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ゼンデイヤ × ロバート・パティンソン W主演映画「ドラマなふたり」 鬼才・ボルグリ監督が描く“愛”と“人間の複雑さ”

PROFILE: クリストファー・ボルグリ/映画監督

PROFILE: 1985年、ノルウェー、オスロ生まれ。「シック・オブ・マイセルフ」(22)が、2022年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品されて高い評価を受け、世界各国の映画祭でも上映される。同作を観たプロデューサーのラース・クヌードセンとアリ・アスターもボルグリの才能に衝撃を受け、続く「ドリーム・シナリオ」(23)をA24のもとで製作しプロデューサーを務める。同作で主人公の大学教授を演じたニコラス・ケイジが、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされる。

結婚式の7日前。花嫁が告白した“最悪の秘密”をきっかけに、完璧だったカップルの関係が綻んでいく——。そんな現実にも起きそうな地獄のウエディングロマンス映画「ドラマなふたり」が8月21日に公開される。ゼンデイヤ(Zendaya)とロバート・パティンソン(Robert Pattinson)という現代映画界を代表するトップ俳優がカップルを演じることも話題を呼び、A24作品としては史上最速で世界興収1億ドルを超える※大ヒットを果たした注目作だ。
※2026年4月現在

メガホンをとったのは、これまで「シック・オブ・マイセルフ」(2022)や「ドリーム・シナリオ」(23)という毒っ気の強い作品で映画ファンの心を射止めてきた北欧の鬼才・クリストファー・ボルグリ(Kristoffer Borgli)。またボルグリの才能に惚れ込んだ「ミッドサマー」のアリ・アスターが、ニコラス・ケイジ主演の「ドリーム・シナリオ」に続き、本作にもプロデューサーとして参加している。カップルの秘密をめぐるセンシティブな内容から、北米では公開直後から大激論を読んだ本作だが、ボルグリはなぜそのような危うい題材に惹かれるのか。ゼンデイヤ&ロバート・パティンソンとの共作、特徴的な人物の描き方、参照にした映画についてなど話を聞いた。

「愛の良い面と悪い面の両方を描く」

——これまでの監督作である「シック・オブ・マイセルフ」や「ドリーム・シナリオ」では、承認欲求やキャンセルカルチャーなどを扱い、現代社会の痛点を突く物語を描いてきました。そして今作「ドラマなふたり」では、さらにその上をいくセンシティブな問題に踏み込んでいますね。実際にアメリカ公開時には議論を呼んだと聞いていますが、反発を招きかねない、こうした危ういテーマに監督が惹かれるのはなぜなのでしょうか。

クリストファー・ボルグリ(以下、ボルグリ):それは私のセラピストに聞いた方がいいかもしれませんね(笑)。おそらくですが、人間が悪いことをできてしまう可能性や、自己愛的になってしまう可能性に惹かれているのだと思います。そうしたネガティブな性質は、程度の差こそあれ、誰の中にも存在するもの。その破壊的で、時には自滅的でもある衝動を見つめ、人間的なものとして描くことに興味があります。そこには不条理さやユーモアもある。正直に言えば、なぜこれほど惹かれるのか自分でもはっきりとは分かりません。ただそうしたものに興味をそそられ、不可解に感じ、少し恐れてもいる。だからこそ、そこへ引き寄せられるのだと思います。

——作中では、ゼンデイヤが演じるエマが「大昔にやった最悪なこと」を告白したことで、彼女が築き上げてきた関係が大きく揺らいでいきます。現実の社会でも、たった一つの出来事でその人のすべてが判断され、非難されることは少なくありません。こうした現象はソーシャルメディアが普及した現代特有のものと思われがちですが、監督はどのように考えていますか。

ボルグリ:人類の歴史と同じくらい昔からある話でしょうね。聖書にも「罪のない者が最初に石を投げなさい」という話があるくらいですから、人間の普遍的な性質なのだと思います。本当に正直に考えれば、人には誰にでも到底言えないことが何かしらあるはずです。我々はみんな秘密を抱えていて、それを完全に包み隠さず話したら、友人や仕事、周囲からの敬意や愛情を失ってしまうかもしれない。そうしたことは、昔からずっと存在してきたと思います。

