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UKギター・ロックの新星、ザ・ゲスト・リスト(The Guest List)が見つめる“本物”とは? 1stアルバム「Something Real」を語る

2021年に音楽学校の同級生で結成されたマンチェスター出身の5人組ギター・ロック・バンド、ザ・ゲスト・リスト(The Guest List)。メンバーは、カイ・アルティ(Cai Alty、ボーカル/ギター)、トム・クイグリー(Tom Quigley、ギター)、レイオ・ハンター(Leio Hunter、ギター)、シド・ウォレス(Sid Wallace、ベース)、アンガス・ギルクリスト(Angus Gilchrist、ドラム)の5人で、TikTokに投稿したインディー・ロックのカバー動画で瞬く間にフォロワーを増やし、そこからオリジナル曲へと舵を切っていった。彼らの原点にあるのは、ストロークスや初期アークティック・モンキーズに触発された骨太なギター・リフ、むき出しの感情を乗せた率直なソングライティング。ザ・コーラルのジェームズ・スケリーと共作したデビューEP「When The Lights Are Out」(2024年)は批評家から絶賛され、UKヘッドライン・ツアーは軒並みソールドアウト。今や英国ギター・ロックの新星として名前が挙がる存在になった。

そんな彼らが最初の集大成として完成させたのが、8月28日リリースされた1stアルバム「Something Real」だ。ガール・イン・レッドやオーロラを手がけるプロデューサーのマティアス・テレズを迎え、英国北部仕込みの荒々しいギター・ロックの質感に、ドリーム・ポップ〜シューゲイザー的な浮遊感あるプロダクションを融合。メンタルヘルスや不安、気候崩壊、社会に渦巻く怒りといった重いテーマを、若さゆえの混乱と誠実さで綴った本作は、彼らの「今」を生々しく映し出すセルフ・ポートレート的な作品と言える。

そのアルバム・リリースを控え、彼らは初来日となる「サマーソニック2026(SUMMER SONIC 2026)」に出演。5人が見つめる「本物(Something Real)」とは——「サマソニ」でのステージ前日、都内のオフィスでメンバー全員に話を聞いた。

15歳でバンドスタート

——15歳でバンドを始めた時、ここまで早く注目を集め、状況が大きくなると予想していましたか。

カイ・アルティ(以下、カイ):もちろん「こうなったらいいな」という期待はあったけど、業界のことも全く分からない状態からスタートしたから、現実的にどこまでいけるかなんて予測不可能だった。でも、いつかレコード契約を結びたいってずっと願ってたし、実際にそれが叶って、今もさらに成長し続けようとしているところなんだ。音楽業界にいると、立ち止まったり、別のことにフォーカスを変えなきゃいけない状況に陥ることもあると思う。でも俺たちの場合は、めちゃくちゃな猛スピードってわけじゃないにしても、常に着実に成長し続けて、次のステップを目標にできている。だから、立ち止まる気配は全くないよ。

レイオ・ハンター(以下、レイオ):最初はTikTokが音楽をやるための「良い口実」になってた部分もあるかな。16歳でバンドをやってるのに、形に残るものが何もないっていうのは馬鹿げてる気がして。若い頃って、みんな同じようなバンドに憧れるじゃない?「ギター・バンドがかっこいい」「ラウドなバンドが最高」みたいな。俺たちも最初はそういう共通の趣味から入ったけど、大人になるにつれて音楽のテイストも一緒に成長してきた。今は現代の音楽とか、もっとプログレッシブなバンドにもすごく興味を持ってるよ。そうやって成長していく中で、俺たちは絶対にセルアウトしたくなかったし、自分たちのクリエイティビティーが奪われるような契約も結びたくなかった。そういう姿勢を貫いたことが、今の成功の大きな要因になってると思う。ファンのみんなも、俺たちが「本物の音楽をやる本物のバンド」だって分かってくれてるんじゃないかな。

——結成当初、5人の間ではどんな音楽をシェアしていたんですか。

アンガス・ギルクリスト(以下、アンガス):当時みんなでよく話してた大きな存在といえば、アークティック・モンキーズだね。俺とカイで「どの曲をコピーしたいか」ってメッセージを送り合ってて、お互いモンキーズの曲を10曲くらいリストアップしたのを覚えてる。15歳くらいの時って、基本的にインディー・ミュージックしか聴いてなかったし、彼らは間違いなくその頂点だったから、憧れないほうが無理だよ。初期の頃は、ああいうステージでバンドをやることを常に思い描いてたな。

