ファッション

窪塚愛流の“オリジナル”への想い 初個展で見せる自分の中のモンスターたち

俳優・窪塚愛流の初個展「MeMonsters(ミーモンスターズ)」が5月24日まで、東京・神保町にある「ニュー ギャラリー」で開催している。窪塚は数年書き溜めたドローイング数十点と、今回のために作成したガラス作品で展示を構成した。初個展に至った経緯や作品にかける思いを、窪塚自身が語った。

PROFILE: 窪塚愛流/俳優

窪塚愛流/俳優
PROFILE: (くぼづか・あいる)2003年生まれ。神奈川県横須賀市出身。18年の映画「泣き虫しょったんの奇跡」で俳優デビュー。21年から本格的に俳優活動を開始。24年には映画「ハピネス」で初主演。最近の出演作にTBSドラマ「御上先生」、NHK夜ドラ「あおぞらビール」、現在、テレビ東京連続ドラマ「るなしい」が放送されている

人前に出すつもりがなかったものを
発表できる機会を得た

WWD:今の率直な気持ちは?

窪塚愛流(以下、窪塚):率直に言うと、マジで嬉しいです。このインタビューでやっと自分の気持ちを言葉に表せた感じです。嬉しすぎて、「この感情はなんだ?」みたいな。今までの誕生日とも違うし、すごく感慨深いものもあるし。1つ1つの作品……作品っていうか落書きなんですけど、ちゃんとストーリーはつけていたものも、こうやって1つの絵にまとまるのがすごく嬉しくて。あまり、言葉にできないです。なんかふわふわしています。

WWD:俳優として出演作品を初めて観る時の気持ちと似ている?

窪塚:いや、違いますね。これは今まで僕が描き溜めてたもので人前に出すつもりではなかった。自分が好きで描いていたものが、こういう機会を得て発表できるのはサプライズみたいな感覚です。

WWD:元々は自分が楽しむための落書きだった?

窪塚:日常の一部でした。ゲームをする感じで絵を描いてて。自分が「描こう」って思わないと描けないんです。どこかからインスピレーションを受けたわけじゃなくて、丸を描いた時に「これ目玉っぽいな」と思ったら、そこから体を描いていくとか。肉球に見えたら、肉球からキャラクターを描いていくとか、その時に見えたものを描き足していく感じなんです。

WWD:完成形を最初から思い浮かべて描くことはあまりない?

窪塚:ないですね。猫だけは「猫を描きたい」と思って描きますけど。なので今回は猫をモチーフとしたものが多いです。

WWD:今回の個展タイトル「MeMonsters」というタイトルには、“ME(=窪塚自身)”、“MEMO(=短い記録)”、“MONSTER(=空想上の生き物)”という意味合いがあると聞いた。

窪塚:このタイトルは企画段階で提案してもらったんですが、聞いた瞬間に「それだ!と思いました。絵に名前をつけてないし、自分の中でも個展っていうものが漠然としていたんですが、このタイトルを提案してもらったときに、全部がジャストフィットした感じがしました。

WWD:モンスターたちは、実在する動物を参考にしているわけではない?

窪塚:僕は何か、誰かからコピーして描くことが嫌いなんです。全部、自分の中から出たもので描きたい。ただ、最初のイメージだけは欲しいので、例えば猫を描くときはスマホで画像を一覧でバーッと見て、「こういう感じなんだ」っていうのを頭に入れました。

WWD:見ながら描くのではなく、イメージだけを取り込む。

窪塚:そうですね。例えば龍も「龍」って検索していっぱい見て、「龍ってこういう顔なんだ」みたいなのを入れておく。でもそれに従おうとはしてないです。土台だけ入れて、自分の龍を作るみたいな感じですね。

WWD:猫が多くなった理由は?

窪塚:描いていて膨らむんですよ。猫とか龍って、描いていくとどんどん大きくなっていく。表情も全部違うし、それが楽しくて。基本的に“楽しさ”を求めて描いているところがあります。

WWD:完成した作品はストックしていた?

窪塚:そうですね。自分で生み出したものとか、思い出とかを残しておくのが昔から好きなんです。写真とかダイアリーとかも。1年後に見返した時、「これ描いたの1年前だ」みたいな楽しさがあって。だから日付もちゃんと書いてます。捨てるのがもったいないな、と思って。

WWD:今回の展示で一番古い作品は?

窪塚:2023年とか24年ですね。

WWD:描くのにお気に入りの道具は?