——過去作でも揺らいでいく人間関係を描いていますが、本作がこれまでと異なるのは、ロマンスというジャンルに正面から取り組んだことです。このジャンルにどのような可能性を感じたのでしょうか。

ボルグリ:ジャンルの中で何ができるかを考えたというより、単純に「愛」を扱いたかったんです。愛を描き始めると、その結果として自然と「ラブロマンス」というジャンル映画のようになっていくのだと思います。この映画では、愛の良い面と悪い面の両方を描いています。ロマンティックコメディーのように始まり、やがて心理ドラマのようになっていく。ただ、ユーモアは最後まで残っている。なのでこれは愛を描いてはいますが、明確な一つのトーンやジャンルに収まる作品ではありません。愛は素晴らしいものにもなれば、悲しいものにもなる。失望させられることも、驚かされることも、怖いものになることもあります。そして、そのすべてが人生のたった一日の中で起きることだってある。

人生はジャンルに従って進むものではありません。だから映画も、必ずしもジャンルという枠の中に自らを閉じ込めるべきではないと思います。脚本を書き、人間という複雑で多様な存在を描こうとしている時に、狭い一本道から外れないよう、自分を無理やり抑えることはできません。

——作中で描かれるほど極端ではなくても、多くのカップルが、気まずい瞬間や、関係を試されるような瞬間を経験していると思います。本作の公式サイトには「カップルでのご来場は自己責任で♥」というコピーも掲げられていますが、実際にカップルで観た人からは、どのような反応がありましたか。

ボルグリ:自分でアンケートを取ったわけではありませんが、この映画をきっかけに、友人同士やカップルの間で、楽しいものから、あまり楽しくないものまで、さまざまな議論が始まったという話はオンラインでたくさん目にしました。劇場を出てすぐに「これまでにした最悪のことは何?」と相手に尋ね始めた人も多いそうです。とても危険な質問ですが、同時にすごく興味深い質問でもあります。この映画は、会話を始めるきっかけとしては非常によく機能しているようです。ただし、その会話がどんな結果をもたらすかについては、私は責任を負いません(笑)。

ゼンデイヤ&ロバート・パティンソンとの作品作り

——(パティンソン演じる)チャーリーとエマは正反対の性格で、合わない部分も明確にある。けれど映画を観ていると、2人が惹かれ合ったことを自然に信じられます。彼らの関係に説得力を持たせるため、キャラクターを作る際に意識したことはありますか。

ボルグリ:重要なのは、2人がユーモアを共有していることだと考えました。人間関係において、ユーモアはとても大きな役割を果たします。2人だけの関係性があって、同じものを面白いと思えて、お互いをからかうこともできる。そうしたことが大切でした。そして2人は、文化的な志向のようなものも共有しています。どちらも芸術や文学、映画を愛している。ただし、そこにたどり着いた道筋はかなり違っていた。

エマは、何者かを演じるように生きてきたのだと思います。結婚式での父親のスピーチからは、彼女が演技や演劇にとても興味を持っていたことが分かります。おそらく彼女には非常に豊かな想像力があり、それが文学に惹かれるきっかけにもなったのでしょう。その想像力は、最初はとてもネガティブな形で表れましたが、最終的には彼女を良い場所へと導いたのだと思います。

一方、チャーリーにとっては、学問や文化の面で人から一目置かれることが、育った環境や家族から期待されてきたことだったのでしょう。彼は、自分が人からどう見られるかを非常に気にしています。そのように2人は、まったく異なる道筋をたどりながら、多くの面で相性の良い二人になった。何より大切なのは、一緒に楽しめるかどうかです。相手の冗談に笑えるか。同じユーモアの感覚を共有しているか。自然に会話できるか。そうしたケミストリーをとても重視しました。