シド・ウォレス(以下、シド):15歳くらいの時に、アークティック・モンキーズの2006年のレディング・フェスティバルのライブ映像を見て、「俺もこれやりたい!」って強烈に思ったのを覚えてるよ。

カイ:それとストロークスだね。あとはピンク・フロイド、レディオヘッド、ジョイ・ディヴィジョンとか。特にジョイ・ディヴィジョンは大きいかな。今はツアーでバンに乗って移動してることが多いから、その車内でそれぞれが見つけた新しい曲やアルバムを教え合ってる。それがすごく良い時間でさ。俺自身、最近の音楽的な発見の多くは、ツアー中のメンバーからのシェアなんだよね。ずっとツアーに出てると、自分で新しい音楽を探す時間があまりないから、メンバーが最高の曲を流してくれるのはすごくありがたいよ。

——ストロークスの存在は、どんなところが特に大きかったですか。

レイオ:ストロークスに関しては、彼らが5人組で、しかもただの「気のいい仲間たち」っていう雰囲気に憧れてた部分があると思う。俺たちも結成してからずっとギター・ミュージックを軸にしてきたからね。今の時代のバンドがストロークスからインスピレーションを受けるのはすごくよくあることだと思うけど、俺たちとしては単なる模倣にならないように、しっかりと自分たちのオリジナリティーを確立しようとはしている。

カイ:本当に、彼らのバンドとしてのダイナミズムにはすごく共感するんだ。近年の洗練された姿というよりは、初期の頃の彼らや、メンバーそれぞれの立ち位置にね。彼らの関係性は俺たちのバンドの雰囲気にすごく似てると思う。それに、5人編成で「フロントマンがギターを弾くこともあれば、マイクだけで歌うこともある」っていうスタイルを真似てるバンドは多いよね。そのおかげでライブでのアレンジやパフォーマンスの幅が広がるから。あとは、彼らの曲の構成とか、ギターとドラムのクールなサウンドのバランス、レコーディングの手法、そして何より曲自体が本当に素晴らしい。俺たちも同じようなベクトルを目指してると思う。

アンガス:彼らの音楽を聴くと、「ただ一緒に演奏したいやつらが集まって音を鳴らしているだけ」っていうのが、サウンドからダイレクトに伝わってくるんだよね。それって、俺たちが曲をレコーディングしたりライブをしたりする上で一番大切にしている「精神(ethos)」と全く同じなんだ。

ストロークスの新作について

——ちなみに、そんなみなさんがストロークスの新作「Reality Awaits」をどう聴いたのか、興味あります。

レイオ:みんなでバンに乗ってる時に聴いたと思うよ。いくつか良い曲はあったかな。

シド:「Dine N'Dash」は良い曲だと思った。あのアルバムの「唯一の救い」って感じかな。

トム・クイグリー(以下、トム):「Going Shopping」は結構キャッチーな曲だよね。ただ、オートチューンがアルバム全体の良さを台無しにしちゃってる気もするけど。

アンガス:俺はただ純粋に驚いたよ。「あんなに長い間リリースがなかったのに、やっと出たのがこれかよ」って。大傑作の「The New Abnormal」(2020年)の後に、まさかああいうアプローチで来るとは思わなかった。

カイ:そうそう、「The New Abnormal」の時は、本当に完璧なバランスを突いてきたと思ったんだ。結成20年目の成功したバンドが、古参ファンを満足させつつ、自分たち自身も芸術的に刺激を受けられるような作品を世に出すのって、めちゃくちゃ難しいことだからね。でも彼らはあのアルバムで、その境界線をすごく上手く歩いていた。曲はすごく親しみやすかったけど、初期の作品よりも明らかに成熟していたんだ。必ずしも「昔より良くなった」って意味じゃなく、その「成熟」の音をしっかり聴かせたっていうか。ただ、今回の新作に関しては、かなり(ジュリアンの)ソロ・プロジェクトの要素……特に「The Voidz」の色を強く持ち込みすぎてる気がしたな。それが必ずしも良い方向に転がってないというか。

1stアルバム「Something Real」に込めた思い

——ザ・ゲスト・リストの1stアルバム「Something Real」は、昨年のデビューEP「When The Lights Are Out」があくまで“通過点”に過ぎなかったと頷かせる、今のバンドの勢いとその後の変化が克明に記録された作品だと感じました。みなさん自身はどう評価していますか。

