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異なる個性が集うN.S. DANCEMBLEによる“新たなダンスミュージック” 「かまし合い」が生む唯一無二のグルーヴ

PROFILE: N.S. DANCEMBLE

PROFILE: (エヌ・エス・ダンサブル)2025年1月から始動したクルー。ラッパー/ウッドベーシストのNAGAN SERVER(ナガンサーバー)を中心に、鍵盤奏者のTAIHEI(Suchmos/賽)、ドラマーの松浦千昇、ベーシストのJinya(D.A.N.)、トランペッターの寺久保伶矢、そして「on存在」としてカルロスが参加。25年初作品「WE ARE」EP 発売後、東京ワンマン公演 & 追加公演が完売し話題を呼んだ。“ダンスミュージック”をテーマに、ヒップホップ、ジャズ、ブレイクビーツ、ハウス、テクノなど多彩なジャンルをクロスオーバーし、そのパフォーマンスで観る者を足元から音楽に引き込む。26年5月27日にニューEP「iii」をリリースした。

N.S. DANCEMBLEというクルーが鳴らす音には、ジャズのスイング感、ヒップホップの反骨心、ハウスやテクノの肉体性が同時に流れ込んでくる。それでいて、その奥には一本の筋が貫かれている。ラッパー/ウッドベーシストのNAGAN SERVERを中心に、Suchmosの鍵盤奏者TAIHEI、ジャズシーンで研鑽を積んだドラマー松浦千昇(TAIHEIとは「賽」でも共演)、D.A.N.のJinya、トランペッターでありシンガーソングライターの寺久保伶矢、そしてパーティーメーカー(on 存在)のカルロスが集う。それぞれが異なる文脈を背負ったまま音を出した瞬間、自然と生まれるのは「アフロっぽいノリ」だという。流行を追うのではなく、それぞれが通ってきた音楽への敬意を土台にする。だからこそ、レゲエには手を出さない。だからこそ、モノラル盤からサンプリングする。その線引きの厳しさと、音を出す瞬間の自由さは、矛盾なく共存している。

いつしかNAGAN SERVER=N.S.という名前の意味さえ更新され続けながら、メンバー全員のものになっていった。それぞれのプロジェクトを抱えながら、年に数回しか鳴らせないステージに、誰よりもこだわりを込める。新作EP「iii」の後半を飾る「tobacco」と「再生」は、彼らが言う「かまし合い」の核心が、さらに深くダンスミュージックへと踏み込んだ証だ。バンドという言葉では収まりきらない、このコレクティブの正体に迫った1万字強のロングインタビューをお届けする。

N.S. DANCEMBLEのスタート

——バンドとしてスタートする前は、もともとはNAGAN SERVERさん主体のプロジェクトだったわけですよね。

NAGAN SERVER:もともとは「NAGAN SERVER and DANCEMBLE」というプロジェクト名でスタートしたんです。でも、andがついていること自体に違和感があって。一緒に演奏している中で、andがない方がバンドとして一つになれるんじゃないかって。それで「N.S. DANCEMBLE」という名前を、伶矢が提案してくれたんです。最初はNAGAN SERVERのN.S.から取ったっていう印象が強かったんですけど、その印象がどんどん薄れていって、逆にみんなのものになってきてる感じがするんです。N.S.の意味もどんどん変化していっていいと思ってて、今は「ナチュラルなんとか」ぐらいの感じです。

TAIHEI:「なんでか知らんけど」のNSとかね(笑)。

NAGAN SERVER:そう、なんでもいい(笑)。

——「on 存在」というカルロスさんの役割はどういう立ち位置なんですか?

NAGAN SERVER:パーティーメーカーです。フロアにいて、自由に写真や映像を撮ったり、オーディエンスを盛り上げたりしてる。本当にパーティーメーカーなんですよ(笑)。ファッションも彼が一番派手で。

TAIHEI:800メートル向こうからから見ても怪しいですから(笑)。もうオーラしかない。

——カルロスさんがこの5人を集めたっていうわけでもないんですよね?