——クランクインの前にゼンデイヤ、ロバート・パティンソンと2週間のリハーサルを行い、両者と話し合いながら脚本を書き直したとお話しされていました。2人をよく知るようになってから、キャラクターに加えた変更はありましたか。

ボルグリ:ええ。今回に限らず、私はいつも、最終的に役を演じることになった俳優に合わせて脚本を調整しています。それ自体が、私にとって制作過程の一部なんです。この脚本も、特定の俳優を想定して書いたものではありません。だからこそ、実際に演じる人たちから影響を受けながら、キャラクターをより具体的に作り込んでいくことができます。

俳優に合うようにキャラクターを変えることもあれば、皆で交わす話し合いから変更が生まれることもあります。創作上のアイデアだけでなく、それぞれの個人的な体験やエピソードを共有しながら、「この状況に置かれたらどう感じるだろう」と考えていくんです。それは撮影前の最終段階で行う共同作業で、いわばワークショップのような時間です。私にとっては、制作過程の中でも特に刺激的で、素晴らしい時間ですね。

人間は善か悪かで判断できない

——監督の作品には、純粋なヒーローも完全な悪人も登場しません。人間を善か悪かで判断することを明確に拒んでいるように見受けられますが、そのような人物の描き方に惹かれるのはなぜですか。

ボルグリ:誰かが生まれながらに悪であったり、最初から悪事を働くことを望んでいたりするとは思いません。外部からの圧力によって悪いことをする場合もあれば、何らかの病理的な問題やトラウマを抱えている場合もあります。生まれ持った性質や育った環境が、その人をネガティブな行動へと駆り立てることもあるでしょう。ただ、私たちは誰もが悪を行う可能性と、善を行う可能性の両方を持っています。人間は一面的な存在ではありません。誰もが善いことも悪いこともする。それが人間の本質だと思います。

また、私たちには理性的な面と衝動的な面があります。知性があり、世界を理解しようとする一方で、子どものような感情も持っている。その2つは絶えずせめぎ合っていて、私たちはその間で葛藤しています。おそらく私は、人間の問題のある行動やネガティブな側面に、より興味を持っているのでしょう。何の問題も抱えていない幸せな人々を描くより、人間の問題行動や、私たちが世界で直面する困難を描く方が、より良い映画が生まれる可能性があるとも思っています。

だから、私は自然とこうした物語やアプローチに惹かれます。腰を据えて考えた末に「これに興味を持とう」と決めたわけではありません。その関心がどこから来ているのか説明できるほど、私はまだ自分自身を理解していないんです。ただ、今はセラピーを受けて自分をもっと理解しようとしています。あと10年もすれば、こういう質問にきちんと答えられるようになるかもしれませんね(笑)。

——前作「ドリーム・シナリオ」からプロデューサーとして参加しているアリ・アスター監督も、不安や道徳性をめぐる映画を作るという点で監督と共通するものがありますね。2人は年齢も近く今回も密接に意見を交わしたと思いますが、彼との協働を通じて、自分一人では思い至らなかったアイデアや助言を得ることはありましたか。

ボルグリ:彼は、私が何を目指しているのかを見抜き、理解することに長けています。その上で、すでに私が取り組んでいるものに対して、とても有益なフィードバックをくれるんです。ただし私のやっていることを変えようとはしませんし、「自分だったらこうする」と言ってくることもありません。私が目指しているものを理解し、それを最良の形にできるよう、意見や指針を与えてくれます。ですから、彼の意見は、私が構想している世界の外側から新しいアイデアを持ち込むというより、私自身が何に取り組んでいるのかを、より深く理解する手助けをしてくれるものなんです。

——「シック・オブ・マイセルフ」はノルウェーを舞台にしていましたが、「ドリーム・シナリオ」と本作はアメリカが舞台です。いずれの作品も人間の欲望や弱さを描いていることは共通していますが、そうした人間の側面を描く上で、アメリカという舞台にはどのような魅力があると感じていますか。

