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大手アパレルで進む”百貨店離れ” 各社トップが次の柱と目論むのは?


中間層の百貨店離れに歯止めがかからない中、大手アパレル各社の戦略も変化している。かねてより主販路としてきた百貨店婦人服フロアへの依存を脱すべく、他販路や新たな事業領域の開拓により、収益の多角化が進む。4社の通期決算(すべて2026年2月期)とトップの言葉から、その進捗と展望を読み解く。

オンワードはSC販路の強化が奏功 
直営店売上高を50%へ

オンワードホールディングス(以下、オンワード)の連結業績は、売上高が前期比13.6%増の2368億円、営業利益が同14.3%増の116億円、純利益が同18.5%増の101億円と大きく伸ばした。「27年2月期に純利益100億円」という中期経営計画の目標を1年前倒しで達成した。

けん引役となったのはSC販路だ。百貨店が前期比2%の減収となった一方、SCは同29%増と大幅に伸長した。SCを主軸とする複合ブランド業態「オンワード・クローゼットセレクト(OCS)」が好調で、その中核ブランドの一つである「アンフィーロ(UNFILO)」は2021年秋の販売開始から約4年半で売上高100億円を突破した。31年2月期を最終年度とする計画では、現状の2.5倍以上へと引き上げる計画。成長のドライバーとなるのは、今後出店を加速するブランド単独店だ。

ブランド単独出店は「アンフィーロ」に限らず全社規模で戦略的に進める。ゆくゆくは会社全体の売上高に占める直営店比率を50%まで高める。「直営店、特に路面店はイベント開催などの自由度が高く、ブランドコミュニティーを作る上で非常に重要」と保元道宣社長は強調する。主力ブランドの「23区」も、売上高を現状の361億円から31年2月期に450億円へ高める計画だが、同ブランドにおいても全国主要都市に設置する予定の大型路面店「SALON 23区」での体験型施策がカギになる。

そのほかにも成長余地のある事業領域で、いずれも31年2月期をメドとした投資を加速する。若年層獲得と海外展開のハブと位置付ける「ウィゴー(WEGO)」は、売上高を現状325億円から450億円へと引き上げる計画で、今秋には台北と上海に路面旗艦店を出店する。米国発のトラッドブランド「J.プレス(J.PRESS)」は現状の141億円から200億円を目指す。自社IPキャラクター「しろたん」が今秋にテレビアニメ化するキャラクター・ペット事業は69億円から100億円へ、ユニフォームの企画・製造を主幹事業とするコーポレートデザイン領域はオフィスなど内装デザイン事業の強化も並走させ、173億円から300億円に引き上げる。

現状、売上高の26%を占める百貨店販路については「集客力を保っている優良な館とのビジネスはしっかり継続していく」(保元社長)ことを前提に、それ以外のビジネスの拡大や館の閉店なども織り込んだ上で、「20%程度になっていくだろう」と展望を述べた。

TSIはアメカジに商機
濃度の高いファンを狙う

TSIホールディングスは、売上高が前期比6.7%増の1670億円、営業利益が同164.4%増の43億円と大幅増益だった。百貨店販路の売上高は、事業撤退・退店の影響などで同14.7%減の154億円にとどまったものの、ファッションビル・駅ビルなど百貨店以外の販路は同12.6%増の823億円と大きく伸長した。

「ナチュラルビューティーベーシック(NATURAL BEAUTY BASIC)」や「アドーア(ADORE)」など認知度のある婦人服ブランドを抱える同社だが、近年は「パーリーゲイツ(PEARLY GATES)」や「ハフ(HUF)」、「ステューシー(STUSSY)」などスポーツ・ストリートブランドもそれらに比肩する収益源へと成長している。さらに同社が次の商機として注力しているのが「アメカジ」の分野だ。

特に上野商会(22年1月に吸収合併)が擁していたブランド群は、日本で独自の発展を遂げたアメカジスタイルがインバウンドの心を掴んでいる。ライダースジャケットを主力とする「ショット(SCHOTT)」は、独自企画のプリントシャツやデニムが好調で、前期比24.8%増。「アヴィレックス(AVIREX)」も同18.5%増と大幅伸長し、ブランドとして初めて売上高100億円を突破。「グループをけん引するブランドに成長してきている」(下地社長)と手応えを語る。下期から連結対象となったデイトナ・インターナショナルの「フリークス ストア(FREAK’S STORE)」も2ケタ増収と好調だ。