NAGAN SERVER:それはないです。たぶんまとめられないと思います(笑)。

TAIHEI:サーバーくんとカルロスと松浦は、実は3人とも広島出身なんですよ。俺、コロナ禍の最中に一人で広島に遊びに行ったことがあって。そのとき広島の友だちが「面白い人を紹介したい」って、カルロスと知り合って。そこから俺が「最近、同じ広島出身のNAGAN SERVERくんっていうラッパーと遊んでるんですよ」って言ったら、カルロスが「サーバー、めっちゃ友だちやで」って、その場で電話してくれて。最初はこの3人で「コロナ禍でもできる形でイベントを企画しよう」っていう話をしてたところから始まってるんです。

——寺久保さんとサーバーさんは?

NAGAN SERVER:ここはジャムセッションですね。下北沢の「RPM」でジャズセッションを通じて出会って、「なんかやろうか」っていう流れから一緒にやってる感じです。とはいっても、ここ3年ぐらいですね。

寺久保伶矢(以下、寺久保):3年も経ってないですよね。2024年の末ぐらいに、たぶん最初に会って。(N.S.)DANCEMBLEを始めようっていう話が出てきたのも、そのあたりだったんです。

NAGAN SERVER:そう考えたら、本当に2年とは思えない濃さがあるかもしれません。JinyaとTAIHEIは、D.A.N.とSuchmosを通してずっと交流があって。俺とJinyaは、「リバーバレイト(REVERBERATE)」という共通の仲のいいブランドがあって。そこを通して飲んでる時にTAIHEIがJinyaを推薦してくれて、「今度一緒になんかやろう」という流れから入ってきたんです。なので、伶矢とJinyaが合流したタイミングは結構近いんですよね。

——サーバーさんはこのプロジェクトで鳴らしたい音楽像のイメージがあらかじめあったんですか?

NAGAN SERVER:みんなで集まって音を出したら見えてきたっていう感じです。それまで会ったことなかったメンバー同士もいたんですけど、一回音を出したら「このメンバーだな」ってみんなが思えた。TAIHEIと俺が最初にイメージ共有をすることが多いんですけど、TAIHEIも「このメンバーだね」って言ってくれて。

TAIHEI:何でもできるし、かつできないこともちゃんとあるというか。音を出してると得意なところに柱が見えてきて。ジャズから流れてるものもありつつ、ヒップホップ/ラップ系と、クラブミュージック、トランス系みたいなものが、このメンバーだと強いんだなっていうのが、最近やっと見えてきたぐらいの感じです。割と無理せずいろいろ実験する中で、このバンドならではの強い柱が3本ぐらいあるイメージに最近なってきましたね。

N.S. DANCEMBLE流ダンスミュージック論

——「ダンス」が大きなキーワードだと思いますが、皆さんそれぞれジャズやヒップホップ、ミニマルミュージックやロックと別のバンドやプロジェクトでも人を踊らせるアプローチをやってきている。フィールドが微妙に異なる人たちが合わさって鳴らすダンスミュージックの形とは何なんでしょうか。

NAGAN SERVER:たぶん反骨心みたいなパンク精神が、結構みんなそれぞれあって。お互いが「かます」っていう言葉を、めっちゃ言うんですよ。それぞれがライブでめっちゃかましたら、自然と客も踊るし、俺らも踊るという発想で。テーマは「ダンス」にしてるけど、お互いの反骨心、「かまし合い」っていうのがめちゃくちゃテーマになってると思いますね。

TAIHEI:それは結構ありますね。割とついていくのに必死です。練習をちゃんとしていかないと。それはこのバンドの曲というよりは、普段の基礎練というか。俺、DJをやる経験があまりないんですけど、この2人(NAGAN SERVER、Jinya)はめっちゃDJをするので、DJならではのミックスのし方を教えてもらって、それを生でやるとどうなるかっていう。

——Jinyaくんは今のTAIHEIくんの発言に対してどうですか?