アンガス:かなり良い作品になったと思うよ。

レイオ:「Tense but confident(緊張感はあるが、自信に満ちている)」かな。あ、今の誰のレビューの引用か分かった?……誰も気付いてくれないか(笑)。分かってくれると思ったんだけどな。これ、キングス・オブ・レオンが「Sex on Fire」をリリースする前に、ベーシストが言ってた言葉のパロディーね。真面目な話、このアルバムは俺たちのここ3年間の集大成で、俺たちの音楽性をすごく上手く表現できていると思う。だから、心から高い評価をつけられるよ。

——今回プロデューサーを務めたのはマティアス・テレズですが、ガール・イン・レッドやオーロラを手がける彼のドリーム・ポップ的な背景は、ザ・ゲスト・リストのサウンドにどんな影響をもたらしましたか。

カイ:確かに彼のプロとしてのバックグラウンドはドリーム・ポップなんだけど、彼自身、10代の頃はずっと自分のバンドで活動していたし、俺たちが聴いてきたようなバンドの音楽も通ってきているんだ。特に60年代のバンドにすごく詳しくてね。だから俺たちがいつもの(ギター・バンドの)セットアップでスタジオに入った時も、彼にとっては全く未知の世界ってわけじゃなかった。それに、俺たちのレコーディングに入る少し前には、(UKバンドの)スポーツ・チームとも仕事をしていて。だから、アルバムをどういう風に表現したいかという点では、みんな最初からすごく感覚が合っていたんだ。彼も俺たちと同じように「ソングライティング」に重きを置いていて、とにかくそれぞれの曲のベストな部分を引き出そうとしてくれた。もちろん、彼ならではのドリーム・ポップの手法から来る「裏技」みたいなものもたくさん持っていて、それは地元のシーンにいるギター・バンド専門のプロデューサーと仕事していたら得られなかったものだと思う。そういう新しい要素をテーブルに持ち込んでもらえたのはすごく良かったよ。

アンガス:俺たちは常にスタジオでの経験から学びたいって思ってるんだ。将来のレコーディングに向けて、新しいスキルを身につけて帰りたいっていうか。もし俺たちがギター・バンドで、普段ギター・バンドしか手掛けないプロデューサーと組んだら、新しい発見は何も得られない気がする。だから、ドリーム・ポップの世界で経験が豊富で、かつ自分でもバンドをやっていた彼と作業できたのは大正解だった。彼と一緒に過ごした時間から本当に多くのことを学べたし、めちゃくちゃ助けになったよ。この経験は、間違いなく今後のレコーディングにも活きてくると思う。

——そのマティアスが持ち込んだ新たなアプローチと、初期の楽曲が体現していた荒々しいギター・ロック・サウンドを共存させるダイナミズムは、どのように生まれたのでしょうか。

トム:「シューゲイザー」っていうジャンルを思い浮かべてもらえれば、その2つがいかに相性が良いか分かると思う。シューゲイズのエッセンスは、間違いなくこのアルバムのいくつかの曲に影響を与えているよ。「Craven」って曲は少しシューゲイズ寄りなんだけど、とにかくラウドなギターと、何層にもレイヤーされたドリーミーなエフェクトが重なり合ってて……みんなああいうの大好きでしょ?(笑)。俺も大好きなんだ。だから、その2つの要素はすごく上手くシナジーを生み出せると思うし、今回のアルバムでも間違いなく機能していると確信してるよ。

カイ:アルバムを聴いてもらえれば、俺たちがどんな音楽から影響を受けて、どんな音楽を聴いてきたかは確実に伝わるはず。俺たちみたいに音楽をつくってる人間なら、普段からかなりの量の音楽を聴いているわけで、無意識のうちにそれが頭の片隅に残っているものだから。ギターの弾き方とか、メロディーがしっかり聴こえるようにギターのスペースをどう空けるかとか、そういう部分に表れてる。ベースも同じだね。アルバムの中には、ベースがグッと前に出てくる瞬間や、ドラムが主役になる瞬間がたくさんあるんだ。

メンバーのお気に入りの曲は?

