1. 廃棄物に第二の人生を フランスで進むアップサイクルの動き

廃棄物に第二の人生を フランスで進むアップサイクルの動き

サステイナブル 社会情勢

2018/12/15 (SAT) 23:00

 フランスは環境保全に積極的な国だ。ファッション業界でもエシカルやサステイナブルといったキーワードは、トレンドを超えて、もはや無視できなくなっている。大量消費社会を経験した消費者は、流行や質だけでなく背景を含めて良質なものを求めるように変化しているのだろう。筆者の主観では、国籍を問わずミレニアル世代以下の若者と業界の最先端で活躍する人ほどエココンシャスな印象だ。市場が広がったことで価格帯が下がり、デザインも洗練されてきたことで、環境に配慮した商品を選ぶ人が増えている。

 中でも、“アップサイクル”の動きはますます勢いを増す。アップサイクルとは、リサイクルやリユースとは異なり、古布や廃材など不要品に工夫やデザインを施して別の価値あるものに生まれ変わらせること。アイデア次第で新たな付加価値をつけることができるアップサイクルは、若手クリエイターを中心に広がりを見せている。ファッション業界では、17年「LVMHプライズ」でグランプリを受賞したフランス発のウィメンズブランド「マリーン セル(MARINE SERRE)」が先導する。デビューシーズンの18年春夏コレクションは30%、18-19年秋冬コレクションは45%が古着を使用した作品だ。19年春夏コレクションで登場した、スカーフを使った優雅なドレスは100%古着だという。まだ26歳の彼女が、サステイナブルに熱心に取り組んでいる点に非常に引かれたが「アップサイクルの服の作り方が当たり前になるべきで、エコなブランドだと強調するつもりはない」と言い、熱心さは特に見せずにサラッとこなしてしまうところがまたカッコいい。

 気候変動や地球温暖化など環境問題についての認識が広がったのは、1992年に国連気候変動枠組条約が成立してからだと考えられている。それ以降に生まれたミレニアル世代は、環境問題を幼い時から身近な問題として捉えているのだろう。

 今年「イエール国際モードフェスティバル(33e Festival International de Mode, d’Accessoires et de Photographie a Hyeres)」ファッション部門でグランプリを獲得し、「ニナ リッチ(NINA RICCI)」新アーティスティック・ディレクターに就任した「ボッター(BOTTER)」のデザイナーデュオも、アップサイクルに力を入れるミレニアルズだ。32歳のルシェミー・ボッター(Rushemy Botter)と28歳のリジー・ヘレブラー(Lisi Herrebrugh)はオランダ出身で現在アントワープに拠点を構え、共にカリブ海諸島にルーツを持つ。「イエール国際モードフェスティバル」で発表したコレクションは、海洋の環境問題へのメッセージとして“Fish or Fight”と題し、作品の一部は古着や古布を使ってアップサイクルを実践した。「マリーン セル」も「ボッター」も、従来のエコブランドが持つ野暮ったいイメージとは無縁で、モードな空気感を持った攻めのデザインで、必ずしもエココンシャスには見えないところが一つの魅力ではないだろうか。

 もちろんミレニアルズだけではない。「クレージュ(COURREGES)」「セリーヌ(CELINE)」「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」などで25年以上経験を積んだ54歳のデザイナー、ロナルド・ファン・デル・ケンプ(Ronald Van Der Kemp)が2014年にスタートさせた自身の名を冠したブランドは、古着と過剰生産で生まれた素材を95%の割合で使用し、豪華なドレスを制作する。「浪費的で非生産的な業界システムが根本的に変わるべきだという思いから、ブランドを立ち上げた」と語る。

 フランスではNPOによるアップサイクル事業も活発だ。“片方の靴下”を意味する「レ ショセッツ(LES CHAUSETTES)」は、フランス全土から片方の靴下や履けなくなった靴下を集め、洗浄と製造を経て靴下、パソコンケース、ポーチなどに商品化させデパートなどで販売している。失業者に縫製技術を教え、社会復帰支援や雇用創出も目的に掲げる。その他、ECサイト「レ レキュペラブル(LES RECUPERABLES)」は手頃価格の商品を展開しており、パリ市内には「ジュスティーヌ・ルイーズ(JUSTINE LOUISE)」や「ザイット(ZEIT)」などアップサイクルを行う衣料品店や、雑貨を扱うライフスタイル系の店が続けてオープンしている。

 アップサイクルでの生産過程は容易ではない。古着や古布を解体、クリーニング、そしてデザインへと着手し再構築する。「解体とクリーニングの過程が最も複雑だ」とセルとケンプは口をそろえる。「3000ユーロ(約38万円)のドレスは高価だが、制作に要する時間と手作業に対して適正価格」とケンプは説明し「ラグジュアリーな商品を買うことで、視覚的な美しさだけでなく、無駄をなくして環境に優しく、さらに技巧や優雅さを感じられるという全てにおいて、ポジティブな選択肢になることを目指している」と語った。セルは「アップサイクルの生産がより広まり、効率的に組織化されることを願っている」とファッション業界の未来に希望を託した。

 アップサイクルは、歴史を重んじ古い物に価値を見出すフランスらしい手法だと感じる。日本にも、世界共通語になりつつある“もったいない”の精神があるため、今後広がるのではないかと期待したい。環境に配慮し、新たな手法で創造したいと考えるデザイナーや企業は、廃棄物に第二の人生を与えるアップサイクルに取り組んでみてはいかがだろうか。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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