Jinya:DJをやる時はジャンルを問わず何でもかけるんですけど、このバンドでは、そのアプローチを生でどう昇華するかを意識しています。トラックメイクやプロデュースの視点も持ちながら、それぞれの個性を出していく。ただ、根本にあるのは演奏なので、そこのミックス加減が大事だと思っていて。考えていることや会話の方向性自体はみんな近いんですけど、目指してるのは、もっと肉体的な要素と、クラブカルチャーやダンスミュージックと言われるものを掛け合わせること。いろんな面白い発見があって。メンバーそれぞれタイプは全然違うのに、音をドバっと出した瞬間、ノリが自然とちょっとアフロっぽくなるんですよ。アフロミュージックって、もともとそれをずっとやっていたんじゃないか、っていう発見です。今流行っているダンスミュージックも、結局はアフリカの音楽に寄っていってる。生音で人を踊らせることの究極は、そこにあるんじゃないかと思って、最近はそこを掘りたいと思ってますね。

——ジャズの血が濃く流れている千昇さんとJinyaくんというリズム隊の組み合わせ自体も、そもそも面白いですよね。

TAIHEI:そうそう、化学反応の嵐ですよね。普段お互いあまりやらないタイプ同士がバディを組むっていう状態で。土台から、バチバチバチって化学反応が起きまくってるので、割と「何しててもOK」みたいな気持ちになりやすいんです。

Jinya:新鮮ですよね。自分も、リズムへのアプローチが強いベースだと思っていて。どちらかというと亜種的な感じで、ファンクとも少し違う。自分のベースのスタイルが何なのか、自分でもよく分からないんですけど、リズムは常に考えています。いいリズムはいいメロディだと思っているので。ハンパないドラムがあると、自分もいろいろ自由にできて、それに乗っかれる。一緒に合わさることで、太いグルーヴができてるなと思います。

——千昇さんはどうですか?

松浦千昇(以下、松浦):もちろん、最初に思うのは「面白い」なんですけど。自分はジャズを通ってきて今のスタイルができているので、それで言うと、ジャズも、ウォーキングベースがあるぶん、実はダンスミュージックなんですよね。踊れる音楽なんです。でも、ビートミュージックとはアプローチの仕方が全く違う。そこが気になって、2年ぐらい前にずっと考えていた時期があって。「ビートミュージックのほうが踊りやすい」っていう人は多いんですけど、スイングも踊れるじゃないかと。じゃあその違いは何なんだろう、逆になんでどっちも踊れるんだろう、って共通点をすごく探してたんです。

結局たどり着いたのは、両方とも、ある種「普遍的」だということでした。スイングジャズは、一度スイングし始めたら、そのままずっと同じテンションで進んでいく。地面が一定の速度で広がり続けるような感覚というか。Jinyaさんのベースは、まさにそれなんですよ。パターンが一度決まってしまえば、スピードの速い戦車みたいに、もう止まらない(笑)。

NAGAN SERVER:怖い(笑)。めちゃめちゃ濃いことですよね。ダンスミュージックでゾーンに入るって。

松浦:まさにゾーンに入る感じです。グワーって、ずっと同じ速度でひたすら走るイメージがあって。でも結局それって究極のジャズだし、究極のダンスミュージックだなと思って。自分がやってきた音楽って、自分の体にトゲがあるイメージがあって、こういうことやった、ああいうことやったっていう。そのトゲが全部同じすぎると噛み合わないんだろうなと思って。トゲがちょっとずつずれてるから、噛み合ってくるイメージがすごいある。このバンドは特にそうなんですけど。

N.S. DANCEMBLE特有の刺激

——さっきTAIHEIさんが「かまし合い」というワードを出してくれましたが、この前、「賽」でインタビューさせてもらった時もTAIHEIくんと千昇さんは同じようなことを言っていて。いかにメンバーにかませられるか、みたいな。

TAIHEI:そうですね。賽はそれを「自由帳」って表現してますけど。とりあえずメンバーにまず、かます。「あんまり面白くない」って言われないように必死、っていうのは一緒なんですよね。