——せっかくなので、みなさんそれぞれの一番お気に入りの曲を教えてください。

アンガス:俺のお気に入りは「Craven」かな。スタジオに入ってから最終的なミックスが終わるまでの間に、一番大きく化けた曲でもあると思う。シューゲイズっぽくてダークな雰囲気なんだけど、演奏していてすごく楽しいんだ。アウトロに向かって一気にテンポが上がっていく展開も最高だよ。

シド:俺は「You Should Care」。カイが最初にこの曲を持ってきた時から、ずっとお気に入りなんだ。すごくキャッチーで良い曲だし、なんだかクラシックな王道のラブソングって感じでさ。

トム:アルバムの最後を飾る「The Only Ones」だね。俺とカイにとって、すごく近い意味合いを持つ、とても親密な曲なんだ。カイが書いてきて、俺に渡してくれた曲なんだけど。アレンジを最小限に抑えているからこそ、曲の良さや歌そのものがより際立って聴こえるんだよね。

カイ:俺は「Sick Animal」が好きだな。理由は分からないけど、昔からテンポが遅くて少し悲しい雰囲気の曲に惹かれるんだよね。だから、アルバムの中ではこの曲が一番自分の好みに合ってると思う。あ、「Slow Down Sally」も同じくらい好きだけどね。

レイオ:俺のベストは「Slow Down Sally」かな。曲全体が好きなんだけど、特に曲が連れて行ってくれる「旅のような展開」が最高なんだ。ちなみにこれは、俺とカイの2人で書いた曲だよ。

テーマは「若さと混乱」

——今作のテーマは「若さと混乱」だと聞きました。実際、歌詞ではメンタルヘルスの問題や自殺、家庭内暴力など重いテーマが扱われていますが、これらはカイさんの個人的な経験に根差したものなのか、それとも世代的な感覚や地元マンチェスターの風景を色濃く反映したものなのでしょうか。

カイ:それは曲によってバラバラだね。完全に自分の人生に基づいた自伝的な曲もあるし、「このAメロだけは自分の心底から出てきた言葉だな」って感じる曲もある。逆に、完全に物語ベースで、俺自身の経験とは全く無関係な曲も入ってるよ。でも、1枚のアルバムの中にそういうのが混ざっているのは、決して悪いことじゃないと思うんだ。リスナーが音楽とどう向き合うかは、どっちみち変わらないからね。それに、たとえ自分の実体験について書いた曲だとしても、2年後に同じ曲を歌っている時には、頭の中に全く違う情景が浮かんでいたりする。言葉自体は同じでも、その言葉との「関わり方」が変わっていく。それって、曲という存在の美しさの一つだと思うんだ。

——以前、「歌詞と音を“戦わせる”」――つまり、リリックの内容とサウンドのムードとの間に意図的なギャップ/コントラストを持たせている、と話していましたね。

カイ:うん、それはアルバムの中で何度か登場する手法だね。例えば「Something Real」って曲は、歌詞はあからさまにポリティカルなんだけど、サウンドはアルバムの中で一番インディ・ポップ寄りっていうか、ザ・ストーン・ローゼズみたいなアップビートなリフが入ってるんだ。その直後に入ってる「Ruine」って曲は、歌詞だけを文字に起こして額面通りに受け取ると、かなりセクシーな内容に思えるはず。サウンドもヘヴィだしね。でも、もしミュージック・ビデオを作るとしたら、俺たちはあえて「真正面からセクシーなMV」には絶対にしたくない。そういうバンドもいるだろうけど、俺たちの性分には合わないし、「俺らってそういうキャラじゃないしな」って自覚があるからね。だから「Something Real」の時と同じように、自分たちを客観視した、ちょっと皮肉(Tongue-in-cheek)っぽいアプローチにすると思う。

——その客観視したユーモアや皮肉があるからこそ、楽曲が説得力を持って響くと。

カイ:「意味とサウンドを衝突させる(クラッシュさせる)」っていうのは、ミュージシャンに与えられた素晴らしい特権だよね。よく「歌詞と詩(ポエトリー)は同じものだ」って語る人がいるけど、正直それは大きな見落としだと思う。だって歌詞には「音楽」という強烈なコンテクスト(文脈)が乗っかるわけだから。その曲のコンテクストの中でしか持たない意味を持たせるために、音楽をすごくパワフルなツールとして使えるんだ。それって、すごく自由なことだと思うよ。

影響を受けたアーティストは?

