2014年9月に福岡・天神にオープンしたセレクトショップ「チェリー」の外観 PHOTO BY IKU KAGEYAMA
2014年9月に福岡・天神にオープンしたセレクトショップ「チェリー」の外観 PHOTO BY IKU KAGEYAMA[/caption] 今、セレクトショップのバイヤーは何を感じ、また次の潮流をどう捉えているのか?現在、ユナイテッドアローズを筆頭にした、いわゆる主要セレクトショップ市場は約8000億円と言われている。日本ほどショップ数が多い国はないのではないか。セレクトショップは、その名の通り、国内外のブランドをセレクトして集積したショップとしてスタートした。しかし次第に大手セレクトショップは利益率を追求したり、買い付け商品に合わせやすいベーシックな商品を補うためにオリジナル商品をたくさん作り、トレンドを重要視していけばいくほど、他店と同質化してきた。ここ数年は、他社と差別化するためにカフェを併設したり、コスメや植物、フードを販売したりするなど、ライフスタイル型にシフトし、気がつけば新業態と言われたビジネスモデルは当たり前になった。だからこそ、今後、独自性をどう打ち出していくのかが気になっていた。
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リステアの新業態「221リステア」
個々に取材を進めると、それぞれの個性が見えてくる。とくに地方のセレクトショップは、オーナーがバイヤーを兼務しているため、独自の采配でビジネスを行なっている。名古屋のセレクトショップ、グーフォは、新しい情報を得るために、年に4カ月も店を閉じると言うし、広島のザ・ステージの竹中敏治・代表は、43年のバイヤー歴を誇り、67歳になった今でも海外を飛び回り、自分はこの職業が天職だと話す。昨年は3店舗で前年を上回る年商約9億円の売り上げだ。竹中代表が次に手掛けたいのは、シルバー向けのセレクトショップだという。また、大分県でセレクトショップのクロマニヨンを経営する石田武司・代表が昨年9月にメンズのひとつの潮流となっている“ラグジュアリー・ストリート”をけん引するブランドをいち早く取り入れたチェリーを福岡・天神エリアにオープンするなど、むしろ地方のセレクトショップの方が独自性を打ち出している。
一方で、課題も見えてきた。その一つが若者のセレクトショップ離れだ。現在の顧客の多くは、セレクトショップがブームになりだした頃、当時学生だった30〜40代が中心。20代をなかなか取り込めていないのが現状だ。チェリーの石田代表は、「若者がファッション離れをしているとは考えていない。それよりも若者のニーズに気付ける大人が少なくなったと感じるし、それを具現化する大人がいなくなった」と話す。また、リステアの柴田麻衣子ディレクターは、若者に向けた流行発信基地、新業態221リステアに力を注いでいる。若者をターゲットにしているだけでなく、若手デザイナーをプレゼンする場所としての意味もある。セレクトショップも百貨店やラグジュアリー・ブランドと同様に、若者をどう引き込むかが課題だ。
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2015年春夏にスタートしたベイクルーズの「エール」
とはいえ、地方だけでなく、大手セレクトショップも独自性のある新たな取り組みに乗り出している。そのキーワードの一つが地域性だ。ロンハーマンの根岸由香里ディレクター兼バイヤーは、全国に10店舗あるロンハーマンを地域性や立地を踏まえて個店化し、商品構成もショップごとに変えることに力を注いでいくという。また、ビオトープ は昨年4月に大阪の南堀江にオープンし、それによりエリアに人通りが増え、他店も進出を検討している。地域性を踏まえた商品展開で言えば、アーバンリサーチは、店舗のある地域の産業と商品を共同開発する「ジャパン・メード」プロジェクトを行なっている。昨年9月にアミュプラザ長崎店で新プロジェクトを始動し、長崎県の陶器や染め物、食品メーカーと組 み開発したオリジナル商品を販売し、次回は金沢でのプロジェクトを進行中だ。
また、ベイクルーズグループのルドームは、今春夏に「エディフィス」「イエナ」の派生業態である「エール」を始動する。日本の匠の技に注目し、日本製にこだわったユニセックスのワードローブを販売する。インバウンド消費にも期待しているという。昨年、コラムで書いた、佐藤繊維が山形にオープンしたギアでも(2014年12月1日号P.3参照)、産地のものや日本の若手作家の器を集めたコーナーを作るという。海外の商品を買い付けるこれまでのセレクトショップのスタイルから、日本から世界へ発信する、本当にココだけしか買えない商品開発が進んでいくのではないか。地域性は、ひいてはメード・イン・ジャパンとして、日本市場全体のキーワードであるインバウンドにもつながってくる。今年を占う年始の予測的な観点から言えば、日本の職人や若手デザイナー、各地の繊維業と組んだ商品開発が増えれば、地方も活性化するのではないか。バイヤーも「買い付け」のみならず、「育成」と「共生」が今後のキーワードになるかもしれない。若者の育成、若手デザイナーの育成、地方の伝統を受け継ぐ職人や工房との共生だ。地方の産業とその地にショップを構える企業がタッグを組み、さらに産業が活性化することになれば、とても面白い取り組みになりそうだ。
※文中の肩書き・事実関係などは2015年1月12日時点のものです