——TAIHEIくんにとって、このバンド特有の、他では体感しない刺激ってどういうところにありますか。

TAIHEI:圧倒的なステージング能力と、トラブルへの対応というか。お客さんの一筆書きみたいな求心力、ノリの感度が抜群に敏感で。サーバーくんは歌詞が飛んでもフリースタイルでねじ伏せられる。サーバー君がDJスタイルでライブしてた時に、俺がちっちゃい鍵盤だけ持って参加したりしたこともあって。最近はアンビエントからリズムなしで2人でやったりもするんですけど、そもそも、サーバーくんとライブをやって負けたことがないんですよ。

——場に飲み込まれたことがない、ということですか。

TAIHEI:飲み込まれたことはない。ギリ引き分けかなみたいな時はあったんですけど。何をもって勝ち負けなのかは分からないですけどね(笑)。とにかく、圧倒的なフロントマンがいるっていう点で、俺の中ではSANABAGUN.と結構共通してて。

——それは音源を聴いても感じるところではありました。

TAIHEI:ヒップホップとクラブミュージック、トランスを混ぜた生音でこのメンツでやれるっていうのは、俺からしたらSANABAGUN.でやりたかったことを異なる地平でやれている感覚がある。いろいろあって俺はSANABAGUN.を脱退したけど、このバンドをやった時に「あ、やっぱり俺、こういう音楽もやりたいんだ」って思っちゃったというのが正直なところです。それが、このバンドの一番楽しいところですね、俺の中では。

——寺久保さんはトランペッターとしても、シンガーソングライターとしても、ソロ活動やさまざまな客演で活躍されていますが、このバンドにしかない刺激はどんなところにありますか。

寺久保:最近、僕はソロの活動とDANCEMBLEの2軸でやっていて。ソロのほうはほとんど歌を歌っていて、こっちはトランペッターとして参加しています。自分のやりたいことに今すごく焦点を当てている人生のフェーズにいるんですけど、その中で、ここはトランペッターとして全力を出す場所というか。今までのキャリアにあったような、海外の人とのコラボやジャムセッションみたいな、初めましての人と音だけで戦うような環境を、今DANCEMBLEにすごく感じています。今までは敵か仲間かも分からないし、次いつ会うかも分からない人たちとばかりやってきたんですけど。

——ある意味では至極ジャズマン然とした生き方というか。

寺久保:そうですね。でもこのバンドは、これからずっと一緒に音楽をやっていく、信頼できる仲間がいるという感じで。音楽の向き合い方としてはすごく真摯な状態でありつつも、闘争心や野性的な気持ちを忘れない、という姿勢で向き合えているバンドだなと思ってます。

流行ではなくリスペクト

——サーバーさんは音源を聴いても、あらゆる音楽を通ってきた人がラップをやっているというスタイルだと思います。根底に流れている音楽の文脈が非常に多岐にわたっている印象が伝わってくる。このバンドにおける、ラッパーとしての立ち位置のテーマはどういうところに置かれてますか。

NAGAN SERVER:ハウスやヒップホップ、ジャズ、ロックなど、いろんな要素を自分たちなりに試してみるんですけど、ジャムをやってみて「これは自分たちじゃないな」と感じる瞬間もあるんですよ。俺らは、レゲエにはめっちゃ疎くて。同じ系統なら、まだダブの方が得意なくらいで。だから無理にレゲエをやっても、そこにリスペクトがなければ、俺らの音楽にはならない。俺が大事にしているのは、あらゆる要素が詰まった音楽へのリスペクトなんです。ハウスやテクノに対してちゃんとリスペクトを持っているメンバーが、そのサウンドを鳴らすからこそ、それが俺らの音楽の一部になる。DNAになっているんですよ。そういうフィルターがないと、ただ流行りをなぞっただけの薄っぺらい音楽になってしまう。だからそこだけは絶対にミスらないように、すごく慎重にしています。

——すごくDJ的な音楽愛であるなと思います。

NAGAN SERVER:最近、ジャズへの敬意をすごく大事にしていて。サンプリングする時も、当時のオリジナルのUSのモノラル盤からそのままサンプリングして、サンプラーに入れてエディットするのが一番リアルだなと思って、最近それを始めたんです。これは絶対オリジナルで持っていきたいというレコードは、高くても買って、そこからサンプリングする。それが一番の敬意だと思うので。モノラル盤って、現場が小さいクラブならハマるかもしれないけど、大きい会場ならステレオで聴かせた方がいいだろう、というのは分かっているんですけど。それでも一回モノラル盤を通してみようという気持ちが、最近特に芽生えています。

