ファッション

柳井正ファストリ社長「アップル、グーグル、FB、アリババ、テンセントと組む!」

 ファーストリテイリング(FAST RETAILING)の柳井正・会長兼社長は、12日に東京証券取引所で行われた2017年8月期の決算会見に登壇し、使命や商売に取り組む姿勢など経営方針を語った。テーマに掲げたのは、「情報を商品化する企業になる」「生き残るために自ら変わる~有明プロジェクト」「グローバル・イズ・ローカル、ローカル・イズ・グローバル」「グローバルワン・全員経営」「LifeWear(ライフウエア)」「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」の6項目だ。さらにグローバルなデジタル&ハイテク企業との協業についても言及した。以下、柳井社長のスピーチをまとめた。

情報を商品化する企業になる 進化するお客さまのニーズに応える

 われわれは激変する時代の中で、どのような企業になりたいのか。本格的なグローバル化、デジタル化が始まります。これは全世界、全産業、全業態で、世界各地で同時に始まって、あらゆる産業に影響を及ぼしている。これは国境の概念とか企業とか、業界の概念を超え、人、モノ、情報の動きが激増し、人と人、物と物、人とモノ、そして情報が綿密につながり、製造業、流通業、サービス業といった業界や業態のボーダーが消滅していくということ。従来の産業は大企業から中小企業まで全てが高度な情報技術を活用し、それぞれの企業の強みを生かし、いかに高い価値をお客さまに提供できるかが問われていると思います。そしてそれこそが存在意義になるわけです。われわれはお客さまのために仕事をする。ファーストリテイリングは今までは商品を企画製造販売する企業だった。今後は情報を商品化する、新しい業態に変わる、情報製造小売業になります。今後は自分たちの特徴を生かして、どんどん進化する、お客さまのニーズに応えられる企業だけが生き残る。その動きの中心にいるのが、アマゾン(AMAZON)、グーグル(GOOGLE)、アップル(APPLE)、アリババ(ALIBABA)、騰訊(テンセント)、そういったハイテク企業であります。彼らはすでにあらゆる領域に入ってきています。それらの企業はわれわれにとって協力者であり、競合先にもなります。さらに世界中のグローバルブランドと協力し、あるいは競合してまいりたいと思います。

 それは情報をお客さまと取引先だけでなく、社会全体、全世界の顧客とお互いにコミュニケーションをして、新しい顧客ニーズをつかみ、ボーダレスに情報のやり取りをする。その要点は、「お客さま中心」。個人対個人のコミュニケーション、即断即決即実行していく。小チームで責任と権限を明確にして早く実行する。そのために最先端のテクノロジーを使い、より速く、より正確にあらゆる業務を大量に改善改革実行してまいります。

生き残るために自ら変わる~有明プロジェクト~

 生き残るために自ら変わる。われわれが今取り組んでいる有明プロジェクトについてお話したい。こうした新しい次元の競争に勝ち、「生き残るために自ら変わる」。変化に対して受け身になるのではなく、受け身になれば衰退すると思う。自ら変化を起こして、その機会を活用して成長する。そのためのチャレンジが有明プロジェクトであります。全く新しい働き方、新しい会社を作るのが有明プロジェクトの目的であります。企画、生産、物流、販売まで、私たちが自ら主体的にプロセスの全てを改革します。その基本は、「無駄なものを作らない。無駄なものを運ばない。無駄なものを売らない」ということだ。全ての業務プロセスを自分たち自身が完全に理解し、生産や物流のパートナー、お取引先と一緒に問題を解決していく。明確な目標を設定し、無駄を徹底的に排除する。生産や物流にとどまらず、店舗での接客、本部社員の働き方を含めて、仕事の仕方の全てを変えていきます。このプロジェクトをやり遂げて、必ず未来に勝ち抜く企業になっていきます。これは、過去のわれわれの歴史、現状のビジネス、グローバルブランド企業との競合を正確に把握し、自社のポジションを確立する。そういうことにつながると思います。さらに、未来のテクノロジーを積極的に取り入れて、情報と実践が連動した新しい産業を作る。そういうことになるというふうに思います。