4月には、スカジャンなどミリタリーに強い「テーラー東洋(TAILOR TOYO)」「バズリクソンズ(BUZZ RICKSON’S)」を擁する東洋エンタープライズとレイラニトレーディングの子会社化に向けた基本合意も発表した。東洋エンタープライズは売上高44億円(前期比19.6%増)、営業利益9億4000万円と収益力が高く、今後の利益貢献への期待も大きい。

「東洋エンタープライズの復刻・文化継承という職人技と、TSIの多様なブランドポートフォリオを掛け合わせ、他社には真似のできない独自の製品づくりができる。(自社ECの)『ミックスドットトーキョー(MIX.TOKYO)』の基盤を生かし、新たな顧客層へもアプローチしたい」と下地社長は意気込む。今後は「アヴィレックス」や、24年10月に日本国内における独占販売代理店契約とライセンス契約を結んだ「アルファ・インダストリーズ(ALPHA INDUSTRIES)」と横串を通した商品展開や企画も計画。ニッチではあるが、ファンの熱量・濃度の高いアメカジ市場でのポジショニングを狙う。

ワールドはアパレル事業に課題も
プラットフォーム事業利益が3倍に

売上収益が前期比25.9%増の2840億円と大幅増収を果たしたワールドだが、これはエムシーファッション(旧三菱商事ファッション)とナルミヤ・インターナショナルの連結化によるところが大きい。営業利益は同4.2%減の160億円。主力のアパレルブランド事業は既存店売上が同1.8%減と、立て直しに課題を残した。

一方、アパレルの苦戦をある程度カバーしたのが、自社リソースを外販するプラットフォーム事業だ。同セグメントの事業利益は同約3倍の43億円だった。完全子会社化したエムシーファッションによって、他社向けの衣料品生産受託などの営業先が飛躍的に拡大した。今後はブランド古着買取・販売の「ラグタグ(RAGTAG)」やラグジュアリーシェアリングの「ラクサス(LAXUS)」などサーキュラー事業とライフスタイル事業を強化し、3年後にこれらがB2Cビジネスの事業利益の3分の1を稼ぐ構造を目指す。

百貨店販路が不振の三陽商会
EC、FB向けブランドを開発

売上高が前期比3.4%減の584億円、営業利益が同52.2%減の12.9億円と振るわなかった三陽商会。前期比8%減となった主力の百貨店チャネルの不振が響いた。今後も、自社の生産背景を生かしたアウターなどを武器に、アッパーミドル層をターゲットとする戦略は変わらない一方、百貨店販路に依存しないブランドポートフォリオの構築を進める。売上高構成の61.8%を占める百貨店に対し、5.9%にとどまる直営店と15.2%のEC・通販の比率を高めるべく、新業態の開発に力を入れている。今年3月にEC専業ブランドの「ビアンカ(BIANCA)」を立ち上げ、秋冬からは高感度ファッションビルへの出店を念頭に置く「オーレム(AUREME)」をスタートする。「オーレム」は中期的に10店舗体制を目指す。

婦人服フロアの構造的不況を
念頭にしたチャレンジを

日本百貨店協会の統計によると、2025年の全国百貨店売上高は前年比1.5%減の5兆6754億円だった。訪日客の購買意欲が旺盛なラグジュアリーブランドや宝飾・化粧品などの高額品の動向に注目が集まる傍ら、国内客が需要の大半を占める衣料品は構造的な低迷が続く。百貨店の婦人服売上高は1998年の約2兆2700億円をピークに縮小を続け、現在はその半分以下の水準に沈んでいる。

各社の屋台骨であるブランド事業の磨き上げ・立て直しは重要だが、百貨店の集客力に頼り続けていては限界は見えている。百貨店以外の販路開拓や新業態開発、コスメ・IP・toBビジネスといったアパレル以外の領域への挑戦など、新機軸への継続的な投資を両輪で進められるかが、今後の競争力を左右することは間違いない。​​​​​​​​​​​​​​​​

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