリーワンの見た目に加え、「春と秋の両方で使える」といった実用面を評価する声がよせられているそう。インフルエンサーからの好反応も人気を後押しし、再入荷を繰り返すほどのヒットにつながったようです。
ナポレオンジャケットのリバイバルには複数の理由がありそうですが、特に大きいのは「ワードローブになかった」というレア感ではないでしょうか。存在は知っていても、実際に手に取る機会がなかった女性は多いはず。デニムやコットン、クロップド丈などのアレンジが増え、普段のワードローブに取り入れやすく進化している点が復活を後押ししたようです。不穏な社会情勢の中、自分を守るような“強さ”を装いに求める意識も重なっています。長く続くミリタリートレンドもこうした装いに強さや存在感を求めたい消費者の気分に下支えされているのではないでしょうか。