——ちなみに、影響を受けたリリシスト、ライターは誰かいますか。

カイ:俺に「歌詞」の重要性を教えてくれたアーティストといえば、やっぱりルー・リードとイアン・カーティスかな。2人とも、本当に「嘘のない、正直な書き方」をするんだよね。自分が言いたいことを、無理に詩的に見せようとして誤魔化したりしない。彼らの言葉が詩的なのは、その背後にある「意図」や「真実」があるからなんだ。初期の頃、彼らの歌詞にのめり込んだことは、俺にとってすごく重要な経験だったよ。もっと最近のアーティストだと、ジェイソン・モリーナがやっていたマグノリア・エレクトリック・カンパニーにはかなりハマった。彼もルーやイアンに似た、ストレートでぶっきらぼうな歌詞の魅力があるんだよね。あとは、ビッグ・シーフのエイドリアン・レンカーも素晴らしいリリシストだし、ジョアンナ・スターンバーグ(Joanna Sternberg)も好きだね。極端で尖った表現をするようなアーティストにもすごく惹かれるし、今挙げた人たちは現代において本当に強力なソングライターだと思う。

——先ほども結成当初のロールモデルとしてジョイ・ディヴィジョンを挙げていましたが、マンチェスター出身というバックグラウンドは、バンドにどのような影響を与えていますか。「マンチェスター出身のバンドではあっても、“マンチェスターのバンド”にはなりたくない」と聞きましたが。

カイ:
俺たちがバンドを始めたマンチェスターのシーンって、本当にすごく健全で恵まれてるんだ。名前も聞いたことがない、良いかどうかも分からないような新人バンドのライブに、わざわざお客さんが足を運んでくれる。それって今の時代、特にイギリスの他の場所ではなかなか見られないレアな状況だよ。他の地域のバンドが、その環境を求めてわざわざマンチェスターまで遠征してくるくらいだからね。それに当然、この街には世界最大級のバンドを生み出してきたっていう「遺産(ヘリテージ)」があって、バンドもファンもそれを誇りに思ってる。そういう環境すべてが俺たちに大きな影響を与えているし、その価値を過小評価するつもりは全くないよ。

ただ、その遺産や名声が大きすぎるがゆえに、「マンチェスターのバンド」って呼ばれると、サウンドに対する特定の期待を背負わされることにもなるんだよね。「どうせオアシスかストーン・ローゼズのパクリだろ?」みたいな。でも、もし俺たちのアルバムの最初の30秒だけを聴いてそう判断されたら、それは俺たちがつくった音楽への大きな誤解だと思う。アルバムを進めていって「Sick Animal」って曲に辿り着く頃には、誰も俺たちをオアシスのパクリだなんて言わないはずだから。だから、単に「マンチェスターのバンド」という枠組みだけで語られたくはないんだよね。ただ少しだけ時間を割いて、先入観なしのまっさらな心で俺たちの音楽に向き合ってほしいなと思うよ。

——ちなみに、マンチェスターに限らず今のイギリスで、みなさんが共感を覚えるバンドがいたら教えてください。

アンガス:すでにかなり注目されてるけど、ウエストサイド・カウボーイかな。1年半くらい前、ブライトンのフェスに俺たちが出た時にライブを見たんだけど、深夜のパンパンのフロアで、マジで最高のギグだった。当時まだ1曲しかリリースしてなかったはずなんだけど、セット全体が素晴らしくてさ。それ以来、周りにウザがられるくらい彼らの良さを語りまくってるよ(笑)。ホテルで彼らのTシャツをなくした時はマジで凹んだな。彼ら、来週アルバムが出るからめちゃくちゃ楽しみにしてるんだ。

シド:俺はチェリー・ホルトかな。去年の11月のツアーでサポートをしてくれて、今ではすっかり良いダチなんだ。彼らのソングライティングはリスペクトしてるよ。「Flies」っていう曲があるんだけど、あれは本当に名曲。彼らは最高だよ。

レイオ:俺もチェリー(・ホルト)を推すよ。とにかく気のいいヤツらでさ。純粋に音楽を楽しんでる感じが最高なんだよね。

トム:俺はメアリー・イン・ザ・ジャンクヤードだね。ロンドン出身のトリオなんだけど、すごく面白いんだ。メンバー全員がクラシック音楽のバックグラウンドを持っていて、チェロやバイオリンが弾ける。だからライブでのサウンドのバランスが絶妙なんだよね。さっきまでバイオリンを弾いてたかと思えば、次の瞬間にはヘヴィでグランジっぽい音を鳴らしたりするんだ。