Jinya:それにしかない質感がありますよね。

NAGAN SERVER:当時の匂いというか、今の技術じゃ絶対に出せない、あの盤でしか出せないものがあるんですよ。今まで自分が積み上げてきたリスペクトの説得力を、さらに高めたくて。最近は1枚を大事に買っていくということを意識してやっています。DJも今はヴァイナルオンリーでやっていて。CDJとかいろいろ試してみたんですけど、あのちょっとした「ドゥッ」っていう振動感が、やっぱりヴァイナルでしか出ないんですよ。キックの、たぶん周波数か何かの問題で、絶対にレコードでしか出ないものがあって。それが自分には合っているんだと思います。データでしか持ってない曲も沢山あるのでいつかはUSBとバイナルを混ぜながらDJをしていたいという想いもあるんですが、今のところ一番説得力があるのはヴァイナルを使ってプレイする事なんだろうなと思っています。

——そもそも相当なレコードディガーでもある?

NAGAN SERVER:日々掘ってますね。めちゃくちゃレコードが好きです(笑)。

TAIHEI:もう大変ですよ。サーバー君の家に泊まりに行くと、飲みながら死ぬほどレコードを聴かせてくれるんですけど、そのうち寝ちゃうじゃないですか。だから記憶がないんですけど、たぶん音楽を聴きすぎているからか、1週間後くらいから1日1枚とか、2日で3枚くらいのペースで、サーバー君が聴かせてくれたレコードを「ディスクユニオン」でポチポチ買い始めてるんですよ。

——いつの間にかネットでオーダーしていると(笑)。

TAIHEI:そう(笑)。3泊くらい家に行くと、その3日後くらいから10日間くらいにわたって、レコードがバラバラに届き続ける。俺、2回泊まらせてもらって、2回とも同じことになってます。

NAGAN SERVER:危ないですね(笑)。

TAIHEI:泊まるとレコード10枚ぐらい買うわけです。ホテル代より高くつく。

——あらゆる音楽に対する敬意があるからこそ、いろんなジャンルも横断できる。敬意がジャンルをつなげている、ということですよね。

NAGAN SERVER:そうですね。例えば、ヒップホップから入った人とレゲエから入った人って、近そうに見えて、全くルーツが違うじゃないですか。レゲエのミュージシャン仲間も多いですけど、自分はヒップホップから入った人間だなと思います。お互いのルーツを尊重し合った上で一緒に音を出すって事が楽しいですよね。相手には寄りそうけど、スタイルは寄せない、みたいな。自分を持ってジャンルを横断することで世界が広がると思ってます。

フリースタイルで鍛えたフロントマン
NAGAN SERVER

——サーバーさんがフロントマンとしての資質、場を掌握する力をどこで培ったのかも気になります。

NAGAN SERVER:完全にフリースタイルですね。昔からフリースタイルをしていて、当時からバンドと絡むことがすごく多かった。今、いわゆるヒップホップバンドでラップし始めてる人たちって結構いると思うんですけど、俺はわりかし早い段階からバンドと絡んでいたことで、フリースタイルができるようになって、いろんな楽器と当時から絡みまくっていたのが確実に大きいと思います。

TAIHEI:完全にそうですよね。それは圧倒的に経験値が大きいと思います。

NAGAN SERVER:ベーシストのKenKenとジャムイベントをやっていたんですよ。そこにいきなり中村達也さんが来たりとか。即興で「ドラムとラップだけでやれ」みたいな空気になって、もうやるしかない。俺からしたらレジェンドすぎる人たちが、毎回ゲストで来ていたんです。そこにラップでレギュラーとして乗っていたから、絶対に精神的なものでは負けられないし、このメンバーでフロントマンを張っている以上、絶対にミスれないという緊張感を常に持ちながら、ずっと修行させられていた感覚でしたね。曲も決まっていないから、例えば30分あったら2部制とか3部制にして、半分くらいは全部ジャム。KenKenがめちゃめちゃ試してくるんですよ。ベースの音がいきなりダブルになったりして、それに全部直感でついていかないといけない。そこが一番鍛えられたと思います。精神面も含めて、フリースタイルだったので。

