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「AIは“魔法の杖”ではない」 先駆企業ABEJAに聞く、アパレル企業の注意点

 ファッション業界にもAIの波が押し寄せている。弊紙「WWDジャパン」でも9月24日号でファッションAIに関する特集を行ったが、その中で日本国内におけるファッションAIの現状について先進企業5社を紹介した。ウェブでは先進企業5社に聞いたAIに対する考え方をインタビュー形式で紹介する。第3回は、AIによる店頭解析を得意とするABEJA(アベジャ)をピックアップ。2012年創業の同社はAIを用いて店頭の顧客動向を画像解析し、売り上げデータなどとひも付けることでブランドの店頭売り上げ向上の支援をしている。ABEJAの小売部門責任者にAIにおける注意点を聞いた。

WWD:まず、ABEJAの事業内容とは?

長谷直達ABEJA執行役員(以下、長谷):2012年にシリコンバレーでAIの発展を目撃した岡田(陽介・代表)が日本で立ち上げた企業だ。店頭分析や製造現場の生産効率化など、企業がAIを導入しやすいよう汎用性のあるパッケージとしていくつかのサービスを提供している。導入企業は100社以上で、稼働するシステムは1万台を超えた。

WWD:サービスの強みは?

長谷:企業に専門エンジニアがいなくてもAI分析を導入できる簡便さだ。われわれは店頭にデバイスを設置し、店頭から得られた行動分析結果を可視化できるプラットフォームを提供している。ただ、分析結果をもとにどういった施策をすればいいのか、ある程度の提案やサポートはするが、最終的にPDCA(Plan・Do・Check・Act)を回すのは企業自身だと考えている。自走するためのサポートをするのがわれわれの仕事だ。穴埋め問題のようなもので、ヒントを与えて、考えてもらうことが重要だと思う。

WWD:AIというと「勝手にやってくれる」「楽するためのもの」と考える人は多いように思う。

長谷:AIは“魔法の杖”だと思っていると絶対に失敗する。業務を最適化するためのもので考えるのは人間自身だ。私はいつも「AIは赤ちゃんだ」と伝えている。育てていかなければはじめは何もできないわけで、クライアントが両親だとすれば、ABEJAは教育ツールのようなものだ。

WWD:とはいえ、今後AIが分析結果をもとに施策の提案までしてくれるようなシステムは現実的には可能なのか。

長谷:もちろんいずれは自動化できるかもしれないが、店頭を可視化したデータをもとに売り上げがどう変化するか、そこまでを予測するためには企業施策とその後の数値の変化という「正解データ」が必要となる。現状われわれもクライアントも、そこまでのデータを持っていない。現状のプラットフォーム上には分析結果に対する施策を記入する部分もあって、企業が何をして、結果どう数字が動いたか、まさにこれからデータを貯めていくフェーズだろう。

WWD:企業がAIシステムを一から作ることもできる?

長谷:もちろん可能だがお金もかかるし、そもそも何をしていいかわからない企業がほとんどだろう。まずはパッケージを使って可視化し、自社で考えてもらうという作業が重要。企業が欲しいのはAIではなく、データだ。

WWD:クライアントでもあるアパレル側の意識の変化を感じるか。

長谷:やはり危機感が強い。店舗の存在意義があたらめて問われる中で、そもそも店頭のデータが見えなければ施策の打ちようがなかった。売り上げのわかっているECサイトのPV数がわからないのと同じ状況で、ネットで考えればあり得ない状態だということはわかるはずだ。