カイ:
このあいだマンチェスターでデイヴィッド・アディソンのライブを見た時、メアリー・イン・ザ・ジャンクヤードのベーシストがサポートで弾いててマジで驚いたよ。デイヴィッドも昨年末に出したアルバムが最高だった注目のアーティストでさ。彼はもともとアイルランド出身で、一時期マンチェスターにいて今はロンドンにいるんだけど、どこかで交わって彼女がバンドで弾くようになったんだろうね。そういう繋がりを見るのはすごくクールだと思う。

——ところで、みなさんより少し上の世代、例えばシェイムやブラック・ミディといったロンドンの「ウィンドミル(Windmill)」周辺のバンドたちは、自分たちにとってどんな存在なのでしょうか。

シド:やっぱり、ロンドンの「ウィンドミルシーン」のバンドにはかなり影響を受けてるし、憧れもあるね。ブラック・カントリー・ニュー・ロード(以下、BCNR)とか、それにフォンテインズD.C.とか。俺たち、特にメロディックな部分でフォンテインズによく例えられるんだ。さっきの「You Should Care」って曲も「フォンテインズっぽいね」って言われたけど、正直俺もそう思う(笑)。俺たちが15、16歳くらいの一番多感な時期に、ウィンドミルのシーンからBCNRみたいな新しいバンドがどんどん出てきて、みんなで夢中になって聴いてたんだ。メンバーでスクイッドのライブを観に行ったりもしたしね。間違いなく良い影響をもらってるよ。

アンガス:バンド同士が刺激し合える環境があるって素晴らしいよね。ライバルとして競い合ったり、お互いから学んだり、友達になったり。ウィンドミルのように、一つのベニューを中心にコミュニティーができて、お互いのライブを見に行って、一緒にギグをやって……そういう場所からは最高の音楽が生まれるんだ。あのシーンから出てきたバンドは、みんな本当に素晴らしい場所へと羽ばたいていったからね。

——アルバムを聴いたリスナーには、どんなことを感じてほしいですか。自分たちの音楽を通じて見つけてほしい「Something Real(本物)」とは?

カイ:どうだろうな。俺がこのアルバムを聴かせた人たちは、みんなそれぞれ「自分のお気に入りの曲」や「共感した曲」がバラバラなんだよね。それってすごくポジティブなことだと思うんだ。こういう時って「この1、2曲が圧倒的なキラーチューンだね」ってなりがちだけど、俺自身、日によって「今日はこの曲が一番最高だ」って思えるくらい、アルバムのほぼ全曲に自信を持ってるから。

全体としては、曲がしっかり書かれていること、そしてそれが俺たちの「嘘のない正直な場所」から生まれていることを感じてもらえたら嬉しい。「無難にまとまろうとしていない、ユニークであろうとしている」っていう姿勢もね。その上で、リスナーがどの曲に共感して、どの曲を自分のものにするかは、完全に彼らの自由だよ。

アンガス:そうだね。聴く人自身が、曲の中に自分だけの旅や物語を見つけて、自分なりの繋がりを作ってほしい。実際、このアルバムを聴いてくれた人たちは、曲のテーマについて本当に色々な解釈をしてくれてる。リスナー自身が音楽を聴きながら、自分の内側から何かを見つけ出してくれれば、それが一番だと思ってる。

カイ:もちろん俺たちなりに明確なテーマを持って書いた部分はたくさんあるけど、聴いてくれる人には、そこから自由に何かを感じ取る権利があるはずだからね。じゃないと、リスナーが「自分なりのビジョンを描く」っていう、アルバムを聴く上で一番の醍醐味を奪っちゃうことになるから。

レイオ:俺はただ、みんなに俺たちのことを「本物のバンド」だって認めてもらえたらそれだけでいいよ。とにかくこのアルバムを引っ提げてツアーに出るのが待ちきれないし、みんなに楽しんでほしい。俺たちにとって一番大事なのは、目の前のお客さんの前で生の音を鳴らして、リアルな空間でみんなと繋がることだからさ。

PHOTOS:TAKUYA MAEDA(TRON)

作品概要

■The Guest List「Something Real」
2026年8月28日リリース
価格:CD(国内流通仕様)3520円、LP(国内流通仕様)7480円
収録曲:
01. Something Real
02. Ruine
03. You Should Care
04. Sick Animal
05. Mundane
06. If Ever Your Devil is Kind
07. Pink
08. Craven
09. Slow Down Sally
10. Mary
11. Weatherman
12. The Only Ones
https://bignothing.net/theguestlist.html

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