ファッション

「学生ファッション作品の寿命を伸ばす」 モード学園卒業生2人の挑戦

毎年、ファッションの専門学校では“卒展”やファッションショー、コンテストなどさまざまな催しが開催され、学生たちは自らが制作した作品で競い合う。そこで見られるのは、それぞれが寝る間も惜しみ、工夫を重ねた渾身の作品たちだ。

しかし、それらのイベントが終わった後、その作品はどこに行くのだろうかーー「もっと作品が生きる場が与えられないか?」。そんな疑問を持ったのは、今年3月に東京モード学園を卒業した佐藤豪皇(さとう・こお)さん。かつてはドバイでプロ契約をするほどのサッカー選手だったが、東京モード学園在学中に衣装リースを中心にアパレル事業を行う合同会社、アンレオを立ち上げた。手を組んだのは、同じくモード学園の同級生である漆原幹人(うるしばら・みきと)さんだ。

都内にある貸し倉庫にあるのは、約400点にものぼる衣装ピース。主に学生が制作した衣装作品が並ぶほか、2024年に2人が立ち上げたリメイクブランド「エンタイ トウキョウ(ENTIE TOKYO)」も含む。スタイリストから依頼があれば出張リースも行い、リクエストに応じてさまざまなアイテムを紹介している。起業して半年も経たないが、すでにHANAをはじめとしたビッグネームも着用するなど、軌道に乗るアンレオ。2人のビジネスアイデアの根源、そして今後の展望について聞いた。

生い立ちとモード学園で学んだこと

WWD:佐藤さんがサッカーを辞め、ファッションの道に進もうと思った理由とは?

佐藤豪皇アンレオ代表(以下、佐藤):小学生から18歳までずっとサッカーをやっていて、一時期はドバイのプロチームに所属していました。ただ、日々プロの選手と試合をしたり、トレーニングをしていく中で、「本当に自分が目指すような選手になれるのか?」と考えるようになったんです。僕自身リオネル・メッシ(Lionel Messi)選手やクリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo)選手に憧れていたのですが、どうやってもそんなふうにはなれないんじゃないかって。そんな中途半端な気持ちで選手を続けていくのもサッカー業界や他の選手、応援してくれている人たちにも失礼だし、別の道に進もうと思いました。

ファッションはずっと好きで、ドバイにいる時からTシャツブランドを作ったりもしていたので、改めてこの世界で頑張ってみようと思って東京モード学園に入学しました。

WWD:数ある専門学校の中で、東京モード学園に入学した決め手は?

佐藤:入学説明会の時に、島田和美さんという先生が話しているのを聞いて、この学校の先生たちがみんな、生徒の夢を肯定して、その視野を広げてくれる人たちーー「自分でもできるんだ」って自信を持たせてくれるような人たちなんだって思えたことが大きかったと思います。

漆原幹人クリエイティブディレクター(以下、漆原):モード学園は、グループ校も含めて学科がかなり多いです。ファッションだけじゃなくて、ヘアメイクやグラフィック、インテリアとか、クリエイティブに関わるさまざまな学科の生徒に出会えるのが魅力だと思い入学を決めました。

当初はファッションビジネス学科に進もうとしたのですが、1年生の最後の過程で服作りをしたのが本当に楽しくて。そこから本格的にデザイナーを目指そうと思うようになりました。

WWD:モード学園での学生生活で、学べてよかったと思うことは?

漆原:パターンや縫製、デザインはもちろんですが、もっと基礎的な部分。あいさつや掃除など、社会人としての基礎を徹底的に学べたことが、中学や高校にあまり行っていなかった僕に一番効いたと思います。モード学園に入ってからは、1年目で皆勤賞を取ることもできました。

学生生活の中では、モード学園の卒業制作の発表の場である未来創造展で“モード大賞”を受賞できたのもうれしかったです。その副賞として世界一周旅行の権利をもらえたので、今後いろいろな国に行きたいと思います。ファッションの街というよりは、アマゾンとかあまり人が行かないような場所を旅していろいろなことを吸収していきたいです。

佐藤:僕の場合は、ビジネスで必要となってくるマーケティングとブランディングの基礎を学べたことです。特に島田先生の授業では毎回、授業の最初の15分でその日の朝のビジネスニュースやトレンドを話してくれる時間があって。僕も通学時、毎朝そういった情報をチェックするようにしていたので、その15分ですり合わせができるのがありがたかったです。

「ファッションを通じてみんなを笑顔に」
アンレオの事業内容と今後

WWD:2人が一緒に事業を始めたきっかけとは?

