
ビューティ賢者が最新の業界ニュースを斬る
ビューティ・インサイトは、「WWDJAPAN.com」のニュースを起点に識者が業界の展望を語る。今週は、コラボの在り方とラグジュアリーなスタンスについての話。(この記事は「WWDJAPAN」2025年2月24日号からの抜粋です)
PROFILE: 渡邉弘幸/ウカ代表取締役CEO

【賢者が選んだ注目ニュース】

ふさわしい相手との協業がコラボの価値を高める
海を愛するもの同士である「アニエスベー」と「ヘリーハンセン」のコラボは非常に納得感のあるものだった。「アニエスほど、『海が好き』というメッセージをストレートに発信できるデザイナーはいない」とオファーに至ったと話す「ヘリーハンセン」担当者のコメントは、さまざまなコラボが溢れる今、企業を統率する中であらためて考えさせられるきっかけになった。企業としてのやりたいことに対して、それを伝えるにふさわしい人と協業することは、価値が増幅するような設計ができるからだ。
ウカでもこれまでさまざまなコラボを行ってきた。取り組むにあたって僕が考えているのは、ウカサロンのお客さまに満足感を与えられるかということ。なぜならウカのコアバリューはサロンにあり、そこに価値を見いだしてもらえなければ意味がないからだ。
直近だと住商モンブランやノルディック スリープとのコラボを行った。ウカの会長でありネイリストの渡邉季穂と中島理恵が監修し、前者とは医療従事者向けのウカカラーのレディーススクラブを、後者とは寝具とクッションカバーをウカカラーで製作した。住商モンブランいわく、子どものころに病院嫌いだったという人は白衣に対するトラウマを持っていて、あまり医療行為を受けたくないということが実は多いという。看護師や介護士に安心感や信頼感をもってもらえるように、注目したのがウカのネイルカラーだったという。患者が安心して思いを吐露できるようなカラーを開発してほしいというオーダーをいただいたのだった。ノルディック スリープからは、ウカの色とともに1日の終わりを過ごしたいと声がかかった。
それはウカにとって、非常に感動的なオファーだった。渡邉季穂は「顔は鏡がないと見れないが、爪は1日中目に入る。爪の状態はその人の心模様を表している」という。そんな爪を彩るウカのネイルカラーに優しさや安心といった意味で注目してくれたのがとてもうれしかった。
ウカからのニュースとして、多くのKポップアイドルを手がける韓国のヘアスタイリストであるパク・ネジュ氏とのコラボを予定している。4月15日に発売を控える「uka ラブユアヘア スタイリング」シリーズのメディア向け発表会を先日実施し、ネジュ氏にも登壇していただいた。彼も韓国でヘアサロンを経営し、プロダクトを手がけている美容師であり、仕事の上でわれわれと共感する部分が大きい。メンズ向けのプロダクトになる予定なので、期待して欲しい。
「uka ラブユアヘア スタイリング」シリーズは、2019年に発売したヘアスタイリングシリーズを刷新。使いやすさ・持ち運びやすさ・かわいらしさなどをキーワードに、ウカの美容師たちとともに生まれ変わった。多くの人が持つ髪にまつわる悩みを6つにカテゴライズし、クセを愛せるようなセルフスタイリングを提案する。“ボサボサ”や“フニャフニャ”という世界的に注目される日本語のオノマトペを商品名に用いている点も楽しんで欲しい。
ラグジュアリーとは高揚感があること
「ルメール」は好きなブランドの一つで、コレクションのルックを見てスーツが着たくなった。ここ数年はストリートテイストでスエットが自分のスタイルの中心になっていたが、力の抜けた「ルメール」のスーツは着心地が良さそうだと思った。
この記事には「ルメール」のモノ作りの姿勢やサービスの設計が語られているが、その雰囲気に共感を覚えた。クリストフ・ルメールは記事の中で「私たちがラグジュアリーだと思うのは、身につけたり、美しいものに触れたりするときに抱く感情。あるいは、ある種の高揚感を感じること」と語っている。これはウカのサービスのこだわりと一致する。僕たちウカは劇的な変化をもたらしたり、強烈な香りを振りかけるような美容への興味はさほどなく、少しの高揚感をまとって生活をしてほしいという思いでサロンのサービスや商品を設計している。
ウカのビジョンは「うれしいことが世界で一番多いお店」。アメリカでスタートするにあたり「クワイエットラグジュアリーだ」と評価を受けた。丁寧なネイルケアや体に害を及ぼさないヘナカラーは内向的でありながら、高揚感のあるサービスだと表現してもらった。今後海外進出する中で、ラグジュアリーのスタンスを守りながら商業的にも成功を収めている「ルメール」に勇気づけられた。
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