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「ジョンストンズ オブ エルガン」CEOが語る“ストールブランド”からの脱皮 日本でトータルコレクションを本格展開へ

スコットランドのニットウエア&テキスタイルメゾン、「ジョンストンズ オブ エルガン(JOHNSTONS OF ELGIN)」が日本展開におけるトータルコレクション展開を本格化する。日本での初取引は1872年にさかのぼり、これまでカシミヤのストールやスカーフといった服飾雑貨を中心に支持を集めてきた。2025-26年秋冬シーズンから段階的にニットウエアやテーラードを含むトータルコレクションをスタートしており、日本国内でも26-27年秋冬から展開を本格化させる。日本市場のPR&セールスパートナーはエドストロームオフィスが担う。

ジョンストンズ オブ エルガン社は1797年、スコットランド北部エルガンで創業。2027年に創業230周年を迎える。エルガンのウィービングミル(織物工場)と、カシミヤニットの産地として知られるスコティッシュ・ボーダーズ地方ホーイックのニッティングミルを自社で所有・運営し、現在も創業家がオーナーシップを持つ。工場は、原毛の染色から紡績、織り、仕上げ、縫製までを一貫して自社で行える、スコットランドで唯一の垂直統合型ウィービングミルだ。従業員は約1000人、その多くがエルガンとホーイックの製造拠点で働く。ビキューナ、カシミヤ、メリノウールなど最高品質の天然繊維を扱い、エステートツイード、ニットウエア、ウーブンアクセサリーの供給で国王陛下および王妃陛下からロイヤルワラント(王室御用達)を授与されている。2023年にはB Corp認証も取得している。

近年は縫製アトリエ「メイカーズ・クロフト(Makers Croft)」を拡張し、サヴィル・ロウで培われたパターンカッティングの技術とクチュールの縫製技術を組み合わせ、少量生産ながらテーラードウエアまで手がける体制を整えた。これにより、ウエア、アクセサリー、ブランケットやスローといったホーム雑貨までを含むフルコレクションを供給できるようになった。日本でもこのフルラインアップを、主要百貨店の上階や質の高いセレクトショップで展開していく。日本市場への本格参入の狙いと戦略をクリス・ギャフニー(Chris Gaffney)CEOに聞いた。

PROFILE: クリス・ギャフニー/ジョンストンズ オブ エルガンCEO

クリス・ギャフニー/ジョンストンズ オブ エルガンCEO
PROFILE: スコットランド・ホーイック生まれ、エルガン育ち。ジョンストンズ オブ エルガンの二つの製造拠点の、いずれにもゆかりを持つ。大学では経済学を専攻し、卒業後に教員養成課程を修了。公認会計士資格とMBAを取得し、キャリアの大半をファイナンス領域で歩んだ。食品・飲料製造業界でコマーシャル・ファイナンスの職務を歴任し、2011年にファイナンス・ディレクターとしてジョンストンズ オブ エルガンに入社。その後、同職を兼任しながらエルガンのウィービングミルのマネージング・ディレクターを務め、21年にCEOに就任した。週末はスコットランドの自然の中を歩き、歴史書とSFを読む。音楽の趣味はインディー/オルタナティブ、スポーツはラグビー観戦とゴルフ

WWD:まず、日本市場での本格展開を決めた理由と、そのタイミングがなぜ今だったのかを教えてほしい。

クリス・ギャフニー ジョンストンズ オブ エルガンCEO(以下、ギャフニー):当社は日本と非常に長い歴史を持っており、日本で初めて商品を販売した記録は1872年にまでさかのぼる。以来、日本のお客さまには長年にわたり、私たちの織物によるアクセサリーコレクションを愛用いただいてきた。一方で、「ジョンストンズ オブ エルガン」が持つモノ作りの幅広い技術や可能性のすべてを、これまで十分に日本市場へ伝えられていたとは思っていない。

パンデミック後のラグジュアリー市場の活況を経て、今、確かな審美眼を持つラグジュアリーの顧客は、購入するものの品質や背景、そしてどこで、どのように作られているのかという点に、これまで以上に深い関心を寄せていると感じる。その結果、すでによく知られているブランドだけでなく、知名度はまだそれほど高くなくても、つくり手として確かな歴史や信頼を積み重ねてきたブランドへと目を向けるようになっている。

そうした今だからこそ、日本で長年「ジョンストンズ オブ エルガン」を支持してくださっているお客さまに、より幅広いコレクションを見ていただくと同時に、新しいお客さまにも私たちのブランドやモノ作りについて知っていただく、非常に良いタイミングだと考えている。

ニット、テーラードまで揃うフルコレクション

WWD:日本ではこれまでカシミヤのストール、マフラーのブランドというイメージが強かった。今後はウエアを含めて、どのような世界観・ライフスタイルを訴求していく?