佐藤:在学中のインターンが同じで、その時にみんなで「卒業後は何する?」みたいな話をカジュアルにしたことがあって。漆原くんはデザイナーになりたい、僕は起業したい、とお互いのことを話したときに、漆原くんから「じゃあ一緒にやろう」と言ってくれました。僕はファッションビジネス学科でビジネス、漆原くんはファッションデザイン学科で服作りを学んできたからちょうどいいねって。今年の1月にアンレオを立ち上げました。


学生時代の2人

WWD:アンレオの主となる事業内容について教えてください。

佐藤:メーンで行っているのは衣装リース事業。僕の担任の先生からヒントを得て、ファッション業界を盛り上げることができたらいいなと思い始めました。

学生時代、周囲にいた友達がみんな、コンテストに向けて真剣に服作りをしているのを間近で見ていました。でもコンテストが終わってしまえば、それらの服のほとんどはクローゼットの中で眠っていることが多く、世の中に出ることがほとんどありません。彼らが積み上げてきた努力も、使われた生地も、そのままになってしまうんです。ファッション業界でもよくサステナビリティーという言葉を耳にするようになった今だからこそ、学生が根本から変えていかなきゃいけないと思うんです。

たとえその服がコンテストで審査員に評価してもらえなかった服でも、他の人にとってはすごく魅力的に見えるかもしれない。リース事業を通じて、みんなが一生懸命作った服の寿命を伸ばしていきたいと思い立ち上げました。

WWD:取り扱う服はどのように仕入れている?

佐藤:基本的には僕の知り合い経由で仕入れることが多く、ほぼ毎週のように新作が入ります。今は倉庫に400点以上のアイテムがありますね。

スタイリストさんに倉庫に来てもらうこともありますし、気になる服やイメージを教えてもらって、こちらからスタイリストさん側に服を提案しに行く出張リースも行っています。

WWD:現時点でのリース実績は?

佐藤:アーティストのHANAさん、小柳ゆきさん、AKB48の千葉恵里さん、声優の石橋陽彩さんなど。また、雑誌「DEW Magazine」やテレビCMなどにも使っていただいています。

WWD:リース事業以外ではどんなことを行っている?

佐藤:在学中に立ち上げたブランド「エンタイ トウキョウ」の運営、また「クオン(KUON)」というセレクトショップのバイヤーを2人でやっています。

漆原:あとは今後、コレクションブランドを立ち上げたいと思っていて。まだコンセプトなどもあまり決めていないのですが、来シーズンから出していきたいです。東京はもちろん、パリでも挑戦していきたいですね。

WWD:アンレオ立ち上げにあたり、モード学園の返還不要の100万円が授与される給付型奨学金「夢を夢で終わらせない支援金」を獲得しました。

佐藤:モード学園は大阪や名古屋にもありますが、東京でこの支援金を獲得したのは僕が初めてだったそうです。審査にあたり、学生時代から学んできたこと、アウトプットの蓄積があり、どんな事業をやりたいのかを明確にアピールすることができました。獲得できた支援金は、衣装管理や保管環境の構築、クリーニングやメンテナンス、プロモーションなどのために使用しています。

WWD:将来的に、どのようにビジネス展開していきたい?

佐藤:アンレオの企業理念は「ファッションで人を笑顔にする」。ファッションのコアなファン層だけじゃなくて、高齢者や子どもも含めた、生きている人たちみんなを幸せにしていくような事業を行いたいです。ターゲットが異なれば、どうすれば幸せになれるかも変わってくる。それぞれのターゲットに合わせた事業を展開していきたいと思います。

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