横山泰明/ヘッドリポーター:団塊ジュニア世代より少し若いけど、千葉ニュータウンという郊外の、計画的に作られたベッドタウン出身。なので、計画性のない街やお店についぐっときてしまう。 ILLUSTRATION : UCA
毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2026年8月3&10日合併号からの抜粋です)
鴨井:商業施設のあり方が変わっています。従来はファミリー層の買い物需要に応える場でしたが、近年は食やスポーツ、エンタメ、推し活など、各社がさまざまな切り口で新たな来館動機を作っています。「今、面白い商業施設とは何だろう」と考えたのが、特集の出発点でした。まず入居するアパレルやビューティ関連の企業30社にアンケートを行い、注目している施設をヒアリング。そこで名前が挙がった施設を取材しました。
定石を外れた発想に、
小売りの本質を見る
横山:僕が取材した長野県伊那市の「産直市場グリーンファーム」は、インパクトがありました。野菜の隣に古本や骨董品が並び、敷地ではクマやヤギまで飼っている。ちまたでは「直売界のドンキ」と呼ばれています。10年ほど前にこの施設を始めた小林啓治社長は、小売業界未経験者です。商業施設の定石からは明らかに外れているんだけど、小林社長の「お客さまが喜べばいいじゃん」という感覚はむしろ本質じゃないかなと思いました。
鴨井:一見すると混沌としているけど、考え方はすごく合理的ですよね。
横山:そうなんです。車で訪れる人が多い分、小林社長は、「1台に何人乗って来てくれるかが大事だ」と話していました。買い物って本来楽しいもの。家族みんなが楽しめる場所にできれば、車のシートを埋めて来てもらえる。その発想は理にかなっていると思いました。
地域の個性が
人を引きつける
鴨井:私は三重県の宿泊施設を併設した商業施設「ヴィソン」の社長に取材しました。ここは、「100年先にも残したい本物だけをそろえる」というコンセプトの下、社長自らが地元の調味料メーカーや飲食店、約60社を口説いたそうです。開業から5年ほどたっても、テナントが入れ替わっていないというから驚きました。地産地消の魅力や、テナント企業が提供する体験コンテンツも楽しめる場になっています。そうした新しい発想を学ぼうと東京から数々の大手企業が研修に来るといいます。
横山:「ヴィソン」は、三重から始まり、広島や軽井沢でも地元の企業と連携した施設作りに挑戦していますね。
鴨井:同じようなテナントが並ぶ金太郎あめのような商業施設が飽和している中、その土地にしかない魅力にスポットライトを当てる場作りには、商業施設の次の姿を考えるヒントがある気がします。