ボルグリ:人々が何に心を奪われ、何を考え、どのような文化の中で暮らしているのかという点で、アメリカがスカンジナビアやノルウェーより興味深いわけでも、そうでないわけでもありません。ただ少し異なるというだけです。私は10年前にアメリカへ移住しました。今はここで日々を過ごし、ここで世界と関わっている。だから自然と、自分の物語も新しい環境を舞台にするようになりました。

それは映画を作る上での戦略として決定したことではありません。たまたま移住して、ここが気に入ったから住み続けているだけです。日差しも好きですし、私にとって暮らしやすい場所なんです。移住したことで、私はある意味、土地に根差した人類学者のようになりました。ここで人々を観察し、人々と関わる。その中から物語が生まれてくるんです。

参考にした作品と
お気に入りの恋愛映画

——リハーサル期間中、キャストやスタッフと「ボブ&キャロル&テッド&アリス」(69)、「メランコリア」(11)、「ピアニスト」(01)、「沈黙の島」(69)といった作品を鑑賞したそうですね。それぞれのどのような要素を本作の参考にしたのでしょうか。

ボルグリ:それぞれの作品から、いろんな要素を参考にしました。例えば「ボブ&キャロル&テッド&アリス」に興味を持ったのは、友人同士である4人が、ある文化的なタブーとどう向き合うかを描いているからです。あの映画で扱われているのは性的自由です。製作当時としては非常に先鋭的で、大きな関心を集めていたテーマでした。「ドラマなふたり」も、ある意味では似ています。4人の友人たちが別の種類のタブーに直面し、その問題について議論せずにはいられなくなる。

「メランコリア」は、とにかく結婚式映画として素晴らしい。ラース・フォン・トリアーが大好きですし、あの映画は実に見事です。面白くて、暗く、演技もロケーションも洗練されている。結婚式が最悪の方向へ転がっていく物語を描く上で、全体的な参考にしました。ミヒャエル・ハネケの「ピアニスト」は、ゼンデイヤがエマを演じるうえでの参考として選んだ部分が大きかったと思います。非常に複雑でニュアンスに富んだ女性像を体現した、素晴らしい演技がありますからね。

またイングマール・ベルイマンの「沈黙の島」は、パートナーの秘密を知ってしまうことを扱った映画です。あの作品では、マックス・フォン・シドーが演じる人物が、アンナは過去の自動車事故で夫と息子を死なせたのではないかと疑い、彼女を見る目を変えていきます。そして次第に、彼女を恐れるようになる。それは「ドラマなふたり」でも扱っている心理的な現象です。知っていると思っていた相手のイメージを、改めて見直さなければならなくなる。新たに見えてきた相手の姿を受け入れ、一緒に生きていけるのか。その姿に恐怖を感じるのか、それとも少し興味をかき立てられるのか。そうした問題を描いている。そのような理由から、これらの作品を参考にしました。

——最後に、監督が「愛」を描いた映画で好きなものを教えてもらえますか。

ボルグリ:今ぱっと頭に浮かんだのは、「ロスト・イン・トランスレーション」(03)です。これも一般的な意味での恋愛映画とは少し違うかもしれませんが、間違いなくロマンスではあります。ただ、そのロマンスは境界線上にとどまっている。完全に肉体的な関係へ進むわけではないけれど、2人は互いに恋に落ち、その感情を観客も感じ取ることができます。2人が恋をしていることを認めなければならないのに、それについて何もすることができない。そんなロマンティックなおとぎ話です。成就することのない愛ですが、それでも美しい愛だと思います。

映画「ドラマなふたり」

◾️映画「ドラマなふたり」
8月21日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
監督・脚本:クリストファー・ボルグリ
製作:ラース・クヌードセン、アリ・アスター
出演:ゼンデイヤ、ロバート・パティンソン 、アラナ・ハイム、ママドゥ・アティエ、ヘイリー・ゲイツほか
2026|アメリカ|105分|英語|5.1ch|英題:The Drama|字幕翻訳:牧野琴子 | G
配給:ハピネットファントム・スタジオ  
©︎2026 Dramatic Movie Rights LLC. All Rights Reserved.
公式サイト
https://happinet-phantom.com/drama/

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