ギャフニー:私たちのモノ作りの領域は非常に幅広い。1797年からエルガンで織物を手がけ、カシミヤニットの産地として知られるスコティッシュ・ボーダーズ地方のホーイックにはニッティングミルを構えている。さらに近年では、縫製アトリエも拡張した。そこでは、サヴィル・ロウで培われたパターンカッティングの技術と、クチュールの縫製技術を融合させることで、少量生産のテーラードウエアまで手がけられる、高度なモノ作りの拠点を築いている。こうした技術と設備によって、ニットウエア、アパレル、ソフトアクセサリーまでを含むフルコレクションに加え、ホーム向けのブランケットやスローまで幅広く展開することが可能になった。

ただし、私たちにはひとつの大切な原則がある。それは、「ジョンストンズ」が参入するすべてのカテゴリーにおいて、最高水準のものを提供しなければならないということだ。そのため、たとえば(モノ作りの拠点を有していない)シューズやビューティといったカテゴリーへ展開することは考えていない。私たちは"作り手"としてブランドとモノ作りの直接的なつながりを大切にしているため、これからも自分たちが本当に専門性を持つ領域に集中していく。

「ジョンストンズ」は、ワードローブを構成するアパレル、ソフトアクセサリー、そしてホームコレクションを提案するブランドだ。美しく、丁寧につくられ、気負わずに身につけられて、心地よいモノたち。そこには、スコットランドの色彩や風景から得たデザインのインスピレーションと、私たちが長年培ってきた糸や生地に対する深い知識と技術が反映されている。

原毛から一着まで自社で 
スコットランド唯一の垂直統合ミル

WWD:ウエアのメインの商材は?

ギャフニー:スコットランドで最も歴史あるメゾンのひとつとして、私たちのコレクションには、常にスコットランドならではのデザインコードを反映させる。たとえば、「フィフ セーター」(15万7000円)の複数の色を撚り合わせたカシミヤ糸が生み出す奥行きのあるメランジカラーは、私たちならではのもの。最高品質のウールで織り上げたツイードは、最終的にエルガンで一着ずつ手作業で裁断・縫製し、“ウィーバーズ ジャケット”(28万円)へと仕立てる。

そしてコレクションの中心となるのは、カシミヤのレディ・トゥ・ウエアだ。スコットランドで生まれ、デザインされたニットウエアを中心に展開していく。たとえば“メイベル セーター”(18万4000円)は、スコットランドの漁業文化にルーツを持つアランニットから着想した、4プライのカシミヤケーブル編みクルーネック。また“アーガイル ミューズ カシミヤ カーディガン”(13万6000円)では、チョコレートブラウンをベースにピンクの色彩を差し込み、ジョンストンズならではの繊細な色使いを表現している。

ニットウエアに加えて、エルガンの「メイカーズ・クロフト」で一貫して製作されるテーラードのレディ・トゥ・ウエアも展開する。カシミヤ混フランネルを使用し、一枚ずつ手作業で裁断・縫製した“クランラス シャツ”や、厳しい冬の気候にも耐えられるよう仕立てられた、ブランドを象徴するバルマカーン コート(44万1700円)などだ。

アクセサリーでは、長年培ってきた織りとニッティングの技術に、豊かな色彩のアクセントを取り入れている。その象徴のひとつが、新作の“スペイ スカーフ”(9万8000円)だ。市場にあるカシミヤスカーフの中でも特に軽く繊細な仕上がりで、まるで雲のように柔らかな肌触りでありながら、豊かな色彩を楽しむことができる。そして、「ジョンストンズ」を代表するカシミヤ タータン ストール(12万円)とも美しく調和する。これは、ジョンストンズを愛する方にとって、ワードローブに欠かせない定番のひとつだ。

WWD:スコットランドでの自社一貫生産は、ウエアの品質にどう反映されているか。

ギャフニー:自社で販売するすべての製品を、自社の工場で編み、織り、縫製まで行っているメゾンは非常に珍しい……いや、唯一無二に近いと思う。私たちの強みは、こうした幅広いクラフツマンシップを社内に備えているだけではない。原料となる繊維を仕入れ、それを糸にし、生地へと仕立て、最終的には完成した一着の衣服にまで仕上げることができる、垂直的なモノ作りの深さにもある。この一貫した生産体制によって、品質とクリエイティビティーを途切れることのないひとつの流れとして管理することができ、それが顧客にとっての価値につながっている。