「グローバル・イズ・ローカル、ローカル・イズ・グローバル」「グローバルワン・全員経営」「個店経営」「SKU管理」

 ファーストリテイリングが商売をやっているうえで大切にしていることが、「グローバル・イズ・ローカル、ローカル・イズ・グローバル」「グローバルワン・全員経営」「個店経営」「SKU管理」だ。世界中で古今東西、良い経営の原理原則、ビジネスプロセスは変わりません。また、それぞれの地域、国には固有の文化、歴史、生活文化があり、好みの色、サイズ、デザイン、シルエット、生活習慣が違います。このローカルの文化、価値観、歴史を尊重しながら、全員がやるべきビジネスプロセスをグローバルで統一し、ビジネスに関する価値観、原理原則を統一していきます。最終的にチェーンストアではなく、全世界の全店舗と商品の本質的でコアな部分をグローバルで統一しながら、個店のニーズと売れ(売れ行き、販売実績)に応じて最適な商品を商品構成し、教育訓練された販売員がお客さま一人ひとりに情報を伝えて、いつでもどこでも誰でも、世界中でお客さまがもっとも自分に合う商品を、いかに情報と共に手に入れ、顧客ニーズを満たしていくのか。これを実現したいと思います。これが「グローバルワン・全員経営」であります。

 社員全員が、本当に良い商品を作ろうと思えば、世界中の優れた才能と協力して服を作る。たとえばフランスでいうと、イネス・ド・ラ・フレサンジュ(Ines de la Fressange)、クリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)、英国だとハナ・タジマ(Hana Tajima)、JWアンダーソン(JW Anderson)など、世界中には優れたデザイナー、クリエイターがいます。世界中の服に関するあらゆる情報を集め、世界最高の服の専門家としての商品を作っていきたいと思います。服に関する全てのことを知っているのがわれわれだと思いますし、それがわれわれの強みの源泉だと思います。アパレルの業界は、1社で世界を独占することはできない市場です。パートナーとともに成長することが必要です。われわれは世界中の誰とでも、どんな企業とでもパートナーになっていけると思います。現状の東レ、三菱商事、アクセンチュア(ACCENTURE)、ディズニー(DISNEY)、アップル、グーグル、フェイスブック(FACEBOOK)、アリババ、テンセントなど、世界の一流プレイヤーと組んで一緒に仕事をやっていきます。こんな企業はファーストリテイリング以外にはないと思います。

 アートとファッションの取り組みの一例として、ニューヨークのMoMA(近代美術館)との取り組み(金曜日夜間開館プログラムのサポート)が、ベストパートナーシップとして、アメリカンズ・フォー・ジ・アーツ(AMERICANS FOR THE ARTS)、全米芸術委員会で表彰が決まりました。MoMA同様のことを、ロンドンのテート・モダン(TATE MODERN)で去年の秋から「ユニクロ・テート・レイツ(UNIQLO TATE LATES)」として実施しています。良いアイデア、良い取り組みを世界中で活用し、グローバルで勝つ。多様な文化的背景を持っている人材・企業とコラボレーションして、それらの価値ある情報を商品にする。これらがグローバルで商売をやっていることの強みであります。これがこの業界に最も必要なことであると思う。最近オープンしたバルセロナ(スペイン)、バンクーバー(カナダ)での取り組み、あるいは、世界各地で地域の文化、歴史に密着した地域経営をやっていきたいと思っています。

われわれが目指している「LifeWear」について

 「LifeWear」は着る人の生活に根差した服。作り手でなく、着る人の価値観から作られた服、服に個性があるのではなく着る人に個性があり、そういう人が着る服。そうわれわれは信じています。だからこそ、われわれの服はお客さまのスタイルを構成する部品になる。お客さまと真摯なコミュニケーションを続け、お客さまの声を生かして、「LifeWear」を進化させていく。そして、全く新しい服、世の中にない価値を生み出して、本当に良い服を作っていきたいと思います。われわれは世界中の人材、資源を両方利用して、世界最高の服と情報を提供できる、全く新しい産業を作りたいと思います。

コーポレートステートメント「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」

 「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」。これはわれわれファーストリテイリングのステートメントであります。私たちの出発点の全てがここにあります。ビジネスはお客さまを、そして、社会を豊かにするためにあると思います。その目的通りの仕事をしてより良い世界を実現するために、努力を継続してまいりたいと思います。

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