——いわゆる現行のフリースタイルラッパーとは、全然違うバックグラウンドですよね。

NAGAN SERVER:でも、UMB(MCバトル)も昔よく出てました。当時、広島から出てきて大阪でフリースタイルをやっていたら「あいつなんだ」って言われ始めて、大阪のアメ村でフリースタイラーとして名前が知られるようになったんです。「ハーデストマガジン」というストリートカルチャー雑誌があって、そのアメ村事情のフリースタイル特集で、その筋のラッパーが「広島でやばいやつがいる」って言ってくれて。そこからいろんなイベントに呼ばれ始めた、っていう歴史が実はあります。バンドとしては、俺、6年前に東京に来たんです。それまではずっと関西にいて。関西にいた頃は、自分が本当に求めているレイヴとテクノのサウンドを出せるバンドマンが、いなかったんですよね。

——このバンドはやっとたどり着いた場所でもある。

NAGAN SERVER:そうですね。今、このメンバーで一緒に音を出していく中で少しずつブラッシュアップされていって、このバンドだからこそできることがあるんだ、俺がやりたかったのはこれだったんだなって実感してます。もしこのバンドが終わったとしても、ソロ以外で他のバンドをやるイメージがつかないくらい、いいバンドだなと思っています。

「このメンバーしか考えられない」

——メンバーみんなそれぞれが忙しい中で、スケジュール調整が本当に大変そうですよね。

NAGAN SERVER:そこが一番の課題ですね(笑)。だからこそ、それぞれが意見を出し合って、一つひとつのライブをもっと大事にしていこうって。「本数が少ないからこそ、一つのイベントにもっとこだわろう」って、こないだJinyaが言ってくれて。それがすごく腑に落ちて、もっと洗練されたクルーにしていきたいという思いがあります。

Jinya:自分が好きなアーティストを見ている時って、活動の細かい部分よりも、とりあえず鳴らす音や作品がかっこよければいい。それに尽きるんですよ。活動スパンがどうとか、リスナーとしてもそんなに気にして見ていないなと思って。「ヤバい作品が出てるよ」って言われたら聴くし。結局、作品と自分、ライブをやっているなら音と自分、それしかないんです。戦略をすごくやっているなと感じることに対しても、自分は特に何も思わない。一発一発がかっこよかった、それが全てだと思っています。

——D.A.N.もそういうスタンスでやってますよね。

Jinya:まさにそうですね。あと、続けていくことが大事だっていうのも、めっちゃ思います。本当に究極、音楽が好きで音楽をずっとやりたいっていう、それしかなくて。それができるんであれば、ずっと続けられることが一番大事で。そこが大事じゃなくなって、危うくなるぐらいなら、解散したらほうがいいと思うので。

TAIHEI:タイミングとしては、D.A.N.とSuchmos、それぞれの再始動が重なったというのも不思議な感覚があったよね。まさか同じタイミングで再始動するとはという感じで(笑)。Suchmosが再始動する前には、JinyaともうDANCEMBLEを一緒にやっていたので、それも感慨深くて。

Jinya:D.A.N.が活動休止していた時に自分の中で「なんでずっとバンドをやってるんだろう?」って考えていて。それまでは「勝つぞ、勝つぞ」みたいな感じでやっていたんですけど、本当のところは、みんなで音を出してかっこいいものを作って世に出す、っていうのをずっとやり続けたかったんだなって気づいたんです。そこだけは絶対にブレちゃいけないなって、強く思いましたね。

——そして、音楽を続けていると、こうやって縁が繋がってくる。

TAIHEI:本当にそう。 Jinyaと一緒にバンドをやるなんて思ってもなかった(笑)。

Jinya:そうだね(笑)。

TAIHEI:SuchmosとD.A.N.が5組ぐらい出るイベントに一緒にでて、20人ぐらいしかお客さんいない頃から考えると、面白いですよね。まさか一緒にやることになるとはね。