たとえばコートのデザインや機能性を考える際も、私たちのチームはまず原料となる繊維から考え始める。そこから糸にどのような撚りや重さが適しているかを検討し、229年にわたるアーカイブからインスピレーションを得ながらチェック柄を決め、最終的には縫製アトリエの職人たちとともに一着のコートへと仕立てていく。そのすべてが、自社の中で行われている。モノ作りの工程が短いサプライチェーンの中で完結しているため、部門から部門へのフィードバックもほぼ瞬時に行うことができる。だからこそ、最初から最後まで一貫した品質を堅持できる。

目指すは“オーセンティック・ラグジュアリー”
直営出店を構想、卸先も厳選

WWD:日本では現在、円安や価格改定の影響でインポートブランド全般が苦戦し、一部のトップラグジュアリーブランドとそれ以外で二極化が進んでいる。そうした環境の中、「選ばれるブランド」になるには。

ギャフニー:私たちは決して手頃な価格帯のブランドではない。最高品質の素材を使用し、小ロットで生産し、すべてをスコットランドで作っているからだ。

一方で、私たちは価格に見合う確かな価値を提供することをとても大切にしている。小規模な独立系ブランドだからこそ、大手ラグジュアリーメゾンと比べると利益率への期待値やマーケティングへの投資額も低く抑えられている。そのため、日本だけでなく世界的にさまざまな課題がある中でも、私たちの価格設定は非常に良いバランスにあると考えている。同等の品質を持つ、より知名度の高いラグジュアリーブランドと比較しても、全体としてはより抑えられた価格で提供できていると思う。

私たちが目指しているのは、"オーセンティック・ラグジュアリー(Authentic Luxury)"だ。つまり、ロゴに対してではなく、製品そのものの品質や職人のノウハウ、そしてスタイルに対して価値を感じていただくということ。そうした考え方は、今の消費者が求めているものにも非常に合っていると感じている。

WWD:これまで日本では、トラッド系のセレクトショップや百貨店での取り扱いが中心だった。今後、卸先の幅はどう広げていくか。

ギャフニー:もちろん、アクセサリーのフロアで美しいカシミヤのタータンストールを買っていただけることが変わるべきではないと思う。その上でこれからの私たちは、フルコレクションを可能な限り最良の環境で顧客に見ていただくことを目指していく。いずれは直営店を持つことになるだろう。日本のすばらしいところは、百貨店やインディペンデントショップの質も非常に高いこと。だからこそ、まずはエドストロームオフィスとともに、卸において適切なパートナーを選んでいくことから始めている。

WWD:日本市場における売上高や取り扱い店舗数の目標は?あわせて、グローバル売上に占める日本の位置づけも教えてほしい。

ギャフニー:日本は、アジアという枠にとどまらず、グローバルにおいても私たちにとって非常に重要な市場だ。品質に対する高い基準と、クラフツマンシップへの深い理解を持つ市場として、日本はひとつの重要な基準となっている。また、日本で行うさまざまな取り組みは、私たちのグローバルコミュニティーにも届き、共感を生むPRの機会にもつながっている。

私たちは、最大規模のラグジュアリーブランドになることを目指しているわけではない。すべての製品を自社で生産しているからこそ、成長のスピードは慎重に見極める必要があり、自社工場の生産能力ともきちんと歩調を合わせていかなければならない。そのため規模を追うのではなく、正しい形で成長していきたい。具体的な売上高や店舗数を目標として掲げるのではなく、長期的な視点を持って、時間をかけてブランドを築いていきたいと考えている。

WWD:B Corp認証を取得するなど、サステナビリティにも力を入れている。

ギャフニー:私たちはサステナビリティに多くの時間をかけて取り組んでおり、トレーサビリティのある原料、動物福祉、化学物質の使用、水やエネルギー、パッケージなど、さまざまな分野でプロジェクトを進めている。

ただ、ファッションブランドがサステナビリティのためにできる最も重要なことは、長く使い続けることができ、そして長く愛される、質の高いものをつくることだと考えている。一着を何十年にもわたって着続けることで、その製品がもたらす環境への影響を長い時間の中で捉えていく。そうした「使い続けることによって生まれる価値(value in use)」こそが、本当の意味でのサステナビリティにつながると考えている。

WWD:長く愛すことができる、良質な製品が出発点になると。

ギャフニー:その通り。私たちが最も大切にしているメッセージは、クラフツマンシップだ。特定のデザイナーによって生まれる一時的なムーブメントを追うことも、マーケティングによる話題性をつくることに重点を置くこともない。「ジョンストンズ オブ エルガン」が成功していくために大切なのは、品質やオーセンティシティー、そしてシンプルでタイムレスなデザインに価値を感じてくださる方々に、私たちのモノ作りがしっかりと響くことだと考えている。これから日本でさらに私たちのコミュニティーを広げていけることを楽しみにしている。そして、皆さまにもぜひ最新のコレクションを楽しんでいただければと思う。

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