国際認証のBコープ(B Corporation)の審査基準が今年3月、刷新された。日本企業に向けたBコープ認証の普及活動を行う一般社団法人B Market Builder Japan(BMBJ)は、これに伴いメディア向けの勉強会を開催。今年で20年目を迎える当認証の現在地や意義、新たな審査基準について、溝渕由樹BMBJ共同代表が解説した。
1万を超える企業が取得する国際認証Bコープ
Bコープとは、環境や社会に配慮した公益性の高い企業に与えられる国際認証。つまりは企業認証だ。製品認証ではないため、個別の商品や社内の特定ブランドでの取得はできない。2006年に米国で始まった当認証は、その後世界に拡がり、現在では1万を超える企業が取得する。
コロナ禍の2020年を境に国内外で取得企業が急増。国内では21年~25年の直近の4年で9.3倍に増加した。
日本では43業種78社(2026年2月時点)が取得しており、昨年は29社が新たにBコープ企業となった。BMBJのサイトによると、アパレル企業ではアパレル小売業が4社、アパレル製造小売業が3社の計7社が取得する。
新基準は網羅性を重視

現行の基準との大きな違いは何と言っても「点数制の廃止」だろう。これまでの基準では、ガバナンス(企業統治)、ワーカー(労働者、従業員)、コミュニティー(地域社会)、エンバイロンメント(環境)、カスタマー(顧客)の5項目を採点され、80点以上の獲得が求められた。
新基準では、基礎要件と7項目のインパクト・トピックをバランス良く網羅していることが求められる。今までは事業の特性や得意分野によって点数にバラツキがあったが、それを見直すのも1つの目的のようだ。
基礎要件は、取得を目指す企業の最初のステップとなる前提条件だ。ここで要件を満たしていないと次の7項目のインパクト・トピックには進めない。7つのインパクト・トピックは、「パーパスとステークホルダーガバナンス」「政策への働きかけとコレクティブ・アクション」「環境スチュワードシップと循環性」「気候アクション」「公正な働き方」「JEDI(ジャスティス・エクイティ・ダイバーシティ・インクルージョン)」「人権」。
環境問題に対するアクションや、パーパスの提示、ステークホルダーへの配慮などは多くの企業が取り組みを行っている印象がある。従業員の働きやすさやDE&Iに関しても、社内の教育や意識改革などで改善しようがある視界に入りやすいアクションだ。しかし、サプライチェーンが複雑で長いアパレル業界において、人権を尊重する姿勢と人権課題を把握する行動は、意識するだけでは難しいのではないかと感じる。
国内企業への新基準での審査開始は2027年度からを予定する。これから新規取得を目指す企業は自動的に新基準で審査されることになる。それと同時に、再審査を控えている企業も新基準で審査されるため、今まで3年ごとの更新の際に各社が目標にしていた“点数アップ”は目指せなくなった。
基準の変更と併せて、再審査の頻度も変わる。前述の通り、現行基準では3年ごとの更新で認証時に受けた試験を再度受けるものだったが、新基準は5年だ。そして点数制ではなくなる。5年後の再認証に向けて取得年と3年目、5年目で求められる要件が追加され、3年目には中間審査が設けられる。
なお、一定期間は旧基準での取得企業と新基準での取得企業が同じBコープ企業として混在することになる。
新たなデジタルプラットフォーム「B Impact」も登場
また「B Impact」という新たなデジタルプラットフォームも登場する。これは企業が自社のインパクトを一元的に測定・管理・改善できるように設計されたもの。誰でも閲覧可能なため、自己診断のために用いるのも良いだろう。
Bコープは米国発祥なだけあり今までは米国企業寄りの基準内容だったものが、「より世界中の企業にとって公平性ある“扱いやすい”内容になったのではないか」と溝渕共同代表は言う。しかし、事業規模によって求められる要件は多少違えど、全項目を網羅的に満たす必要があるため「取得の難易度も上がる」という。
取得の難易度が上がるということは、質が上がることになる。Bコープは第三者機関によって審査されるため、グリーンハッシング(自社のサステナブル活動がグリーンウォッシングなのではないかという追及を恐れ、取り組んでいるにもかかわらず公表せずにいること)をする企業の抑制に繋がり、各社が自社の企業活動に胸を張って発信できるようになることは生活者にとっても企業にとってもポジティブな効果になりそうだ。