新作EP「iii」で示した進化

——そして、5月にリリースしたN.S. DANCEMBLEの新作「iii」は、よりダンスミュージックに深く入り込んでいく方向性で、特に後半の2曲、「tobacco」と「再生」はそれを明確に示していると思います。1作目を出して様々な反応をシェアしていく中で、だんだんこういう方向に固まっていったという感じですか。

TAIHEI:今回の音源は、実はあと3曲くらいあったんです。リリースする曲を話し合って絞った部分もありつつ、自然にこういう形になっていって。「tobacco」は、松浦の生ドラムをうちのスタジオでJinyaが録って、サンプルしやすい叩き方でデータを取って、それを自分に丸投げしてもらって。あと俺が家にあるシンセでいろんな音色を作って、長めの素材をたくさん用意して、それをトラックにまとめて、DJとしてリミックスするみたいな作り方をしました。

Jinya:2人からサンプルをめちゃめちゃもらって、それを組んでいく感じで。

TAIHEI:松浦パックとTAIHEIパックを作って、うちで仕上げて渡すという感じですね。

——「再生」に関しては?

TAIHEI:「再生」はかなり前からライブでやっていた曲なんです。前回のDANCEMBLEのワンマンの時に新曲としてできあがって、それからずっとライブでやり続けていた曲で。うちのバンドはウッドベース、エレキベース、俺のシンセベースっていう、ベーシストが3種類3人いるのが面白いところなんですけど、途中でエレキベースに切り替えるアイデアが面白そうだなというところからあの曲が生まれて。最初はライブでフリースタイル的にやっていたのが、回数を重ねるうちに完成していって、これはやっぱり音源に残すべきだという流れになって。今回のEPでも、ヘッドライナー的な位置に置いています。

——ここからは、より生音感とエディット感、両軸を研ぎ澄ませていくというイメージが見えているんでしょうか。

TAIHEI:両方できることが今回でわかったので、それをどうライブで表現するかというのを、まさに今日のリハで話していました。

NAGAN SERVER:クルーなので、全員が全員、全員が1曲ずつ、アルバム全体を通してフルで参加するというよりは、自由にハマったタイミングで「この人とこの人を掛け合わせてみたら面白そう」とか、「ここは俺がいなくてもいいんじゃない」とか、それくらい自由でいいと思っています。エディットものは今後もずっとやっていきたいんですけど、より自由に、それぞれが得意な分野をちゃんと出し合えるアルバムを作りたい。次作は特に。全員がちゃんと詰まっている、でもそれが均等でなくてもいい。ちゃんとみんなそれぞれのアンサンブルになっていれば、それでいいなと思っています。あまり固く設定しすぎると、俺らみたいなタイプはまたいろんなところに行きたくなってしまうので、そこはあえて自由にしておきたいんです。飽きてしまうので。

——寺久保さんは、そのあたりの心構えはどんな感じですか。

寺久保:自由でいることで、僕のアイデアも枝葉のように分かれていくところがあって。今まで僕、バンドをやったことがなかったんです。ソロの活動とか、トランペッターとしてプレイヤーとして人と共演することがほとんどだったので、僕にとってのバンドというものは、すごくがっちりしたイメージでした。メンバーが5人いたら5人で音を出すもの、それが一つの音楽になる、というイメージがあって。でもこのバンドはちょっと違うなと、最初は戸惑った部分もありました。

そもそも僕はフロントマンしかやってきたことがないんです。だから、トランペッターとしてバンドに参加するというつもりでこのプロジェクトに加わったんですけど、自分の前にフロントマンがいて、自分はトランペッターとしている、という構図自体が初めての経験で。最初は戸惑いもあったんですけど、みんなでいろいろ話したり、自分自身でも考えたりする中で、このバンドはバンドというより、コレクティブであり、クルーであり、バンドという言葉では片付けられない、それぞれのメンバーの意識と音楽との付き合い方そのものが肝になっているプロジェクトなんだろうなと思うようになって。そこに面白さを感じていますし、だからこそ自分たちもそれぞれ自由でいられて、アイデアを出し合えるんだと思います。

——リズム隊も、アプローチによって生感とエディット感の考え方がかなり変わってくると思うんですが、どうでしょう?