窪塚:筆ペンが好きです。描き直せない道具が好きで、ミスまでもキャラクターにしたいっていう気持ちがあるんです。小学生の頃、習字の授業で先生がオレンジの筆ペンを使ってるのを見て、「いつかこれで絵描きたいな」って思っていたんですよ。大阪から上京してコンビニでそれを見つけて、夢が叶いました。強く押したらベチャってインクが出るし、引いたら細い線になる。その感じがすごく楽しいんです。

WWD:描きながら変えることも楽しい、と。

窪塚:例えばこの絵は、最初は波を描こうとしてたんです。富嶽三十六景みたいな感じで富士山も描こうとしてたんですけど、「これ無理だ」ってなって。

でももったいないから、「これ何に見えるんだろう」って考えた時、最初は龍に見えた。でも全体が紙に収まらないなと思ってよく見たら、不死鳥に見えてきて。自分が最初に“目”だと思っていたものが、目じゃなく口にも見えるようになったりする。そういうのが好きなんです。

WWD:段ボールの裏に描いた作品もある。

窪塚:家に紙がなくて。「そういえば友達のお母さんが送ってくれたサッポロ黒ラベルの段ボールあるわ」って思って、それを切って描きました。紙がなくても、「今描きたい」が先なんです。

“オリジナル”へのこだわりは家族譲り

WWD:影響を受けたアーティストや漫画家は?

窪塚:いないですね。もちろん好きですけど。昔からファッションもそうなんですけど、「自分だけの世界」でいたいんです。人の真似とかコピーが好きじゃなくて。ただ、アニメや漫画自体は好きで、ポケモンとかめちゃくちゃ やっていました。

WWD:オリジナルのポケモンを考える感覚にも近い?

窪塚:それはあるかもしれないですね。昔から何でもオリジナルで作ってたので。そこから卒業して自分の“MeMonsters”になった感じかもしれないです。

WWD:“オリジナル”へのこだわりは、家族の影響も?

窪塚:家族ですね。みんなちゃんと“自分”を持っている。父(窪塚洋介)や叔父(窪塚俊介、RUEED)もアーティストだし、母もそう。周りに「自分は自分」っていう人たちがたくさんいた。僕も昔から人と被るのが好きじゃなかったし、真似するより真似される方がかっこいいと思ってたので、それが大きいと思います。

WWD:今回はガラス作品にも挑戦した。

窪塚:ずっとやりたかったんです。でも自分ひとりじゃできないし、なんとなく誰かとやりたいと思っていて、ずっと機会がなくて。今回やっとできました。

WWD:実際やってみてどうだった?

窪塚:最初は「ここもうちょっとこうしたい」とか思ってたんですけど、途中から「そういう考えは違うな」って。見た人がそれぞれのキャラクターとして受け取ってくれたらいいなって思うようになりました。僕自身、いまだに「これが何なのか分かってない」作品もあるんです。一応、海の生物のイメージなんですけど。

WWD:私にはウサギに見えました。

窪塚:嬉しいです。全部それなんですよ。見る人の解釈でいい。

WWD:ガラス作品は完成を見るまで不安も?

窪塚:めちゃくちゃ不安でした。完成を見たのも今日が初めてですし。細い部分は割れる可能性もあるので怖かった。でも想像以上に形になってて良かったです。個展が終わったら祖母にあげる予定です(笑)。

WWD:今後も個展は続けていきたい?

窪塚:自分から「個展したいです」とはなかなか言わないと思うんですけど、絵はこれからも描き続けるし、世界観も変わらないと思います。今回初めて、自分の絵でこんなに楽しめるんだっていう経験をして。今までにない感情をもらったので、「またやりたいな」と思いました。でも正直、恥ずかしいです。見せる用に描いてなかったので。

WWD:自分の内面をさらけ出している感覚?

窪塚:そうですね。だから、もしまた機会があるとしたら、「いっぱい溜まったからやりますか」みたいな感じだと思います。でも、自分ひとりじゃ絶対できなかった経験なので、世界が広がった感じがします。

WWD:イラストでブランドコラボなどの可能性については?

窪塚:めっちゃ考えますね。でも僕、何でもやってみたい人間なので、ぜひぜひって思います。

WWD:本業の俳優業に生きる経験になった?

窪塚:それとは別ですね。皆さんが知らなかっただけで、実は僕はこういう人なんです、って知らせただけというか。今回、みんなの協力で知ってもらえたし、「知られちゃった」感じもある。想像してなかったから何とも言えない嬉しさがあります。ただ、「いいね」って言ってもらえたらすごく嬉しいので、今はこの感情をゆっくり噛みしめたいです。でも、これが最後とは言いたくないですね。

■「MeMonsters」開催概要
日程:5月8(金)~24日(日)
時間:14:00〜19:00(平日)、12:00〜19:00(休日)※月曜休廊
場所:NEW GALLERY
住所:東京都千代田区神田神保町1-28-1 mirio神保町 1F

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