来日したヒストリアンのスティーン・ノットルマン。デンマーク王室コレクションの監査役も兼任
デンマークの国宝といわれる「フローラ ダニカ」シリーズのペインターであるマーレン・ユルゲンセンによる絵付けデモンストレーション
デンマーク発ファイン・ポーセリンブランド「ロイヤル コペンハーゲン(ROYAL COPENHAGEN)」は今年5月1日、開窯240周年を迎える。それを記念し同ブランドは4月6日、ワークショップおよびレセプションを開催。このイベントのために来日したロイヤル・コペンハーゲン本社でヒストリアンとして活動するスティーン・ノットルマンにアイコニックなシリーズ“ブルーフルーフルーテッド(BLUE FLUTED)”の歩みについて聞いた。
「デンマークのほぼすべての家庭に“ブルーフルーテッド”がある」とロイヤル・コペンハーゲン本社でヒストリアンを務めるスティーン・ノットルマンは語る。“ブルーフルーテッド”は透明感のある白地にブルーの繊細な模様を描いたシリーズ。日本でも、そのピュアで可憐な趣で大人気だ。「開窯当時からほとんど変わっていないこのパターンは、もともと中国の磁器に描かれていたもの。ポーセリンは17世紀に東洋から西洋に入ってきた。当時のヨーロッパのメーカーは中国の磁器のパターンもコピーするしかなかった」とノットルマン。磁器を持つことは当時ヨーロッパの王室にとってとてもプレステージの高いことだった。また、ヨーロッパ内で磁器の生産をすることにより輸送費をカットできるため、ビジネスになると見込み生産を始めるメーカーも多く、ヨーロッパの磁器生産は黎明期を迎える。ノットルマンは「その頃、ヨーロッパの至るところでコーヒーや紅茶、ホットチョコレートを飲む文化がスタートし、それを飲むための新しい食器=カップが必要になった。磁器メーカーは東洋のパターンのコピーからオリジナルのパターンへ移行を始めるなど、様々なことが起こっていた」と話す。
「ブルーフルーテッド メガ」の絵付けデモンストレーションをするベテランペインターのマイリス・ヒルデブランド・ニールセン
激しく移り変わるヨーロッパの磁器業界において、同じパターンを作り続けてきたのが「ロイヤル コペンハーゲン」だ。その背後には19世紀に同ブランドのアート・ディレクターを務めたアーノルド・クローの存在があった。「19世紀のヨーロッパでは偽物が溢れかえっていた。クローは開窯当時の“ブルーフルーテッド”を見付けてその古典的なパターンをアップグレードし、スタイルを確立した。なぜなら、“ブルーフルーテッド”こそが自然の産物であり、本物だと察知したから」。産業の一つとして確立しつつあった磁器業界では消費者に受け入れられるためにさまざまな試行錯誤が行なわれていた。豪華絢爛なスタイルが主流だった当時、クローは新しいスタンダードを作った。
ノットルマンは「デンマークの家庭のほとんどに“ブルーフルーテッド”があるのは、ロイヤル・コペンハーゲンが240年間同じものを作り続けてきたから。デンマークでは12人または18人のフルテーブルセットを子供が結婚するときに祖父母が贈る習慣がある。また、一部を受け継ぐ場合などは、一つ一つ買い揃えていくのが通常だ。この習慣が同パターンが世紀を超えて支持される理由だ」と話す。最近では、「ブルーフルーテッド メガ(BLUE FLUTED MEGA)」などオリジナルのパターンをモダンにアップデートしたシリーズもあり、ますます選択の幅は広がっている。「主役はあくまで食べ物。それをサポートするのが食器だ。青は食欲をそそる色だし、新しいパターンと古いものをミックスしても使える」とノットルマン。「ロイヤル コペンハーゲン」の魅力について聞くと「真面目だけどチャーミング。そこが日本人にも人気の秘密だろう」。