松浦:自分は電子音も扱うので、演奏ができないわけじゃないんですけど。打ち込みのサウンドを打ち込みのサウンドとして再現しようとするのは、逆に一番簡単な考え方だと思っていて。でも、それを生ドラムでそのままやってもなんか違う、ということになって。結局そのどっちのバランスをいいところで取るかを、自分はずっと探しているんです。自分の中で一人のキングと言える存在にクリス・デイヴがいるんですけど、彼はどっちも扱えていて、いつもいいバランスを取っているんですよね。昔、クリス・デイヴは電子音を一切使わず、タムが嫌いだとまで言っていたのに、今はタムも使うし、パッドも使うし、結局バランスよくサウンドしていますよね。だから自分も、エレキはエレキ、生は生っていう分け方じゃない、自分なりのうまいやり方をずっと探しています。逆にこのバンドなら実験し放題で、何でも試せる。

TAIHEI:そうだね。個人的にはシンセしか弾かない曲をいっぱい作りたいです。エレピもピアノもオルガンもクラビも、生楽器の鍵盤の音は一切なし。アナログシンセだけ持ってきて、シンセしか弾かない。Suchmosのツアー中にリハをしていて、暇な時間に音色をいじっていて、面白い音ができたら「これはSuchmosじゃなくてDANCEMBLEっぽいから、DANCEMBLEに持っていこう」とメモして、音色を作って持ってくる、というのを今、一つのアイデアとしてやっています。

——Jinyaくんはどうですか。エディット的な方法論で言えば、鍵を握っている部分も大きいと思いますし、ベーシストとしての今後の可能性も含めて

Jinya:今、DANCEMBLEに関しては、自分が今までD.A.N.などでもあまり出してこなかった部分を出していて。ブラックミュージックは、もともと高校とか中学校の頃から聴いていて好きで、その中でももともとファンクが好きだったんです。それもあって、身体性のあるベースを、このバンドではしっかり出そうと思っていて。それが軸ではあるんですけど、ここからはもう少し拡張していきたいと思っています。他のメンバーを見ていても、みんなそれぞれの個性をずっと突き詰めてやっているので、自分の音ももっとフィジカルに出すということを意識していて。サウンドデザインも大事なんですけど、それ以外の部分で、どんなベースを弾いても自分の音になるくらいの身体性のある音やグルーヴを、もっと伸ばしていきたいと、今は思っています。みんながすごいので、その意味でもめちゃめちゃ勉強になっています。

――最後に、サーバーさんが代表で、7月5日のワンマン(@代官山UNIT)に向けて、オーディエンスに期待してほしいことを一言いただけたら。

NAGAN SERVER:伝説、残します。本当に、イントロから見てほしいです。今回はイントロからすごくこだわっていて。自分も好きなアーティストの中に、イントロを逃したら「あー、もう今日はいいや」と思ってしまうくらい、イントロを大事にしているアーティストが多くて。イントロの出方って、一番そのアーティストの、バンドの色が出るところだと思っているので。だから今回は、そこにもすごくこだわりたいと思っています。そして、伝説、残します(笑)。

PHOTOS:TATSUYA MARUYAMA

ライブ情報

◾️N.S. DANCEMBLE ONE-MAN SHOW 「iii」
会場:代官山UNIT
住所:東京都渋谷区恵比寿西1-34-17 ZaHOUSE
日程:2026年7月5日
時間:OPEN 17:00 / LIVE START 18:00
チケット料金:一般発売 5000円(1D代別)、当日券5500円(1D代別)
https://eplus.jp/n-s-dancemble/

EP「iii」

◾️ N.S. DANCEMBLE「iii」
2026年5月27日リリース
レーベル:DANCEMBLE Records
収録曲
01.iii
02.Vitamin B
03.tobacco
04.再生
https://ultravybe.lnk.to/iii_EP

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