トップスやパンツなど、他のアイテムに比べれば地味で目立たない。着用を繰り返すと摩耗し、いずれは穴が空いてしまう……。ファッションにおいて「脇役」や「消耗品」といって差し支えないであろう“靴下”だが、ここに目をつけたのが、元トゥモローランドのドレスバイヤーで現在は自身の会社TOHの代表取締役を務める神谷真太郎氏だ。2024年にソックスブランド「コンリード(CONLEAD)」をスタートすると、わずか約2年でユナイテッドアローズやビームス、ベイクルーズ、ジュンなど名だたるセレクトショップへと展開を広げている。
ファッションを面白くする“助演俳優”に
神谷氏はトゥモローランドのバイヤー時代を振り返っても、「ソックスは、やっぱり脇役だった(笑)」と振り返る。シーズンの買い付けやオリジナル商品の企画での優先度は低く、「最後にMDを埋めたり、調整弁にしたりする」のはいつもソックスだった。
「ただ、コーディネートにおける存在感は決してそんなことはない。ファッションはソックスで驚くほど遊び心が生まれる。でも、男性のソックス市場にはフォーマルなドレスソックスか、極端にカジュアルなものしかないように思えた。ソックスでファッションを面白くするという視点で作れば、きっとビジネスチャンスがあると思った」。
ブランド名「コンリード」は、「Connect(繋ぐ)」と「Lead(導く)」を組み合わせた造語で、「助演(Co-lead)」という意味も含まれる。ソックスはファッションの主役ではないかもしれないが、柄や素材がアクセントになることで、それぞれのアイテムの持つ意味が繋がり、ムードが生まれる。そんなソックスを、スタイリングの名脇役である「助演俳優」にしたいという思いを込めた。
2つの“制約”を逆手に
「コンリード」は2つの“制約”を逆手に取り、ブランドの強みに変えている。一つは、生産数だ。ブランドの代名詞はレースソックス(3980円)で、取扱店の9割がこれを買い付ける。レースソックスはウィメンズの印象が強いが、「コンリード」のものはドレスシューズによく合う繊細な編み地が特徴で、特にロングタイプはメンズからの支持が高い。ソックスの一大産地である奈良の小さな町工場で、珍しい古織機を使い、ゆっくりと時間をかけて編み上げられている。「伸縮性がすばらしいし、洗ってもピシッと戻るキックバックがある。僕自身、3年履いても破れていない」と神谷氏は胸を張る。ただし、つま先の縫製(リンキング)は手作業が必要で、職人の高齢化や減少から年間生産数は1万足が限界だが、消耗品に思えるソックスにおいて、この「希少性」が店頭でもアピールポイントになっているのだという。
もう一つがバイヤーの“予算”だ。だ。低単価かつ、生産量に制約があるソックスがメイン商材では、ビジネスのスケールは難しそうな印象を受ける。ただ神谷氏は、バイヤー時代の経験から「単価の低さがむしろ武器になる」と感じたという。「買い付けにおいて、最もシビアなのはお金の部分。予算枠が限られている中で、新規ブランドを買い付けるハードルはかなり高い。だがソックスであれば単価が小さいから、チャレンジもしやすい」。「コンリード」の1回の最低発注金額は上代で15万円に設定しており「アウターの発注を1着減らせば捻出できる」。バイヤー経験があるからこそ、バイヤーの「予算」という制約を理解した上でのセールストークが、くどき文句になっている。ブランド発足当初はトゥモローランド時代から付き合いのあるバイヤーが試しに仕入れ始めたが、実際に履いて「ソックスの概念が変わった」と実感し、リピートに繋がっていったのだという。
次なる目標はパリ
世間ではビジネススタイルのカジュアル化が進み、ドレスシューズの需要が下降している。「足元へのおしゃれ意識は、薄くなっているのかもしれない、でも僕は、靴下からもっとファッションを楽しくできると思う」と神谷氏。卸先のセレクトショップなどでは、「コンリード」のレースソックスに合わせたいからという理由で、革靴やパンツをセットで購入していく客もいるという。
卸先は国内が中心だが、タイ、韓国、台湾などアジア圏への展開も徐々に広げていく。次なる目標は、ヨーロッパへの進出だ。「日本の匠のソックスを、パリに持っていきたい。たかが3000、4000円のソックスでファッションがグッと華やかになる。そんなサプライズを世界に届けられたら」。